こんなはずじゃなかったのに!!!

紫栞

第1話 異世界?!

「なあ、渉?今日の週刊マンガ見たか?」

「いや、買いはしたけどまだ中身までは…」

「この前話してたあの転生漫画、結局友情展開になって、そういうオチになるわけねって感じだったわ。」


健とは小学校からの幼馴染で、縁あって同じ大学でキャンパスライフを送っている。

そして、小学生の時から二人してよく漫画を買っていた。

特に週刊少年マンガが大好きで、月曜日は毎週そのネタで基本的に持ちきりだった。


「おはよー」

大学で仲良くなった紗江も登校してくる。

場所は決まっていないが、何となくいつも窓の近くに座っている。

「またその転生ものの話しー?」

「いやー前回いい仕事したから当然一緒に冒険行くと思ったらまさかのそこで守って行けよパターンで置いてくからさー」

「待って俺まだ読んでないのに言うなよ。」

そんな穏やかな月曜日だった。


授業が始まり、90分間が静かに過ぎていく。

外はもう早くも春の香りがして、日差しが暖かだった。

ただ、2月らしく風が吹くとまだ寒さを感じる。

外をしばらく眺めていると知らない間に黒板が半分埋まっていた。

慌ててノートに書き写した。


子どものころからファンタジーに憧れていた。

マンガはもちろん小説もファンタジーが好きだった。

現実とは違う世界観に憧れていたのかもしれない。

そんなこと起こるわけないと思う気持ちはあるが、もし起こったらどうしようかと考えるのは好きだった。


夕方までなんとなく授業をやり過ごし、健と紗英の二人はそれぞれ自転車に跨りバイトとサークルへ向かった。大学生もなにかと忙しい。

今日は何の予定もない渉もまた自転車に跨るが、なんとなく遠回りをして帰りたい気分になり、いつもとは違う道で帰ることにした。

と言っても、道をよく知っているわけではないのでいつもより1本遠い道を選択しただけにとどめた。

さすがに道を調べながら帰るのは面倒くさい。

同じ大学の生徒もほとんど通らないこの道には小さな公園がある。


公園にはブランコと滑り台とトイレが完備されているが、ここで遊んでいる子供は見たことがない。

周りに人がいないことを確認し、ゆっくりブランコに近づいた。

特に意味はなかったが、ブランコに座る。

久しぶりに乗るブランコは思っていたより楽しくなかった。

子どもの頃は乗るために並んだのになぁと思いつつ、しばらくブランコを小さく揺らしていた。

その間に腰の曲がったおばあさんが一人ゆっくりとおしぐるまを押しながら公園を横切って行った。


ブランコに乗っていたことが少し恥ずかしくなり自転車に戻ると、来た時には気が付かなかった小さなドアが目についた。

ドアと言っても公園の塀に四角とドアノブを落書きされただけのようなものだ。

普通落書きと言えば、サインや自己流のキャラクターが主流だと思っていたので、面白い落書きだなくらいの気持ちで近づき、ドアノブの書かれた部分に触れた。


すると勢いよくその扉は外に開き、強風とともにドアの中の世界に吸い込まれてしまった。

ふと後ろを振り返るが、そこは一面平原で、所在なさげに自分の自転車が止められているだけだった。

「えーーーーーーー?!」

軽い気持ちで触れた扉がまさか異世界に繋がっているなんて普段妄想している世界よりありえない世界に戸惑った。



《次回、この先どうしていけばいいの?!》

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