第6話 初めての戦闘?



《前回のあらすじ》

戦闘するために必要な訓練を受けたり、武器を揃えたりするために訓練所に案内される。必要な装備を揃え、訓練しクエストの掲示板を見ていると半ば強引にパーティーを組まされてしまった。



日が落ちてあたりが暗くなり、約束の顔合わせの時間が近づいてきた。

洋服はとりあえず着てきたものしかないので、それを少し整え、髪の毛も一応セットした。

屈強な男の人がいることは分かっているがもう一人の魔法使いはどんな人か全く知らない。

初めての仲間なのでうまくやっていきたい。


家にいて緊張してばかりなので、かなり早いが顔合わせをする店に向かった。

ゆっくり歩いたつもりだったが、それでもかなり早く着いたようだ。

辺りにそれらしき人物は見当たらなかった。

うろうろして不審者と思われるのも困るので、一度噴水の場所まで戻り、音楽を奏でている人の近くに腰を下ろした。

陽気なケルト音楽に心も弾んだ。


今度こそ本当に時間が近づき、待ち合わせの店に戻る。

そこには掲示板の前で声を掛けてきた屈強な男が立っていた。

「よ!」

「お、おう…」

とにかく声も身振りも大きいのでいちいち驚く。悪い人ではないのだが。

少しするとすごく小柄な、白いワンピース姿の少女が走ってやってくるのが見えた。

「あ、来た来た」

男は少女に向かって左右に手をぶんぶん振った。


全員が揃い、店内に入る。

半個室になっている雰囲気の良い店だった。

「まずは飲みもんだな!俺はビールだ!」

「あ、えーっとじゃあ俺はウーロン茶で」

「私もビールで!」

少女が成人しているように見えなかったので、お酒であることを伝えると顔を赤くして「そんなこと分かってますよ。」と返されてしまった。


全員の飲み物はすぐに揃い乾杯をした。

「みんな来てくれてありがとなー。俺はゴンだ。身体は元々でかかったんだけど最近鍛えてっからより強そうだろ?俺は一撃必殺パンチを習得するために鍛えてんだよ。ガハハ!!」

もう酔っているのかと思うくらい陽気に挨拶をした。

「あ、わ、私はカレンです。あの、回復魔法を習得中で、今も少しであればHPの回復が出来ます。あ、こ、これでも私、成人していますからね!」

少し恥ずかしそうに言い切ると、ビールをグイッと煽っていた。

「あ、じゃあ次は俺か。俺は瀬戸渉です。今日戦闘員登録をしたばかりなんですけど、一応剣の使いを目指したいと思っています。一生懸命戦うのでよろしくお願いします。」


挨拶が終わる頃には大分食事も運ばれて来ていて、さっそく食べようということになった。

食事は豪快なステーキや山盛りのサラダのような感じだったが、どれも美味しかった。

食事をしながらどんなモンスターの討伐に行くか話していた。

「初めは3人だろうと様子見でLv1の敵からがいいと思うんですよね。」

「あ!それは俺も思います!」

「まあそりゃそうだよなー」

3人ともまずはLv1の敵の討伐に行くことで意見は一致した。

「時期は…早い方が次の作戦を立てやすいですかね?」

「うーんでも私は回復魔法をもう少し上達させたいですけど」

時期がなかなか決まらなかった。

その後も、お互い違う武器なので到達点を決めるのは難しいだの、上達しているかが分かりにくいだの話し合いは続いた。

そして、最終的に1回目の討伐は最短で行けるところにしようということで決まった。

店を出て、みんなで連絡先を交換し、明日また訓練場で会う約束をして解散した。


次の日、訓練場に行くと2人はもう掲示板の前にいた。

「俺は来週の初めに行けるこの討伐なんていいと思うんだけど」

「それなら3日後ですし、準備の時間も間に合いそうですね」

話しは大方決まっているようで、3日後のLv1モンスター討伐に行くことに決まった。

受付で討伐登録をし、保険についての説明を受ける。

「こちらは、この討伐限定の保険となっております。この討伐に際しケガや武器の破損が認められた場合、7割の補助が受けられるようになっています。長期に治療が必要になった場合はその期間補助を受けることが出来ます。保険金は討伐期間が1日ですので10ロンです。」

説明を受け、3人とも保険に加入した。


その後3日間は武器の準備や、渡された必要なものリストを買い集めたり、訓練所で思い思いに練習をした。

訓練所で毎日顔を合わせていたが、お互いの進捗は聞いてもよく分からないので、あまり聞かないようにした。

そしてついに討伐の日を迎えた。

訓練所前で3人が集合した。

皆それぞれリュックを背負っており、いつもより装備がしっかりとしている。

初めての討伐に緊張と興奮が入り混じっていた。


ゴンが地図を開く。

「この町の東から出て、平原をまっすぐ進んだところが今回の討伐スポットだな。」

真剣な表情で頷く。

この町と平原の堺ではいつもそうしているのか、店員が出てきて水をくれた。

数日前に平原からやってきたのに、平原に出るとより緊張した。

真っ直ぐ歩いて行くとところどころに岩や木があった。

そして目的地付近に近づくと岩から赤と緑の鮮やかな色をした2匹のモンスターが飛び出した。

少しモンスターに近寄ると「キー」と威嚇してきた。

慌てたカレンは回復魔法をモンスターに放った。

片方はミス、片方は当たったがすでにMaxのHPなのでなにも起こらなかった。

「あ、あわ、ごめんなさい、ごめんなさい。」

カレンが消え入るような声で謝った。

「よおしじゃあ分担しよう!俺は赤い方に向けていくぞおお!」

ゴンはここでも積極的で頼もしかった。

渉は必然的に緑のモンスターを倒すことになった。

背中の剣を引き抜き、正面に構える。

モンスターもこちらをじっと見つめている。

訓練通り大きく振りかぶって、振り下ろすが、恐怖のあまりモンスターとの距離が足りず当たっていない。

モンスターの方が少し近づいてパンチのような動きをしては後ろに飛び退いていた。

これなら行けると再び大きく振りかぶって、今度は数歩前に出てから振り下ろした。

振り下ろした先には緑のモンスターがいて、命中した。

するとモンスターはその場に倒れたかと思うと消えてしまった。

ふと隣を見るとゴンもちょうど赤いモンスターを倒したところだった。


緊張の糸が切れ、その場で息を乱しながら座り込む。

ゴンも呆然としていた。

カレンは相変わらず何かに慌てているような感じだが、先ほどよりは落ち着きを取り戻していた。


3人はしばらく休憩した。

そして完全に落ち着きを取り戻し、自分の町に向け再び歩き出した。

「これはあれだな。慣れだな。」

「確かに俺もそんな感じがしました。」

「え、あ、じゃ、じゃあまた討伐に行くんですか?」

「当たり前だー!せっかくパーティーを組んだんだからな!ガハハ!!」

町に戻り、窓口に向かうとボーナスが支給された。

「経験値は訓練所内にある住民カードリーダーに通していただければ確認できます。今回みなさんは初回討伐なので100ついていると思います。お疲れさまでした。」

3人は揃って住民カードリーダーに通し、100ついていることを確認すると嬉しくなった。

「今日は顔合わせんときに使った店に飲みに行こうぜ!」

「いいですねー私またビール飲みたいです!」

そして以前より格段に仲良くなってまた雰囲気の良かった同じ飲み屋に向かった。



《次回 習うより慣れろ!》

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