冷たい再会
「お待たせ、待った?」
回想に耽っていると、はっとした頃には奏斗が目の前にいるので、私は思わずのけぞり、明後日の方を向いてしまった。久しぶりに会ったのに、大きな黒い傘が奏斗の顔をほぼ覆い隠してしまっていて、表情はほとんど読み取れなかった。
「っ、そんな待ってないよ」
やっとの思いで声を絞り出した。息を吐くのさえも苦しいのは一体何なのだろう。
「ならよかった」
下を向いたまま奏斗は言い、無言でそそくさと歩き出した。私は早歩きで奏斗を追った。
――なんとなく、気まずい
気まずいのは当たり前だろう。コミュニケーションアプリで奏斗のアカウントを見つけ、舞い上がった私は、フォローするなりダイレクトメッセージを飛ばしてしまった。「忙しい」と返され続けても、強引にこのデートの約束をしてもらい、それで今日に至る。「脈なし」だと分かっていても、むやみに恋を推し進めようとしている自分を、心の内でずっと冷笑していた。
別れてしまったあとでも、奏斗を好きな私はずっと自分の中に残って離れてくれない。この恋自体が私の独り相撲で、それに付き合わせている奏斗にも申し訳なさを感じてしまう。奏斗はこんな私を笑うだろうか。どう思っているのだろうか。
でも、この探るような日々も今日で終わり。今日、奏斗に告白して今度こそこの恋を諦めたいから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます