第8話

 お母さんがおすすめだというご飯屋さんへ向かう途中、ちょうどお昼過ぎだったからか食事処が集まった通りだったからか……いい匂いをさせているお店が多くてぐうぐうお腹が鳴り大変だった。

 まぁ、気配が薄くなって記憶に残りにくい魔法をかけてもらっていたおかげで恥ずかしさはだいぶ薄れたんだけど。

 通りすがりのひとに……『お、あの子腹減ってんだなぁ』とは思われたかもしれないけど。


 「ここよ!着いたわ!」

 「わーい!」


 〈満腹亭〉と大きく看板が掲げられたご飯屋さんは人気店なのか満席で外にも数人順番待ちをしているようだ。

 少し待つことになったけど、入り口の横に置いてあるメニュー板を見てなんとか耐えたよ!

 お腹?うん、すごい主張してた。私はひたすらお腹鳴らしているのは自分ではありませんってすまし顔しておいた。

 後ろのおっちゃんが空気を読んで「わりぃな!腹減っちまってよぉ」と身代わりになってくれて、とてもありがったかったのでこっそり治癒魔法かけておいた……健康体なら疲れが取れるくらいのものだ。

 お母さんには勝手に人に魔法かけちゃ駄目よと注意されたので、今度から気をつけようと思う……


 ここはメインとスープとご飯かパンがセットになっている定食屋さんなんだって。

 

 「そうねー、〈満腹亭〉は何を食べても美味しいけど【今日のおすすめ】はハズレがないわね」

 「へぇ……」


 大部分のひとが【今日おすすめ】を頼んでいるみたい……ふむふむ。今日のおすすめはハンバーグ定食らしい。美味しそうだなぁ……

 席が空いたので早速注文を済ませる。

  

 「お待ちどうさま」

 「「いただきまーす」」

 

 結局、私はオークカツ定食を頼んだ。え?またオークかだって?また揚げものなのかですって?

 私だって最初は今日のおすすめのハンバーグ定食を頼もうと思ったんだけど……ジュウって揚げる音を聞いてしまったら思わず頼んじゃったんだよね。席が調理場に近かったから聞こえちゃったんだよっ!

 でも、後悔はしてない!お母さんは【今日おすすめ】のハンバーグ定食を頼んでいたので半分ずつ交換して両方食べることができたし、すごく美味しかった!



 あとは、広場をウロウロしてから〈宿り木ドドゥン〉方面に戻ることにした。


 広場は通りの比ではないくらい人が多い。あちこちで屋台や出店が点在しており、迷子やスリの被害にあってもおかしくないね……気を付けよう。


 やっぱり自分の足で見て回ると今まで気づかなかったお店や出店もあって、辺境では手に入れづらいと教えてもらったもの(メインは王都名物のお菓子)もたくさん買い集めてしまった。

 髪を乾かせる風の出る魔道具やヘアオイル、いい匂いのする石鹸など美容関連は王都が最先端らしい。


 代金は陛下の支払いでたくさん買わせてもらった。

 お母さんが「少しくらいティアが使わないとあの人達の罪悪感が増すばかりよ」と言うのでよく分からないが大人しく従った。

 陛下支払いは魔道具で作り出された紙を店舗に渡せば請求が王城へいくらしい。両親はその紙をたくさんもらってきたとのこと。

 水増しして報告する馬鹿はほとんどいない……余程の馬鹿の末路はお察しだ。

 ただし屋台やで出店では使用できない。その紙を取り扱うにも信用が必要ということのようだ。


 きっと、他の街による度なんやかんやと理由をつけて買い物してしまうんだろうな……買いたいものを自分で好きに買えるようにポーション作り頑張ろうっと。

 

 ん?あれは?


 「いらっしゃいませー」

 「ましぇー」

 「こんちゃー」

 「こんにちは!ここは何屋さんですか?」

 「は、はい!ここは孤児院で作ったものを売ってます!」

 「です」

 「でしゅ」


 10歳くらいの女の子が緊張しながら答えてくれました。出店を任されているのかな?小さな子を見ながら店番まで大変そう……


 「見てもいいですか?」

 「はい!」

 「んーとねぇ、かってくれたらうれしい!」

 「しい!」

 「あ、すいません。売り上げが自分達のお小遣いになるもので……」

 「おまつりいくの!」

 「のよ!」

 「そっかー」


 きっと子供たちが一生懸命作ったんだろうものが敷物の上にたくさん並んでいた。


 「あら、じゃあこれとこれくださいな」


 お母さんは木と石でできたオブシェや手作りクッキーを置いてある分、ほとんど買ったみたい。


 「おねぇしゃ、ありあとー」

 「ありがとうございます」

 「ましゅ!」

 「あらあら、お姉さんだなんて!じゃあこっちのリボンと編んだカゴもくださいなっ」


 お母さん、お姉さん呼びでテンション上がってるな…お世辞っぽくないところが気に入ったのか。さては人たらしだな?


 「そ、そんなにっ!ありがとうございます!」

 「「わーいっ!」」


 私はどうしようかな……あっ!


 「これは精霊石ですか?」

 「はい!精霊石ですけど、屑石ばかりで……それをアクセサリーやお守りにしてみたんです」

 「こっちはおまもりなのよ!」

 「なのよ!」


 確かに小さな精霊石は屑石と呼ばれて結界石には使われていないけど、こうやって丁寧に作ってあるアクセサリーは素敵だと思う。

 お守りもシンプルだけどアクセサリーと違って誰が持ってもよさそうだ。


 ……ん?でもなんとなくこの大きさでも結界石にできそうな気がしてきたな。

 

 「えっと……この髪留めとブローチとブレスレットとネックレス、お守り、ハンカチを全部と私にも編んだカゴひとつくださいな」


 うん、なんとか手持ちのお金で買えそうだ。ここは私が払いたかったのだ。


 「しょれ、わたしつくった!」

 「おにきいりよー」

 「ありがとうございますっ」

 「どれを作ったのかな?」

 「こえよ!」

 「これっ!」


 そっか。髪留めとブレスレットかぁ……小さいのに器用だなぁ。ハンカチもそれぞれ花や動物の刺繍がしてある。お店で売っていてもおかしくないレベルだ。私には到底作れそうにないよ。


 ちょっと、試しに魔力込めてみようかな……んー、確かに石が小さい分難易度がはね上がるけど出来ちゃったな。よし!


 「はい!これはお姉さんからプレゼントだよ!着けてたらいいことあるかもよー」

 「わーい!」

 「ねぇしゃ、ありあとー!」

 「で、でも……」

 「いーの、いーの!子どもが遠慮なんてしない!ね?」

 「うん!あなたはどれを作ったの?」

 「えっと、そのネックレスです……」


 指差されたネックレスの石に魔力を込めて……


 「はい、どうぞ!危ない目にあったらギュッと握って魔力を込めてみてね!」

 「あ、ありがとうございますっ!」


 出店のほとんどのものが売れたので、孤児院に売りものを取りに戻るらしい。そのあとは他の子と交代してお祭りに行くんだって。


 「じゃあねー!お祭り楽しんでね!」

 「はい!ありがとうございました!おふたりのおかげでみんなでお祭り楽しめると思います!」

 「「ばいばーいっ!」」


 子どもたちと別れた後、街をめぐりつつお菓子とかお菓子とかお菓子とか………限定商品めぐりをした。

 日持ちしないケーキやパフェを食べ歩き、王都以外でも買うことは出来るけど財布の紐(陛下支払い)がゆるゆるになった私は……日持ちするクッキィ、飴、パウンドケーキなどを買い集める。お茶っ葉も試飲させてもらえたので気に入った何種類か買ってみた。うん、満足。どうせ、支払ってもらえるし……と途中からは開き直ってたくさん買っちゃった。こうやって人は感覚が麻痺していくのか……次の街から気を引き締めよう。


 タナカ洋菓子店には本当に感謝しかない。

 ケーキやパフェはそこが発祥でレシピも公開したとか……それがなければお菓子やデザートは今頃どうなっていたんだろう。


 あとは八百屋さんで簡単に食べれる果物や凍らせても悪くなりにくい果物も買っておく。あとでお母さんに凍らせてもらうつもりだ。

 簡単に水分補給できるし、なによりシャリシャリのまま食べても美味しいんだよねー。



 たくさんお菓子やデザートを食べたけど〈宿り木ドドゥン〉に戻ってからもちゃんと晩ごはん食べたよ!煮込み料理がおいしくってついおかわりしてしまった。

 え?太るって?……き、きっと大丈夫っ!だって、明日から歩くしっ!食べた分は動くはず……だよね?


 あ、お父さんはお酒の飲みすぎでお母さんに怒られていたけど、いつものことらしい。なんか懐かしいな。こんなにのんびりしたの久しぶりだ……


 お風呂に入った後、ポーションの瓶や桶、服などをポシェットにしまってみたら……これも全て入ってしまった。マジックバッグ恐るべし。

 ちなみに背負い袋には毛布と水筒と携行食をいれておくことにする。これくらいなら負担なく持ち歩けるだろう……


 

 あっという間に出発の準備が整ったなー。明日の服は用意して壁に掛けたし、忘れ物もないかな?


 明日には王都出発だなんて……のんびり食べ歩きの旅楽しみだなぁ。

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