第5話 訓練所でパーティーを組めるのか?



《前回のあらすじ》

まるで高級ホテルかのようなサービスの整った部屋で夜を過ごし、朝から町を散策するとそこにはまさかのハローワーク!いずれにしても仕事をしないとお金がないとハローワークで戦闘員として職業を登録した。



門にはカード差し込み口が設置されていて、中は建物であまり見えないようになっていた。

正直怖いので、外から様子を探りたかったが見えないのなら仕方がない。

カードと言えばきっと住民カードだろうと住民カードを取り出し、差し込み口に差し込む。

少しするとピロンッと音が鳴り、門の鍵もガチャと開錠した音がした。

カードを抜き取りゆっくりと門を開く。

道は一本しかないので、迷うことなく受付にたどり着く。


「瀬戸様ですね。お荷物は隣のロッカーをご利用ください。ここは初めてですよね。説明がありますので、お荷物をロッカーにしまい、初期装備のみを持ってこちらにお越しください。」

テキパキと指示をされ、何となく急いで準備を済ます。

初期装備以外をロッカーに片付け、鍵を取って受付に向かう。


「それでは、説明させていただきます。私はここのスタッフでメイと言います。よろしくお願いします。ここは装備のお試しや技の習得、パーティーの斡旋、体を鍛えるための設備となっています。朝から夜まで開放しておりますのでいつお越し頂いても構いません。また、装備をしまっておくためのロッカーもございますのでそちらに装備を置いて帰って頂いても構いません。」

話しながらメイは受付から出てきた。

「この掲示板は討伐のためのパーティーを募集する掲示板です。もちろん一人での討伐が可能なものもありますが、パーティーを組んで強いモンスターと戦うことでボーナスや経験値が大きく上がります。」

「経験値…」

「経験値は住民カードに記録されます。経験値に応じて使える武器や技も増えますのでより強いモンスターと戦うことができます。」


広大な土地を二人で歩きながらメイは的確に説明を加えていく。

「ここは武器屋です。ここでしか買えないものも多いですし、ここのおばさんは適切な武器を選んでくれるのでぜひ利用してみて下さい。」

「適切な武器…」

歩いている間にも屈強な人が何人か横を通り過ぎる。

自分がなんてちっぽけなんだろうと不安になる。


建物内外を全て案内され、受付に戻ると紙を渡された。

「最後となりましたが、勇者か魔法使いかを選択できます。勇者コースですと使える武器の数が増えます。魔法使いコースですと技の数が増えますがいかがですか?」

魔法の呪文をたくさん覚えられる自信がなかったので勇者コースを選択した。

「では、住民カード情報を更新しておきますね。いってらっしゃいませ。」

結局終始無表情のまま、たんたんと見送られてしまった。


まずは自分の実力を知るために試し打ちゾーンに向かった。

そこでは笑顔が爽やかな細マッチョお兄さんが出迎えてくれた。

そして丁寧に初期装備の使い方や装備方法を教えてくれた。

試し打ちは弱いモデルモンスターに向かって剣を振ったり、弓を放ったり、銃で撃ったりした。

笑顔のお兄さんはモンスターに攻撃が当たるたびに「いいですね」「うまいですね」と声を掛けてくれた。

モンスターのレベルを変更や、武器を変更しながらしばらく練習すると、自分には遠方攻撃が不向きであることが分かった。

「武器は途中で変えることも出来るのでまずは長めの剣が最適だと思います。」

お兄さんにもお墨付きをもらい、そのまま武器屋に向かう。


武器屋のおばさんに長めの剣をお願いすると、とても持ちやすくて長さもちょうどいい剣を紹介された。

「ん。じゃあ1200ロンね。」

「え、お金かかるんですか?」

「そりゃ当たり前でしょ」

そう。初期装備にはお金がかからないがいい装備にはお金がかかるのだ。

少し騙された感があったが、それでも剣が気に入ったので購入した。


その剣で再び練習ゾーンに向かい、何度か試し切りをしていると、お兄さんにパーティーを組むことを勧められた。

「実践の方がお金ももらえますし、何より仲間がいるっていいですよ!自分の実力も分かりますし、経験値も貯まってやる気になると思います。」

確かに武器を買うのにもお金を払ってしまったので、稼ぐ必要はある。

簡単なクエストならと掲示板に向かうことにした。


初心者でも可能や、初心者向けと書かれた紙は意外に多く貼りだされていた。

それをじっくり見ていると、いかにも強そうな背が高くてがたいのいいお兄さんに声を掛けられた。

「クエストを探しているのかい?」

「え、あ、はい。」

「じゃあさ、俺と組まないか?俺はパンチ力があるから拳タイプらしくて、回復魔法の使える魔法使いも捕まえたんだけど攻撃が俺だけじゃちょっと弱いからさ。」

どう見ても強そうだが、攻撃が一人では太刀打ちできないらしい。

「俺まだ始めたばっかっすけど。」

「大丈夫大丈夫!初めから強いとこ行かなきゃいいから!よし、決まり。今日の夜顔合わせしよう!」

半ば強制的にパーティーを組まされたが、悪い人ではないようだ。

知っている人もいないし、誘ってくれただけありがたいと思い、夜の顔合わせに向けて一度帰ることにした。



《次回 初めての戦闘?》

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