2話

ミツルギの館。

「じゃあ、合図したら出て来てくれ」

 ノインは他の4人を待合室に残して、カウンセリングルームに入っていく。


「あなたのお名前、生年月日、家系図を書ける範囲で書いて下さい」

「はいは~い」

 ノインは名前まで出鱈目を書いた。

「今回は誰を呼び出してほしいのですか?」

「昨年、死んだ兄貴をお願いします」

 そんな兄貴は、勿論いなかった。

 ミツルギは天を仰ぎ、何やら呪文を唱えている。

「よっ、オサム、俺だ。兄貴だ」

「あ、兄貴~」

 ノインは笑いを堪えるのに必死になっていた。

(こんな手に簡単に引っかかってくれるとは、笑えるぜ) 

 その後も嘘の思い出話に花が咲いていた。

 そろそろかという頃合いになった。

「残念。俺に死んだ兄貴なんていないんだな」

「騙したのか!」

「おいおい、騙してきたのはどっちだよ」

「くそっ」

 ミツルギは逃げ出そうしたが、ノインの裏から出て来たロッソとシアンに取り押さえられ、あっという間に縄で縛られてしまう。

 葉月とモモちゃんも部屋に入ってくる。

「本当に透視できるなら、俺の嘘なんて見破れるよなあ」

「くそっ、くそっ」

「偽物を演じきれなかった、お前の負けだぜ」

 ミツルギの身体がゆらりと揺れる。縛られたまま、その場で気絶したようだ。

「ありゃりゃ」

「どうするんだ?」

「反省文書かせるとか」

「今まで騙した相手に謝罪行脚がいいわね」

 話し合っていると、またミツルギが立ち上がった。

「おっ、どうした?」

「ふ~、ふ~」

 様子がおかしかった。

「この反応! 本物の霊に取り憑かれてる!」

「よくも、よくも、騙したなあ」

 ミツルギは壁に頭を打ち付ける。

「ちょ、ちょっとやめて~」

「霊が見えるなんて言ってるから取り憑かれやすくなるのよ」

「モモちゃん、どうすればいい?」

「こんな低級霊、魔法陣と聖水で祓えるわ」

「分かった! 魔法陣!」

 魔法陣でミツルギを囲み、聖水をかける。魂が上へ昇って行くのが見えた。


「謝罪行脚、忘れるんじゃないわよ」

 意識の戻ったミツルギにモモちゃんは釘を刺すように言った。

「わ、分かりました」

「これに懲りたら、真っ当な仕事を探すんだぜ」

「は、はい」


 これにて、偽イタコ騒動は終わりを迎えた。


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