第47話 「覚悟」③

 

 今度は真弓の左横腹を狙ってしめ縄黒髪が振り回されてきた。

 真弓は早技の如く中段の構えでしめ縄黒髪を押し止めようとしたが「ガキーン!」と物凄い火花が散ってそのまま道場の床に叩きつけられた。




 しめ縄黒髪の攻撃は止まらない。床に倒れている真弓めがけて物凄い勢いで何度も振り降ろされてくる。

 その攻撃を転がりながら間一髪の所で避け続けるのが精一杯の真弓だった。


(ダメだわ…このままではいつか疲れて叩き潰されてしまう…何か対抗する手段はないの?)

 その時だ!『鬼丸』の切先きっさき天色あまいろ※に輝いた!



 ※(天色とは、晴天の澄んだ空のような鮮やかな青色のことです)



『鬼丸』が何かを伝えようとしている…。真弓はそう感じた。そしてその意味を呑み込んだ。


(でも…出来ない…もし『ダーク・レディ』が避けてくれなかったら、お母さんが…)


 真弓が躊躇している間にも、しめ縄黒髪の攻撃が止むことはない。

 その度に真弓は右に左に転がって避けるだけだった。


 むしろ『ダーク・レディ』はわざと外して遊んでいるようだった。

『ダーク・レディ』が高らかに笑いながら叫んだ。


「もうお遊びはおしまいさ。次でお前の息の根を止めてやる!ペチャンコになりな!」


『ダーク・レディ』のしめ縄黒髪が超高速で真弓めがけて振り下ろされてきた。

 その瞬間、真弓は床を「ダン!」と蹴って『闇鬼』めがけて突きを放ったのだ。


(ナニ? わたしの喉に『鬼丸』を突き刺すのかい? バカな! 母親を殺す気か!)


『闇鬼』は怯んだ。そして真弓の突きを躱す《かわす》ために一瞬、身を屈めた。

 真弓はそれを狙っていたのだ。


 振り回されるしめ縄黒髪の根元だけはいつも一定だ。黒髪の根元を切る! それしか方法はなかった。

 しかし『ダーク・レディ』の懐に入ることは至難の技だ。

 その懐に入る方法を教えてくれたのが『鬼丸』だった。


 切先を光らせて真弓に(突きをしろ!)と教えたのだ。

『闇鬼』がせっかく手に入れた清恵の体だ。そう簡単に突きを喰らうわけはないと一か八かの攻撃を真弓はしたのだ。


 そして、見事にしめ縄黒髪を根元からバッサリと切り落としたのだった。


「やった!」やっと『鬼丸』で戦える。

 戦っている間に必ずお母さんの体から闇鬼を追い出す方法を考えよう…。


 真弓は再び上段に構えた。

『ダーク・レディ』は頭のてっぺんの髪の毛が無くなり、両端の髪の毛だけが残っている…まるで落武者のようなザンバラ髪の形相になっている。


 しかし『ダーク・レディ』はケラケラと笑い出した。


「髪の毛を切ったくらいで上段の構えかい。イキがるんじゃないよ!」


『ダーク・レディ』がそう言った途端、あたまの上部がモコモコと動き出してきた。


(何? またお母さんの体を変えようとするの? もうこれ以上、お母さんの体に変なことしないで!)



(闇鬼は毎月1日、4日、8日、12日、16日、20日、24日、28日に更新予定です)


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