2話

 三人目の標的と予想されたジンという人物は小心者で、訪ねた際、布団を被って怯え切っていた。

「人形に殺される……、ヒイッ」

「だ、大丈夫ですよ、私達が来たから」

「絶対だな! 守ってくれ!」

「は、はい」


 その夜。

 ジンはベッドの中に入った。

 玄関にモモちゃん、廊下にロッソ、部屋のドアの所にノイン、窓の側にシアン、ベッドのすぐ側に葉月が付いている。

「本当に大丈夫なんだよな」

 ベッドの中からジンが話しかける。

 ベッドの側で葉月が「守りますって。任せて下さい」と言った。


 深夜になった。

「眠い……」

「シアン、頑張って起きて!」

「よく寝れるな! 俺が狙われてるんだぞ!」

「ご、ごめんなさい」

 葉月がシアンの代わりの謝った。


「シアン! 窓!」

 窓に包丁を持ったメアリーがいたのを葉月が気付き、叫ぶ。

「ヒイッ」

「来たのか!」

 ノイン、少し遅れてロッソとモモちゃんが部屋の中に集合する。

 メアリーは包丁を窓の隙間に押入れ、馬鹿力で鍵を破る。

 葉月達はジンを囲み、守る。

「辛かったんだよね。ヘイリーさんが自分から死んじゃって」

 葉月は説得できるかもしれないと思い、話しかける。

「違う!」

 人形から聞えたのは男の声だった。

「俺の心を殺した奴を殺してやるんだ!」

 メアリーはジンに向かって飛びかかる。

 シアンが短剣を抜き、包丁の刃を防ぐ。

「どけっ!」

「待って! あなた、中身はヘイリーさん⁉」

「そうだよ! 俺は自殺した後、魂だけになった。成仏できなかった。メアリーを器にして復讐をすることにしたんだ。メアリーも、それがいいって言ってくれた!」

「でも、殺すなんてダメだよ!」

「うるさい! お前に何が分かる!」

 メアリーが、またジンに襲いかかろうとするが、ノインが刀で止めた。

「資料にミスがあったから怒られ蹴られた、俺より先に昇進した部下から蔑まれた、皆の前で毎日毎日、怒られた、仕事場に泊まって頑張っても手柄は全部、上司に取られた! お前みたいな若いやつに俺の苦労なんか分かる訳ないだろ!」

「わ、私は、分からないけど……」

「毎日毎日、仕事に行くのが辛かった。でも生きていくためには仕事をするしかないんだ!」

「お前は頑張ったよ」

 ノインが刀を交えつつ、語りかける。

「お前の頑張りに気付けない酷い会社はクソだよ。でも殺しちゃダメだ」

「俺は……、俺は……」

 メアリーは包丁を下ろす。

「もう遅いかもしれねえけど、後は俺達に任してくれねえか?」

「何を、するんだ?」

「ブラック企業をぶっ潰すのさ」

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