2話

食事を食べ終え、ロッソは支配人に案内されトイレに行った。

「ロッソ、遅くね?」

 十分経っても帰って来なかった。

「探しに行ってくる」

 そう言ったシアンも戻って来ない。

「双子は何やってんだ」

「先に部屋に戻ってるのかもしれないわね」

「じゃあ、俺らも戻るか」

 食堂から出た途端だった。

 赤い光が飛んできた。

「葉月、危ない!」

 その光を受けたモモちゃんが石になった。

 ゴロリ、と地面に落ちるモモちゃん。

「モモちゃん!」

 石になっていた。

 光が放たれた方を見ると、頭が蛇になった女がいた。

「な、何だあれ」

「メドゥーサだ!」

 葉月は物語で見た怪物を思い出した。目を見ると石になってしまうのだ。

「ノイン、気をつけて! あいつの目を見ちゃダメ!」

「分かった!」

 メドゥーサが廊下から大広間へ走って行く。メドゥーサを倒さないと、モモちゃんを元に戻すことは出来ないので、今はただ追うしかない。

 ノインが石になったモモちゃんを抱える。思ったよりは重くなかったようだ。

 大広間には包帯でぐるぐる巻きにされ、気絶したロッソとシアンがいた。

 そして、メドゥーサの他にも妖怪がいた。

 狼男、ミイラ男、吸血鬼、と一気に4体も相手にしないといけなかった。

「こいつらを全員倒せってか」

「ま、まずは話し合ってみるよ」

 モモちゃんが前言っていた。妖怪は悪い奴ばかりではない、と。

「あのー、モモちゃんを石から戻してくれないかな」

「嫌だね。そいつらを戻してほしければ、俺達に勝つことだな」

「やるしかないみたいだぜ」

 ノインが剣を抜く。

「エンジェルアロー!」

 弓を引くが、いつも通り当たらない。

「下手くそ!」

 狼男が葉月に向かって飛び掛かってきた。

 葉月は魔法陣で、その攻撃を防ぐ。

 ノインにはミイラ男が襲い掛かってくる。

「クソッ」

 剣で突いてみるが、包帯が少し切れただけだった。

 次は吸血鬼も飛び降りて来た。葉月は魔法陣で防ぐと共に、聖水を入れた水鉄砲を発射する。

「ぎゃっ」

「やった! 効いた!」

 聖水がかかった個所が砂になっていた。

 吸血鬼が下がったと思ったら、次はメドゥーサが前に出てきた。目を見ないように戦うのは難しい。視線が限られる。下を向きながら、攻撃を避ける。

 こんなに戦えるとは思っていなかった。葉月の50メートル走のタイムは10.5だ。天使になると身体能力が上がるのだ。

「聖水ビーム!」

 水鉄砲を発射しながら敵に向かっていく。ノインが相手をしているミイラ男以外が、一斉に葉月に襲い掛かって来る。正面の吸血鬼は聖水で、メドゥーサは魔法陣で防御する。しかし、狼男に肩を引っかかれ、血が出る。

 自分から流れる血を見た瞬間、葉月は悲鳴を上げた。

「痛っ‼」

「葉月‼」

 葉月は、その場にしゃがみ込んで、傷口を押さえる。血はどんどん出て来るが、止め方が分からない。

(どうすれば、私は……、どうすれば、いいの……?)

 意識が薄れていく。

(私、死ぬのかな……?)

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