3話

             ◇


 階段で迷う。

 そんな不思議なことが起きていた。

 階段を上り始めて数十分は経つのに、次の階に着かないのだ。

 城の外観的に、もう次の階に着かないとおかしいのに。

「こんなに階段を上っても、次の階に着かないなんて、おかしいだろ」

「私もそう思ってた。もしかして黒魔導士のトラップにかかっているのかも」

「ああ、恐らくそうだろうな」

「ジャーン、呪文の書」

「何だそれ」

「黒魔法を解く時の呪文が載ってる本だよ。モモちゃんにもらったの」

「分厚い本だな」

 葉月は索引からトラップを解く呪文が載っている頁を探す。

「我らをこの罠から救うよう、神の名のもとに、我は命ず」

 葉月が呪文を唱えると、辺り一面が光り輝いた。光が消えると次の階が見えた。

「さあ、どんどん行くよ」


             ◆


「相手は天使か。少し厄介だが、私の敵ではあるまい」

 黒魔導士は、そう呟くと、口角を上げ、にやりと笑った。さも楽しんでいるかのように。

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