第2話 この先どうしていけばいいの?!



《前回のあらすじ》

ファンタジー好きの渉はいつもと違う道から帰ろうとして公園に寄り道すると、異世界への扉を開けてしまった。



渉の不安を煽るように風がさわさわと吹き続けている。

何故か一緒に異世界転生を果たしてしまった自転車を取りに向かう。

もはや自転車だけが自分の友のように思えた。


とどまっていても何も状況が分からないので、一旦辺りを散策してみることにした。

散策するのに、草が生い茂っていて自転車は使えなかった。

自転車を押しながら、当てもなく歩き回っていると遥か遠くに城のような建物を見つけた。

「とりあえずあそこに向かうか。」

誰にともなく宣言し、渉は自転車と共に歩き出した。


どのくらいの時間が経ったのか、ついくせでスマホを起動する。

スマホはついたが、当然圏外だった。

時間は18時になっていたが、それも当然元の世界の時間であり、この世界の時間は分からなかった。

ただ、まだ日は高く昇っていて、夜になるまでに時間がありそうだということだけが分かった。


そこからさらに30分くらい進むと、道に出た。

道と言っても獣道で、草がなぎ倒されているだけだったが、それでもなんとか自転車で走れそうだった。

ようやく連れていた友に出番が回ってきたような感じがして、渉は少し嬉しくなる。

しかしそれ以上に、進む速度が格段に速くなり有難かった。


徐々にお城が近づいてくる。

想像以上に大きく立派なお城に少し気後れする。

その手前には城下町が出来上がっていた。

そこまで見えてきて急に門番がいて入れない可能性やコミュニケーションが取れない可能性に気が付く。

ただそこで気が付いても他に選択肢がないので、一旦自転車を降りてゆっくり城下町に近づいた。


入口に門番はおらず、誰でも入れる仕様になっていた。

まず第一関門を突破したような感じがして安心した。

そして、辺りを見ると、人間にそっくりの人たちが何やら衣類や食料を売っているのが見えた。

まだ遠すぎて言葉はよく分からなかったが、穏やかそうな町という印象だった。


もう少し、もう少しと好奇心で近づいていくと、いつの間にか店に随分近づいていた。

店員の服装は麻で出来た簡易的なもので、建物も土でできているようだった。

まるで社会の資料集で見た、大昔の日本といった感じだ。

驚くことに話している言葉が聞き取れるのだ。

転生した時に言葉を習得したのかと思ったがどうやらそうではなく、この世界の言葉が日本語のようだった。


「すみません…。」

「お、お兄さん!なんか買うかい?サービスするよ!」

「あ、いや、あのー…」

「ん?見ない顔だね。どうしたの?」

「なんかさっき草原に迷い込んでしまったみたいで…どこに行けばいいですかね」

訳も分からず、とりあえず一番手前にある店員に話しかけた。

すると、少しふくよかで、快活な店員さんがまずはお城の下にある役所に行くといいと教えてくれた。



《次回 異世界での住民手続き》

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