学園三大美女のペットにされている僕、彼女たちは虐げているつもりらしいけど僕にとってはご褒美です!
@mikazukidango32
第1話
「ご主人様に向かって何なのその目は?」
腰まである艶のある絹のような髪に、清楚な雰囲気をまとった美女が僕の目の前にいる。しかし、その美女が投げかける言葉はその清楚な雰囲気とは正反対のものだった。
「まさか逆らおうだなんて考えてないわよね?」
「滅相もありません……僕は
「分かればいいのよ、分かればね」
彼女は終始、笑みを浮かべたまま話している。それは言動に着目しなければ聖女そのものに見えることだろう。物腰が柔らかく、透き通るような声で紡がれる言葉は心地よい音楽を聴いているようだ。
しかし、言っていることはメチャクチャだった。
完全に僕を見下しペット扱いする彼女。普段の彼女を知る人は絶対にこの事実を信じないことだろう。
生徒会長を務め、学業では全国模試の上位に食い込む才女だ。先日までの僕は彼女のことを真面目で品行方正、誰にでも分け隔てなく優しい完璧な人間のように思っていた。
あの日までは……―――
―――「おい、
僕の名前を呼ぶ声が聞こえたので振り返るとそこにはクラスカースト上位の男たちがいた。なぜか下卑た笑みを浮かべて近づいてくる彼ら。これはまずい……僕の本能がそう教えていた。
昼食時の今、僕がこうして話しかけられる理由は恐らく購買のパンでも買いに行かされるからに違いない。だってそれ以外に考えられない、こんな陽気な人たちとは接点がないのだから……
僕は急いで逃げようとした。しかし僕の運動神経で陽気な彼らに敵うはずもなくすぐに追いつかれ肩を掴まれてしまった。
「痛い……離して……」
「こいつちょっと肩掴んだくらいで『離して……』だってよ」
「田口軟弱すぎだろやべー」
陽気な人たちは僕の言動で爆笑している。今のうちに逃げられないかな……僕がそう思案していると背後から澄み切った女性の声が聞こえた。
「あなた達、何しているの?田口君が痛がってるでしょう。やめなさいッ!!」
そこにはいつもの温和な雰囲気とは異なる表情を強張らせた伊賀原さんが立っていた。
複数の陽気な男たちに向かってビシッと一喝する彼女。かっこいい……
僕はそう思った。
陽気な男たちも普段の彼女とは全く雰囲気が異なる様子に気圧されたのか。
「何だよ……ただの悪ふざけじゃんか。なあ田口?」
「伊賀原さん誤解だよ。俺ら田口と遊んでただけじゃん。なんか萎えたわもういい購買行こうぜ」
そんなことを言いながら男たちはこの場を立ち去った。
僕は助けてくれた彼女にお礼を言った。
「ありがとう伊賀原さん!おかげで助かったよ」
「全然いいのよ。クラスメイトを助けるなんて当然でしょ?」
何て優しいんだ。女神だ。女神がいるぞ。僕はその性格もそうだが、彼女の美しい容姿も相まってまるで現代に舞い降りたヴィーナスを見ているかのように錯覚していた。
「ところで田口君、少し手伝ってもらいたいことがあるんだけどいいかな?」
「もちろんだよ。助けてもらった恩も返したいからどんなことでも引き受けるよ」
「どんなことでも……ね」
その時彼女は少し意味深な笑みを浮かべているように見えた。しかし、僕は彼女のことを女神同然にみていたため気にも留めなかった。
最初の頼みは全然、軽いことだった。生徒会の書類の整理や文化祭の出し物の備品を一緒に買い出しに行くなど、僕にとっては役得のような頼み事もあったくらいだ。
◇
しかし、ある日
「私の家って両親が厳しいからペットが飼えないのよね……」
「え?」
「ペットが欲しいのよね……」
「……」
彼女は非常に寂しそうな顔でそう呟いた……何を思ったのか僕はとんでもないことを言い出してしまう。
「僕がペットになりますよ」
「えっ……?」
「僕が伊賀原さんの理想のペットになって見せます!!」
何とか彼女の力になりたい一心だった僕は唐突に訳の分からないことを言ってしまった。しかし彼女は驚きつつも笑って『ありがとう』と一言呟いた。
少しでも彼女の役に立てたのならこれで恩返しにはなっただろうか……?
しかし、最近は……
「誰のおかげで安全、安心に学園生活を送れると思っているのかな?」
「全て伊賀原さんのお陰です……」
彼女は机に座ると彼女の足置きとして跪かされる毎日だ。どうしてこうなった……?
学園三大美女のペットにされている僕、彼女たちは虐げているつもりらしいけど僕にとってはご褒美です! @mikazukidango32
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