ドラゴン退治

1話

ギルドの掲示板には、ドラゴン退治のクエストのポスターが大きく貼られていた。

「ドラゴン退治なんて、異世界っぽい!」

「おいおい、そんな危険なクエスト、俺は御免だぜ」

「え~、ノイン、刀持ってるのに~?」

 ノインの腰に差してある刀を見て、言う。

「これは、ただの護身用だよ」

「そういえば、あなた、刀の腕はいかほどなの?」

「学校で習った程度。成績も真ん中くらい」

「学校で刀の授業があるんだね!」

「ああ。葉月のところはないのか?」

「体育で剣道はやるみたいだよ」

「ケンドー?」

「葉月の国の武術の一つね。面を被って竹刀で打ち合いをするわ。あなた、武器が刀のくせに知らないのね」

「これは家に昔からあって、まあ両親の形見みたいなもん。家に置いとくのも忍びないから旅に持ってきたわけ」

「そうなのね」

「この世界は、普通に魔法があって、ドラゴンもいるんだよね」

「ああ」

「私の世界には、少なくとも私の周りでは、そういうのなかったから」

 葉月は笑顔で言う。

「だからさ、魔法もあるって知れて、嬉しかったんだ!」


 ギルドでは冒険者達が、ドラゴン退治のパーティを組み始めていた。

「私達も入れてもらおうよ!」

「本当にやるんだな、ドラゴン討伐」

「うん! やりたい!」

「ドラゴンと言っても、強さは色々よね」

「まあ、もっと情報が欲しいよな」


「先遣隊が戻ってきたぞ!」

 彼らによると、ドラゴンの種族はヒュドラ系。

 水辺に棲む毒蛇のような怪物だ。


 冒険者達を遠巻きに見ている集団がいた。

「ヒュドラ退治なんて無理だよぉ。死んじゃうよぉ」

「ほら、皇子! 頑張って!」

 彼は、この国の皇子のアレク。ヘタレである。

「皇子だって!」

「あ……」

 一応、お忍びで市中に来ていたのだが、葉月達に見つかってしまった。

 従者が、ずずいっと寄って来た。

「お静かに」

「は、はい」

「こうなったら、あなた方にも協力していただきます」

 この従者は従者の中でも偉い方、大臣であった。

「皆の者、控えおろう!」

「おっ、何だ何だ」

「こちらはアレク皇子である!」

「皇子! 皇子!」

 一瞬にして皇子フィーバーが起こる。

「これから討伐パーティを結成し、ヒュドラを退治する! そのパーティには我々、皇子も参加する! 我々に加わる者はいないか!」

「おー!」

「俺はやるぞ!」

「皇子がいるんだ! 良い所をみせようぜ!」

 ギルドからは20人、皇子の軍隊から20人、それに葉月達が加わることになった。

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