杖とポーション 編
第1話
日が昇りきる前には起床。王都を出発する人が多い時間帯は門も混むのでなるべく人の出入りの少ない時間を狙うらしい。
ただ、朝晩は門が閉まっているので何時の時間もそこそこ混むらしい。
夜の最終で出発する手もあったけど、なるべく早くということで早朝出発となった。
宿屋で朝食をすませた後、昨日の孤児院の子達から買ったリボンを使ってお母さんが上機嫌で髪をきれいに編み込んでくれた。なんだか懐かしい気分……でも、たまにでいいかな。
昨日購入した装備類もしっかり身につけたあとお茶も水筒に用意し、出発準備が完了した。うん、忘れ物はないね!
荷馬車に乗り込み南門から出発することになっている……目指すのはラウナード子爵領だ。
昨日、両親に具体的に行きたいと思っているところを告げた。大体はふたりの想像通りだったらしい。うん、両親とは味の好みも似てるからね……丸わかりだったんだね。
ただ、相談したところ……ふたつみっつ離れていて、なおかつ訪れたことのない街を目指すよりも、すこし険しい道を進んで野営しつつラウナード子爵領を目指した方がいいとのこと。
ラウナード子爵領でも十分にお祭りは楽しめるし、美味しい果物が取れるダンジョンもあるし……私が候補に挙げた街はお祭りは楽しめるかもしれないけど、残念ながらそこまで食事に力をいれてないため王都と似たようなものしかないとのこと。
それならば美味しいものがあるらしいラウナード子爵領をまっすぐ目指すということになり目的地が決定した。
「ティア、門では怪しい行動しなければ大丈夫だから!リラッークス!」
「う、うん」
「ティア、楽しい旅にしような!」
「うん!」
あ、この旅の道中はティアって呼ぶことになってる。今はちょっと慣れないけどそのうち自然に反応できるはず。
がたがたと舗装されていない道を荷馬車が進んでいく。
「ふぅ……」
「心配することなかったろ?」
「そうだね」
王都を出るときには少しドキドキしたけど、出ていく人はよほど挙動不審でなければそこまで厳重にチェックしないみたい。
門では冒険者証を魔道具にピッとかざすだけで済んだ。かざすときにカードに登録された魔力と違う人物が使ったりすると大きな音で知らされる仕組みらしい。
王都のものは熟練の魔道具師のものを使っているけど、他の街ではもう少し時間がかかったり(弟子レベルの魔道具)小さな街や村ではこの魔道具自体がなく、身分証の提示をするかなければ保証金を払うことで入れるらしい。まぁ、ほんとに小さな集落ならそういうのすらないけど……
これも落ち人ヒヤマ様が作ったとか……私が知らないだけでたくさんのものが生み出されているんだろうな。
カードを魔道具にピッとかざした瞬間、衛兵さんにちらっとこちらを見られたけど気づかれなかったと思う……何度か会ったことあるはずだけど、あの時はベールしてたからかな。
特に何も言われなかったからひと安心。悪いことしてるわけじゃないのに無駄にドキドキしちゃった。
聖女として移動するときはこういうのしたことなかったし、世間知らずなんだなぁって実感してしまった。
それに今乗っている荷馬車は私ために用意してくれたそうだ。
荷台部分に幌がかかっている簡単なものだけど、中が見えないならそれで十分だとか。昨日、お父さんが別行動したのはこれの用意もあったらしい。
何事も起こらなければ今日、明日は森で野営して、明後日の夕方くらいに目的地のラウナード子爵領に着く予定だ。
街道の人がまばらになったので歩くことにする。街の外をこうやって自由に歩くの久しぶりだなぁ……
「じゃ、行くか!」
「ティア、疲れたらすぐに言うのよ!」
「はーい!」
もともと出発した時に荷馬車に乗っていたのはお母さんの魔法をかけてもらってなかったから。旅の最中は何があるかわからないから念のため魔力節約したとのこと。だから、挙動不審にならないよう注意されたんだよね。
・
・
・
「ほら、遠慮すんな」
「そうよー」
「……うん」
しばらくは頑張って歩いていたんだけど、体力がないせいか徐々に遅れだしてしまい結局荷馬車に乗ることになってしまった。どうやら最低でも荷馬車の進むスピードで移動できないと野営が1日増えてしまうらしい。
はぁ……子供のころは余裕だったのになー……お母さんは今でも余裕そうだ。
御者のお父さんの横で落ち込んでいたら……
「ティア、そんな落ち込むなよ!ルルースと比べるのは阿保らしいってわかってるだろ?」
「……うん」
そうだよね?荷馬車よりも早いスピードで走り回って魔物を倒しては荷馬車に素材や食べられる部位を凍らせては詰め込むお母さんと比べるのは違うよね?というかボアとかだと街道からちょっと離れててもわざわざ倒しに行ってるし……
しかも、魔力節約のために魔法は凍らせるときだけしか使ってないんだよ。お母さんって剣あんまり得意じゃないって聞いてたのに……Sランク冒険者ならこれくらい余裕ってことかぁ。
「まぁ、雑魚とはいえ一般人には十分脅威だからな……冒険者の義務感みたいなもんで倒せるならやっとこうってことだろ……あ、ボアは食用目的だろうな」
「そっかー」
荷物は休憩時に仕分けするらしい。
私からはよく見えないけど、倒したその場で大雑把に解体していらない部分は埋めてるらしいのに荷馬車に遅れないっていうんだから恐ろしいスピードだよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます