2話

 夜は王宮に近い広場で宴が催されていた。

 皆、明日は憎きヒュドラが討伐されることを信じて疑わない。

 皇子を除いては。


「あの、皇子様はどうしてそんなに泣きそうなの?」

「だって、明日、ヒュドラにやられて死んでしまうかもしれないんだぞ!」

「大丈夫だよ。こんなに仲間がいるんだから!」

「はい、最悪、こいつらを盾にすればいいんです」

大臣はブラックだった。

「何か作戦でもあるんですか?」

 ノインは大臣に聞く。

「人数で、ゴリ押します」

「それは作戦って言えないんじゃ……」

「作戦ならあるよ!」

 葉月が得意げにそう言った。


 今日は王宮近くの宿に泊まることになった。

「明日のヒュドラ討伐に向けて、渡したいものがあるわ」

「何何?」

 モモちゃんが四角い板のようなものを葉月へ渡す。

「エンジェルフォン」

「わー、スマホだ! 私まだ買ってもらってないんだよね」

「ここから色々とアイテムを出せるわ」

「へえ、どんなの?」

「例えば、武器とか」

「それを明日使うんだね!」

「そう」

 モモちゃんは「持ち物」というアプリを起動させ「武器」の項をタップした。

 すると弓が表示され、それをタップすると、実際に弓が出てきた。

「わっ、弓だ! 天使っぽいね」

「使ったことは?」

「ないです」

「使い方は?」

「引けばいいんだよね。何となく分かる」

「じゃあ、明日、ぶっつけ本番だけどいい?」

「うん!」

「なら頑張って。……おやすみ」

「おやすみ~」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る