インスタ映えと心霊写真

1話

天界、コノハの部屋。

「インスタ映えって知ってる?」

「インスタでいいねが沢山もらえる写真のことだろ」

「それくらい知ってるわ」

 快斗とりんねが答える。

「最近の子は何でも知ってるねえ」

「何でもは知らねえよ」

「知ってることだけ?」

「まあ、そうだけど?」

 コノハの作為的な言い回しに快斗は上手く乗れない。

「まあ、あれだ。某県某市にインスタ映えするスポットがあってだな、そこで写真を撮ったカップルに怪現象が起きてるらしいんだよ。心霊写真とか」

「そんな写真インスタ映えるのか……?」

「上手く加工してるんじゃないの?」

「ああ、そうか」

「おじさん、インスタとか加工とか、よく分からんけど」

「見た目は若いだろうが」

「おじさんの実年齢知ったら驚くぞ~」

「そう言って、教えてくれないだろうが」

「まあね」

「じゃあ、無駄話もこれくらいにして、行ってくるから」

「うん。いってら~」


 某県某市。二人とパートナー達はインスタ映えするらしい崖の上に来ていた。

 低級霊の気配を、そこいらから感じる。

 りんねは、それにビクつきながら、快斗に付いてきている。

「りんねさん、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫よ」

「インスタ映えなあ……。確かに良い写真は撮れるかもしれないけど、一歩足を踏み外したら死ぬよなあ……」

「これが実際に撮られ、投稿された写真な」

 ハリ太郎がエンジェルフォンを見せながら言う。

 崖の上でジャンプして飛んでるみたいにしている写真が多い。加工で天使の羽がついているものもあって、二人は少し複雑な気持ちになった。

「りんね、インスタやってる?」

「やってない」

「そうか」

快斗はエンジェルフォンの写真解析機能を使う。

「これで加工前の写真が見れるんだが……」

「インスタグラマーにとって地獄のような機能ね」

 すると、無数のオーブや人の顔のようなものが現れた。

「ヒッ」

「はっきりと現れてますね」

「けっこう顔も加工してんな」

「そこは、あんまり気にすんな。これをなかったことにして、インスタ映えねえ……」

「ど、どんな気持ちで、これを消していったのかしらね」

「さあ、映える写真を撮りたいってことだけじゃねえの」

「あっ、これ見て」

りんねは、ひっそりと立つ慰霊碑のようなものを見つける。

「今まで静かに眠ってたのに、あれだけ騒がれちゃな。怒りたくもなる」

「どうするの?」

「数が多いから、一人一人、丁寧にはやってやれないな。強制浄霊する」

「分かった!」

「じゃあ、やるぞ! 魔法陣!」

 魔法陣が地面に浮き出て、快斗は聖水を、そこに垂らす。霊達が天に昇っていく。


「浄霊はしたんだが……」

「まだインスタブームは終わってないから誰かがいつ落ちるかも分からないわね」

「どうにかして、ここに人が来ないようにしないといけませんね」

「……じゃあ、いっそ落ちてみるか」

 快斗の提案に皆は顔を見合わせる。

「え?」

「見せしめに落ちて、そのニュースを広める。同じインスタグラマーが落ちて死んだとなれば普通の奴なら、まず近付かない。……それでもまだ来るっていうのなら、そいつは命知らずのバカだってことだよ。そんな奴らは知ったこっちゃない」

 快斗はダミー人形を出す。

「ここにファロワー10万人の架空のインスタグラマーアカウントがある」

「そんなもの何処で……」

「売ってんだよ、普通に。天界マーケットはすごいぞ」

「このダミー人形を、架空のインスタグラマーとして、こっから落とすんだな」

「ああ」

 快斗はダミーを浮かせる。

「写真を撮って、#を付けて投稿」

「ねえ、ダミー人形って何処まで本物に見えるの?」

「何処までもさ。こちら側の人間じゃなければ気付けない」

「こいつを落とせばいいんだな?」

「ああ、やってくれ」

「とうっ」

 ダミー人形は崖下に落ちていった。

「後は警察に連絡だ」


 その後、警察に事情聴取をされ、ダミー人形を回収した。

 有名インスタグラマーが崖から落ちたことはニュースにもなり、自治体によって崖は立ち入り禁止になった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る