第4話 職業選択に向かう



《前回のあらすじ》

役所について住民手続きをすると住民カードを入手した。言われるままにお城の内部にある住宅相談窓口に向かうとそのまま自宅を案内するというので驚いて尋ねるとこの町のシステムを簡単に説明され、自分はランク1ということが分かった。



目が覚めてもそこはふかふかのベッドの上だった。

「やっぱ夢じゃないんだな。」

外を見る、辺りは暗くなっていて、薄暗い電球が当たりをぼんやり照らしていた。

夜は夜で雰囲気がよく、さらにこの町が気に入った。

「写真でも撮っとくかなー。健と紗英にも見せたいし。」

カシャッ!

窓から見える景色を撮り満足気に頷く。


落ち着くとお腹が減っていることに気が付いたが、ここの通貨を持ち合わせていない。

何となく備え付けの冷蔵庫に向かうと、そこにはおいしそうなパイが入っていた。

電子レンジで温め、ひとまず食べることにした。

アツアツのミートパイは心も身体も十分に満たしてくれた。


バスルームに向かうとお湯が張ってあった。

どこまでも気の利くサービスだ。

「これがランク1ってこと?」

まるで高級ホテルのような扱いに少し怖くなる。

だが、せっかくならサービスは受けておこうと湯舟にも浸かった。

なんの香りか詳しくないのでよく分からなかったが、花の香りのような優しい匂いがふわっとして気持ちよかった。


お金もなければ場所も分からないのに夜に出歩くのは得策ではないだろうと思い、明日の朝からこの町を散策することを決意した。

そして、先ほどまで眠っていたふかふかのベッドに戻ると、すぐ眠りについていた。


朝目が覚めると、辺りはすっかり明るくなり、昨夜の幻想的な雰囲気はなくなっていた。

「よし、今日は町の様子を散策するぞ!」

意気込んで外に出る。

忘れかけていた役所に止めていた自転車を回収し、当てもなく歩き回った。

しばらく歩くと、ハローワークの文字が見えた。

「え、ハローワーク?」

ただ、自分は何の仕事にも就いていないので、一度話しを聞くために中に入ることにした。


中にはぼろぼろの服を着た元勇者のような人が窓口に向かって、「ランクを変更してくれ」と泣きついていたり、反対に「ランクを上げたいんだ」と怒鳴っている人たちがいて、昨日までの穏やかさは感じられなかった。

近くにいた職員らしき人に声を掛けると申し訳なさそうに空いている窓口に案内された。


渉の驚いた表情を見て窓口の職員は申し訳なさそうな表情で出てきた。

「あ、すみませんね、ここはいつもこんな感じなんですよ。で、ご用件はなんでしょう?」

「あ、そうなんですね…。あ、そうそう、俺まだ何の職にも就いてなくて、昨日来たばっかなんですけど」

「あ、左様でしたか。住民カードはお持ちですか?」

昨日手に入れた住民カードを手渡す。

「あ、カードありがとうございました。瀬戸渉様でいらっしゃいますね?お待ちしておりました。瀬戸様はランク1ですので、こちらから職業をお選びいただけます。一度選ぶとなかなか変更できませんので、慎重に選んでください。」

渡された紙に目を通す。

やはり昨日説明された通りそこには討伐のための戦闘員や緊急時救命のための救急員などの職業が列挙されていた。


「あの、討伐のためのってなんの討伐をしてるんですか?」

「あ、それは、近隣の敵町が小さなモンスターを放っているので、そのモンスターがこちらの町に入り込まないよう討伐して頂いています。討伐数に応じてボーナスも発生しますし、武器はこちらで揃えますので初期費用はかかりませんし、何よりこの町のあこがれの職業ですので待遇もそれなりのものを準備させて頂いております。」

モンスターの討伐は怖いが、待遇の良さやボーナスという単語に完全に迷っていた。

そしてついに、「じゃあこの戦闘員になります。」と答えていた。


「ありがとうございます。瀬戸様ならそのような選択をして下さると思っていました。」

パッとにこやかな表情を見せ、窓口の職員はなにやら打ち込んでいる。

「こちら初期装備とその他必要なお金になります。基本的には掲示板で討伐情報を確認して頂きまして、参加したいものがありましたら集合頂ければと思います。他にご質問ございますか?」

「え、あ、いや、なにか練習とかいらないんですか?」

「あ、練習でしたら一応訓練所なるものがございますので、そちらに行かれると良いかと思います。そちらではパーティーの斡旋もしてもらえますので。では良い生活を!」


聞いたその足で訓練所に向かう。

向かう途中初期装備の剣が目立っていて、子供から羨望の眼差しで見られた。

大人からも水や食料の差し入れをもらい、訓練所に着くころには両手がいっぱいになっていた。



《次回 訓練所でパーティーを組めるのか?》

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