2話

「そうだ、あれだ。エンディングノート書いてきたか?」

 宿題として出されていた現世でやりたいことを書いたノートだ。りんねはノートを差し出す。

「うん。しっかり書けててすごいと思うよ」

 快斗は赤ペン先生のように、ノートを見て、素直に褒める。

「そう? 普通に書いただけだけど」

「将来の夢、お医者さんなんですね、すごいです!」

「俺は将来の夢とか、あまり考えてないからさ。そこは、まだ書けてないんだ」

「そう」

「ま、じゃあ行くか」

「ええ」


 学校のトイレに向かう。

 夜の学校の不気味さに、りんねは気が滅入りそうになっていた。

「お前、天使になったからには、こういうのに慣れてくれよ」

「わ、分かってるわよ!」

「その辺に低級霊いるだろ。面倒だから強制成仏させる」

「うん」

 快斗は魔法陣で霊を囲み、聖水をかける。すると、霊が天に昇っていく。

「これが強制成仏の方法。あそこにいる奴にもやってみ」

「う、うん」

「魔法陣って念じるだけで出るはずだから」

「ま、魔法陣、……で、出た!」

「はい、これ聖水」

 りんねは聖水を霊にかけた。すると霊は昇天していった。

「これでいいの?」

「ああ、これでいいよ」

 

 目的地のトイレに着いた。

「じゃあ花子さん、呼び出すから」

「う、うん」

 快斗は三番目のトイレを三回ノックし「花子さん、いらっしゃいますか?」と呼びかける。

 数分経って、もう一度やってみたが出て来なかった。

「おら、成仏の時間だぞ」

 快斗は魔法陣を出す。

「強制呼び出し」

「ひいっ、酷い! 私はゆっくりしたいの!」

「知るか! さっさと成仏しやがれ」

(こんな女の子に、ちょっと酷くない?)

 まるで取り立て屋のような振舞の快斗を見て、りんねは思った。

「ふえ~ん。成仏なんかしたくない~」

 霊だというのに、普通の小さい女の子を見ているような気持になった。

「ね、成仏してみようよ。こんなとこで、ずっといるより、きっといいよ」

「でも、怖い~。知らない場所、怖い~」

「だ、大丈夫! きっと天国いいとこだよ」

「本当?」

「ああ、いいとこだから、成仏してくれ」

「分かった」

「ありがとう」

 快斗は魔法陣を出す。

「光が見えている方に、すぅっと進んでいくんだ」

「うん」

 花子さんは成仏していった。


「まあ、任務ってこんなもんだ。これから、よろしく」

「うん」


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