3 話

「それと、俺は貧乏一人旅だから、お前らの分の食費とか出せないぞ」

「問題ないわ。私達の分は、私が出すから」

「モモちゃんが?」

「ええ。貯めたお金があるから大丈夫よ」

「へえ、すごいね! さすがベテラン」

「それを聞いて安心したぜ」

「あなた、そんなに金欠だったかしら。もらった資料と微妙に違うことが多いわね」

「資料なんてもらってたんだ」

「一応、ね」

「そっちの資料には何て書いてあるんだよ?」

「まず名前がノインじゃくてアイン。職業が旅人ってのは一緒」

「落ちていくべき先が、そのアインさんだったりってことは?」

「それはないわね。トンネルの行き先が間違ってたなんて、今まで聞いたことないもの」

「じゃあ、葉月が俺の守護天使ってことは間違いない訳だ」

「ええ」

「良かったあ」

 葉月が、ほっと胸を撫でおろす。

「あと、やらなきゃいけないことがあるのよね」

「何?」

「エンディングノート、っていうものを書いてもらうわ」

「終活のやつ?」

「微妙に違うけど。……この世界でやりたいこととか、現世でやりたいこととか、どのように生きていきたいかを書いてもらいたいのよ」

 モモちゃんは普通のA4ノートのようなものとペンを葉月に渡す。

「異世界に行くって夢は叶ったんだよね。だったら冒険がしたい!」

「この世界では冒険ね」

「ちょっと待て。その冒険に俺は巻き込まれるのか?」

「私達だけで行かせるつもり?」

「アンタらは天使、俺は一般人」

「適性なクエストを私がちゃんと選ぶから問題ないわ」

「クエスト! 受けてみたい!」

「後でね」

「じゃあ、現世でやり残したことは?」

「う~ん……」

「ほら、結婚とか」

「結婚なんて考えたことなかった」

「そういえば、葉月って何歳なんだ?」

「12歳だよ! もうすく中学生!」

「学校に通ってる年齢か」

「葉月の国では15歳まで義務教育」

「へえ、俺のとこは12歳なら働いてる奴もいたな」

「とりあえず、現世の義務教育は終わらせなさいな」

「現世に戻ったりするの?」

「ええ。たまに」

「そうなんだ……」

「葉月が、こっちにいる時って、向こうではどうなってるんだ? 行方不明扱い?」

「いいえ。『ダミー』という人形が代わりを務めるわ」

「へえ」

「葉月っぽい受け答えをしているはずよ。だからバレる心配もいらないわ」

「そうなんだね」

「安心だな」

「で、現世でやり残したことは?」

「えっと……、友達とケンカしちゃってて……、仲直りしたいかな」

「じゃあ、それを書いておいて」

「うん」


「さて、次はどこに行きましょうか?」

「とりあえず冒険者ギルドにでも行ってみるか?」

「わ~、やっぱりあるんだね! ギルド!」

「ああ、案内する」

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