4話

現在に戻る。

「この会社が労働基準法に抵触しているっていうタレコミが来まして、参上しました☆」

「まず、これを見て下さい」

 モモちゃんが社内パソコンを操作し、ログを見る。勤怠記録の改ざんだった。

 そして防犯カメラの映像も合わせて見せる。

「本当は17時退社のはずが、実際は22時まで会社にいますよね」

「遅い時間まで無給残業お疲れ様です☆」

「それと、この監視カメラ付人形メアリーちゃんで、皆さんの動きをこれから逐一チェックします」

「ヒイッ」

 昨日、包丁で襲われかけたジンが怯える。

「これで、ブラックな働き方を直して下さいね☆」


 葉月は思い付いたように言う。

「そういえば私達の任務は人形の回収なんだよね?」

「まあ人形はただの入れ物だし、魂を回収できればいいと思うわ」

「ちょっとメンテ入ります☆」

 ノインが職場からメアリーを一旦、回収する。

「じゃあ、ヘイリーさんに出て来てもらわないと」

「そうね」

 葉月はメアリーに話しかける。

「ヘイリーさん、出て来て」

「はい」

 メアリーの姿のまま答える。

「成仏してくれる?」

「ええ。ここまでしていただいて、ありがとうございます。……どうやって出るのですか?」

「出たいと願えば、自然と魂だけ出れるわよ」

「分かりました。やってみます」

 ヘイリーは「ふんっ」という声と共に、魂だけ出て来た。

「このまま天界に送り届けるわ」

「お願いします」

「じゃあ、俺は空になった人形戻してくるわ」



 これにて動く人形騒動は終わりを迎えたのだった。


 一仕事終えて、野宿飯を囲みながら話す。今日は川で釣った焼き魚だ。

「あなた、今日は随分と働いたじゃない? 何かあるの?」

「昔、日雇いバイトで、ブラック職場に当たったことがあってな。俺はすぐ辞めれたが、あの時の先輩達の死んだ目が忘れられなくてな……。今回は助けてあげられる算段があったから助けようと思ったんだ」

「そう」

「ノインさん、格好良かったぜ!」

「そう見えたなら良かった」

 ノインは、そう言いながら魚をかじった。

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