第2話


 ……え?すぐにマジックバッグに入れない理由?


 なんでもマジックバッグに適当にぽいぽい放り込んでおいたら、いつ入れたものかわからないまま取り出したら腐っていて酷い目にあったことが何度もあるらしい。

 それからはきっちり仕分けてメモしておくようになったんだって……お父さんの担当でね。

 それを習慣づけるまでお母さんのマジックバッグから何度腐ったものが出てきたことかってため息混じりに教えてくれた……うわぁ。想像したらぞくぞくしてきた。

 だから腐りやすいものほどお父さんのマジックバッグに多く入れるらしい……お母さんのマジックバッグにははぐれたときに食いつなげる最低限の食料しか入ってないんだって。その分かさばるようなものが多いそう……

 


 すぅ……はぁー。

 うん。せっかく天気も良くて風も気持ちもいいし、久しぶりの家族旅行なのに落ち込むのはもったいないや。


 「そうだ、ティアも杖の練習がてら、ここから撃ってみたらどうだ?」

 「……う、うん。そうだね、やってみる!」


 私にとってはふたりが雑魚呼ばわりしている魔物も十分に脅威だ。結界があるとはいえ練習しておくに越したことはないだろう。

 まずはこの杖を使った魔法の練習だ。感覚の違いをしっかり確かめておかないと。それに、いきなり魔物を狙ってうまくいくはずないし……お母さんのおかげで周りに魔物が見当たらず狙えないという理由も少なからずあるけどね。


 念のため、誰もいない方向へむかって杖を構える。いつもは手をかざしてたからなんか変な感じ……

 お父さんが気を利かせて荷馬車を止めてくれたから狙いやすい。お母さんは周囲を警戒してくれるみたい。ありがたい。

 火魔法は論外だ。もし延焼でもしたら大ごとだから、森のなかで使うのはよほどの緊急時だけにしなくちゃ。


 

 だから水魔法でやってみよう……


 「ウォーターアロー!」


 ブウォンッ!!


 「お、結構やるな?」

 「あら、すごいじゃない!」

 「あ、あれ?」


 お、おかしい……魔法が飛んでいった方向にある木が爆破した。

 ウォーターアローが当たったであろう木の右側面がえぐられたようになくなっている。

 本来なら木に突き刺さるか小さな穴が開くくらいの魔法だ。それが爆破なんて……え?


 「なんでこんな……」

 「杖のおかげよ」

 「だなー。杖にはめた魔石も関係してっかもなー」


 急いで荷馬車から降りて、小走りで爆破させてしまった木へ近づき、聖魔法で植物の成長を促す。


 「あー、ごめんよー。こんなつもりじゃなかったんだよー」


 私はこの魔法あんまり得意じゃないんだけどやらないよりはマシなはず……え?もとに戻ってるっていうかさっきより大きな木になってるっ!?

 葉っぱもワサワサしてるし、すごく元気そう……


 「この杖やばすぎだよ……」

 「でも、それを使いこなせるようになったらティアの大きな力になるわよ」

 「うん」


 そうだ。使いこなせれば浄化だって今より広範囲にできるかもしれないし、怪我や病気の治療にも役立つかも……よし、まずは水を出すところから練習かな?それとも杖を振るか……うーん、ポーションでも作ってみるかなぁ。


 「停まったついでだし、すこし休憩にしましょ」

 「だな。荷台も整理しないとないけないしな!結構いっぱいだぞ?」

 「あら?狩りすぎたかしら?」

 「いや、ほとんどが見つけたら討伐推奨の魔物だから問題ないけどなー」

 「そうよねー」


 うん、さっきちらっとみたら色々と荷台に無造作に転がってたもんね。


 討伐証明部位、魔石、素材、食用部位などの仕分けを手伝った後、お父さんの指示通りにそれぞれのマジックバッグへ詰めていく……これで取り出したら腐っていて大惨事は免れたらしい。たぶん……お母さんが勝手に放り込んでなければ。

 私もポシェットの中身メモするようにしようかな?



 魔物を見るのもうんざりしてきたので練習がてら水を出してみることにした。これなら失敗しても大丈夫なはず。濡れても乾かせばいいからね。

 あとでポーション作りに利用できるように桶を用意してそこに出してみる……


 「ウォーター」


 ジャバッ、ジャバッ!


 「うわ、ビショビショ……」


 うーん、思った3倍くらいの水が出たなぁ……しかもすごい勢いで出たものだから水跳ねがひどい。でも、魔力消費は前と変わらないんだから杖の効果すごい。


 もう1度、今度はさっきの3分の1ぐらいをイメージしつつ……


 「ウォーター」


 ジャバッ……


 「おおー、できたっ」


 うん、イメージ次第でなんとかなりそう。魔力の節約にもなるし、練習あるのみかな?

 ただ、ポーション作るときは杖ありと杖なしで作って比べてみないといけないなー。


 この桶はお父さんにお願いして、荷馬車に運んでもらったので後で使う予定。

 

 もう少し休憩するみたいなので、ポーションが作れるように薬草を探しつつうろうろする……


 「とりあえず魔物の気配は感じないけど気をつけてな!」

 「はーい」

 「ティア、もし魔物に遭遇したら倒そうとせず結界を張りなさい。すぐに行くから」

 「わかった」


 杖も使いこなせてないし、結界で身を守る方がいいってことだよね。まず結界さえ張ってしまえば内側から攻撃もできるしね。


 「あんま、遠くいくなよー!」

 「「はーい」」


 え?お母さんはどこに……あぁ。いらない部分を埋めてくるんだって。そのついでに新たな魔物を狩ってくる予感がするけど、きっと気のせいだよね?


 


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