第3話
荷馬車からあまり離れすぎないように気をつけながら薬草をさがしてみると……
「おぉ、結構あるね!」
よくよく見れば足元には初級ポーションの材料たちがチラホラと……神殿でも育てていたから割と簡単に見分けがつくし、薬草の勉強もちゃんとしたもんね。
「とりあえずは荷馬車で作れる分だけの採取にしておこうかな」
私の感覚なんだけど……なんとなく新鮮な葉を使う方がポーションの効果も高い気がするんだよね……
それに初級ポーションの材料は比較的見つけやすいので、薬草がなくなったらまた休憩時に探せばいいかな。
採取の際は最低でも葉をひとつは残し……根を傷つけないよう、すべてとり尽くさないよう気をつけながら薬草を採っていく……
薬草の種類によって袋を分けて入れていき、昨日買ったカゴに放り込んでおく。
「うーん、これなら体力ポーションと魔力ポーションは作れるかなー。あとのポーションは材料が足りないから無理かなぁ」
ポーションにはいくつか種類がありそれによって、色も違う。
病気に効果のある〈治癒ポーション〉は青っぽく、怪我に効果のある〈体力ポーション〉は緑っぽい。
そして、魔力回復に効果のある〈魔力ポーション〉は赤っぽく、状態異常に効果のある〈状態異常回復ポーション〉は黄色っぽい。
状態異常回復についてはさらに毒特化や麻痺特化ポーションなど細かく分かれる場合もあるがやはり黄色っぽい。
ポーションの味は作る人によって多少違うけど基本的に美味しくはないかな?
私も果物と組み合わせて効果はそのままで、味がほんの少し良くなったものを開発したけど……まだまだ向上の余地はあると思っている。
まぁ、怪我なんかには飲まずにかけても効果があるから味にこだわらないひともいるけど、子どもが美味しく飲めるポーションを目標としている。
ポーションは初級、中級、上級、超級とあり、上に上がるにつれて効果が増加し、ポーションの色も透き通りキラキラしているのが特徴なのでぱっと見てなんのポーションかわかる。
それぞれのポーションの材料の色が関係してるみたいで、通称:体力草は葉がギザギザしていて濃い緑色だし、通称:魔力草は葉が細長く赤みがかっている。
あ、本来は長ったらしい名称があるんだけど、みんな覚えられずギルドでも通称で呼ばれているくらいだ。ちゃんと憶えているのは学者さんくらいかな。
青い小さな花がたくさんついた通称:治癒花があれば治癒ポーションがクリーム色と黄色のまだら模様が特徴の通称:解毒キノコがあれば状態異常回復ポーションも作れたんだけど、ここから見える範囲にはないみたいだ……残念。
ちなみに初級の治癒ポーションや体力ポーションは栄養失調や疲労回復にも効果があるため自宅に常備する人も多いとか。
中級ポーションになると常備するのは貴族とか裕福な人くらいかなぁ。庶民が気軽に買える額じゃないから緊急時に買いに行く感じかな。
あ、でも神殿や王宮には上級ポーションも常備してたな。
「あっ!これ食べれるやつだっ!」
低木に小さな赤い実がいくつも生っている。たしか名前はスウィの実だったかな。
水分をたっぷりと含み、甘く栄養が豊富な実なんだよね。
顔に近づけるほど漂う甘い香りに思わずよだれが出てくる。じゅるり……
口に放りこめば果汁が口内に溢れ、自然と口角が上がる。
「おいしー!」
えーっと、赤ければ赤いほど甘くて栄養があるんだったよね……多めに収穫しちゃおうっと。ふふっ。まだ赤くなりきってないものはちゃんと残すように注意して……
しばらく無心になって収穫していると指先が真っ赤になっていた……時々、口に放り込んでいたからもしかしたら口の周りも赤いかもしれないな。ま、いっか。美味しかったし!
近くの低木からも収穫させてもらったので、薬草採取用の袋みっつ分もたまった。
薬草採取よりもスウィの実を収穫してた時間の方が長い気がするけどね……
うーん。1袋はみんなで食べて、1袋は凍らせてもらって非常食にして、1袋はポーションに混ぜてみようかな?
「そろそろ、いくぞー」
「「はーい!」」
休憩後はお母さんが御者をつとめるらしい。
「ティアは歩くのか?(ルルースの方がいろいろと雑だから、荷馬車の揺れが酷くなると思うぞ。乗るなら覚悟をしておけよ……)」
「うーん、ポーション作ろうかなって……(多少の揺れなら平気だよ)」
「そうか(酔ったらすぐ言えよな?)」
確かに、見た目に反してお父さんの方が器用だしマメだと思うけど……こっそり言ったつもりだろうけど、多分お父さんはあとでこってり絞られると思うなー……だって、お母さんの顔がピクついてたもん。聞こえてたんだよ、きっと。
それに馬車には慣れてるし、今までほとんど酔ったことはないからそんなに心配はしてない。
聖女として移動してたときもそれなり揺れたから耐性がついたかな?
まぁ、馬車に乗ることもあれば騎士の後ろに乗せてもらったことも多いけど……だって馬車が通れない道もあったし。
今回も両親どちらかの馬に乗せてもらう案もあったらしいけど、のんびり行くなら荷馬車がいいんじゃないかってなったらしい。
着替えとかポーション作りも荷馬車でできるしね。あまり豪華な馬車だと目立つ上、狙われやすくなるからこれくらいがちょうどいいんだって!
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