2話
扉の前に立つと、異様な雰囲気が感じ取れた。
モモちゃんが戸に手をかけると、鍵はかかっておらず、簡単に扉は開いた。
扉を開け放った瞬間、異臭が葉月達を襲う。
「くっさ」
葉月が鼻を押さえる。
家の中は昼なのに暗かった。窓が一つもないのだ。
家の中央には藁で敷いたベッドのようなものがあり、そこにシュトゥンプと思われる中年が寝ていた。
「寝てる!」
「チャンスだな」
モモちゃんが手錠を出すと、シュトゥンプに近付いた瞬間、奴は目を覚ました。
「楽には捕まってくれない訳ね」
シュトゥンプは雄たけびを上げると、人間から人狼の姿に変身した。
「エンジェルアロー!」
葉月が弓の攻撃をするが、避けられてしまう。
葉月にシュトゥンプが向かってくるが、シアンが短剣で間に割って入る。シュトゥンプはシアンの短剣を頑丈な歯で咥える。
「ぐっ」
「シアン、そのまま!」
ロッソが短剣でシュトゥンプの背中に斬りつける。
「ぎゃあああああああ」
まだ致命傷にはならない。シアンは短剣を口から抜くと、構え直す。
シュトゥンプは次にモモちゃんに狙いを定めた。
モモちゃんは向かってくるシュトゥンプを、さらりと避けて、肩の辺りを斬りつける。
「ぎゃあああああ」
シュトゥンプは悲鳴を上げながら、ノインを爪で切り裂きにかかる。
「案外、ノーコンだな、お前」
シュトゥンプは速い訳ではなかった。向かってくると分かっているのなら避けれるのだ。
「ああああああ」
次は葉月に向かって来た。
「はっ、えっ」
葉月は天使になって、多少マシになったとはいえ、運動神経は良くない。弓を構えるのも疎かにしていた。
「葉月!」
シュトゥンプの切り裂きが葉月の腕を掠めた。傷口からは血が流れる。
「あっ、いった」
(まただ……、何で私、ダメなんだろう)
「葉月―!」
シュトゥンプが葉月に連撃を加える前にノインが間に入る。
「やらせねえぞ」
(強くなるって言ったのにな……)
薄れゆく意識の中、声が聞こえた。
「ねえ、力が欲しい?」
(欲しいよ、強くなりたいよ……)
「分かった。任せなさい」
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