7話

倒れている黒魔導士をどかし、姫の元へ駆け寄る。

「姫を起こす呪文だね。……目覚めよ。神の名の元に我は命ず」

 


「ふわぁ、よく寝た~」

「おはよう、お姫さん」

「アンタ、誰?」

「俺はノイン、旅人さ」

「私、目覚めて最初に見るのはイケメンがいいんだけど」

「へ?」

「チェンジで」

「ここにはイケメンはいないよ」

 葉月が悲しい事実を告げる。

「ていうか、あなたは何故、眠らされていたの?」

「知らない」

「それはだな……」

 倒れていた黒魔導士が意識を取り戻した。

 モモちゃんとノインは身構える。

「そう身構えんでもええ。わしらは、もう退散する」

「本当?」

「ああ。元々、姫を眠らせるよう頼まれたからじゃ。臣下達からのう」

「えっ、どうして?」

「姫の圧政に苦しんでいたのだよ」

「アッセイ?」

 ロッソとシアンは言葉の意味が分からなかったようだ。

「わがままでキツイってこと」

「お姫様の家来の人達、連れてくるね」

 葉月が階段を降りていく。


 姫と家来が対面する。気まずい空気が流れている。

「アンタ達が黒魔導士に頼んで、私を眠らせたって聞いたんだけど!」

「も、申し訳ございません!」

「むち打ち100回!」

「ちょっと待って」

「何よ、文句あるの?」

「我がままプーだと、皆ついて来ないよ」

「なっ、うるさいわね! 私の言う通りにしなさい!」

「これじゃあ、また眠らせられるな」

「ほっほっ、いつでも依頼は受けるぞ」

「黒魔導士、まだいた!」

「ちょっと、そんなことしたら許さないんだからね!」

 姫の剣幕が凄く、家来は縮こまっている。

「ほら、仲直りして!」

 葉月は姫と家臣の一人の手を取って、無理やり握手させた。

「ちょっと!」

「ダメだよ、皆で仲良くしないと」

 天使だからなのか、葉月の言うことに妙な説得力を感じる姫。

「じゃあ、よろしくね!」


 葉月一行と黒魔導士が去った後、城では姫が説教をしていた。

 しかし、いつもは鞭打ちをするところを我慢している。



「姫さん達、上手くやれるんかね?」

「さあ、どうだろう」

「少しは歩み寄るんじゃないかしら」

「そうだといいね!」

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