一章 妖怪になるぞ、俺は!
第1話 変な夢
「おい、巻森」
「すー…」
「おい」
「は?」
「は?だとぉ……教師に向かって何を……っ!」
「…」
うるせー…いや待て。
「…」
ここ…教室か。教室…?
むくりと上半身を起こすと、見事に中年太りした非常勤の数学教師・佐藤が目の前にいた。
俺が通っている
今は顔を真っ赤にして唾を飛ばしてきてる。
教室の所々で笑いが起こる。
ということはなく、クラスメートたちは、あからさまにまたかよ、という顔をしながらこっちを向く。
一部は佐藤に対して笑っているが。
だって、仕方ないじゃないか。
ここ最近はよく寝れないんだよ。
…あの夢のせいで。
今回はいつもと違ったが……もしかして、「来てる」って先生のことか?
……頭がぼんやりする。取り敢えず、二度寝しよ…
本当に、眠い。
◇
「おーい、巻森ー」
「すー…」
「起きろー」
「…」
揺さぶられて、強制的に意識が覚醒する。
「あ…
「おはよう。…もう昼だぞ。一緒に昼飯食べよう」
周りにあまり良く思われてない俺と、唯一関わってくれるやつだ。
頼太は早速自分の席に戻り、弁当を持ってきた。……昼?
「ま、マジ?もう昼か…」
それなら二時間ぐらいずっと寝ていたことになる。
その間、誰も起こしてくれなかったのか。
「井上、ちょっと借りんねー」
頼太は、誰も座っていない前の席にどかっと座り、にやにやしながら俺を見た。何?気持ち悪い。
「な、何だよ…」
「また見た?変な夢」
変な夢。
頼太が指しているものは、最近…というか、六日前から見るようになった夢のことだろう。
「うん、見たけど…」
「けど?」
「変は変。だけど、いつもと内容が違った」
「え!?ガチで?どんな感じ?どんな感じに違ってた?」
う、うわぁ。何でそんな、必死そうに食い付いてくんだよ。変態みたいだぞ。
…俺のこの話を、笑いながら聞いてくれたいいやつだが。
「え、えぇと。最初に……」
さっき見た夢のことを細かく話した。
「…へぇ、知らない女の子が?」
「あぁ。かたすに行かないで〜みたいなことを何回も言ってきた」
「いつもと違うな…」
「んー」
変な夢を見たのはこれが最初ではなく、六日前から見るようになった。
いつも、黒い「何か」から出てくる無数の手に掴まれる、という内容だった。
しかし、今日見た夢は違う。
「本当に何なんだろうな…」
「…頼太。最初から言ってるだろ?これは俺の内なる力が…」
「あー、はいはい。そういうことね」
スルーされた。
なんでだ? 本気で言ってんのに。
「もしかしたら、悪いことが起きるって前兆とか?」
「いや、だから…俺の内なる……」
"かたす"が何を意味するのか。俺がそれを理解するのは、少し後の事だったんですわ。
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