冷たい再会

「お待たせ、待った?」

 回想に耽っていると、はっとした頃には奏斗が目の前にいるので、私は思わずのけぞり、明後日の方を向いてしまった。久しぶりに会ったのに、大きな黒い傘が奏斗の顔をほぼ覆い隠してしまっていて、表情はほとんど読み取れなかった。

「っ、そんな待ってないよ」

 やっとの思いで声を絞り出した。息を吐くのさえも苦しいのは一体何なのだろう。

「ならよかった」

 下を向いたまま奏斗は言い、無言でそそくさと歩き出した。私は早歩きで奏斗を追った。

 ――なんとなく、気まずい

 気まずいのは当たり前だろう。コミュニケーションアプリで奏斗のアカウントを見つけ、舞い上がった私は、フォローするなりダイレクトメッセージを飛ばしてしまった。「忙しい」と返され続けても、強引にこのデートの約束をしてもらい、それで今日に至る。「脈なし」だと分かっていても、むやみに恋を推し進めようとしている自分を、心の内でずっと冷笑していた。

 別れてしまったあとでも、奏斗を好きな私はずっと自分の中に残って離れてくれない。この恋自体が私の独り相撲で、それに付き合わせている奏斗にも申し訳なさを感じてしまう。奏斗はこんな私を笑うだろうか。どう思っているのだろうか。

 でも、この探るような日々も今日で終わり。今日、奏斗に告白して今度こそこの恋を諦めたいから。

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