第8話

 お母さんのおすすめのご飯屋さんへ向かう途中、ちょうどお昼過ぎだったからか、いい匂いをさせているお店が多くてぐうぐうお腹が鳴って大変だった。

 気配が薄くなって記憶に残りにくい魔法のおかげで恥ずかしさはだいぶ薄れたんだけどね。


 「ここよ!着いたわ!」

 「わーい!」


 人気店なのか満席で少し待つことになったけど、メニューを見てなんとか耐えたよ!

 ここはメインとスープとご飯かパンがセットになっている定食屋さんなんだって。

 

 「そうねー、何を食べても美味しいけど【今日のおすすめ】はハズレがないわね」

 「へぇ……」


 大部分のひとが【今日おすすめ】を頼んでいるみたい……ふむふむ。今日のおすすめはハンバーグ定食らしい。美味しそうだなぁ……

 席が空いたので早速注文を済ませる。

  

 「お待ちどうさま」

 「「いただきまーす」」

 

 結局、私はオークカツ定食を頼んだ。え?またオークかだって?また揚げものかだって?

 私だって最初は今日のおすすめのハンバーグ定食を頼もうと思ったんだけど……ジュウって揚げる音を聞いてしまったら思わず頼んじゃったんだよね。席が調理場に近かったから聞こえちゃったんだよっ!

 でも、後悔はしてない!お母さんと半分交換して両方食べられたし、美味しかった!



 あとは、広場をウロウロしてから宿屋方面に戻ることになった。


 広場は通りの比ではないくらい人が多い。迷子になってもおかしくないね……気を付けよう。


 やっぱり自分の足で見て回ると今まで気づかなかったお店や出店もあって、辺境では手に入れづらいと教えてもらったものもたくさん買い集めてしまった。

 

 ん?あれは?


 「いらっしゃいませー」

 「ましぇー」

 「こんちゃー」

 「こんにちは!ここは何屋さんですか?」

 「は、はい!ここは孤児院で作ったものを売ってます!」

 「です」

 「でしゅ」


 10歳くらいの女の子が緊張しながら答えてくれました。出店を任されているのかな?小さな子を見ながら店番まで大変そう……


 「見てもいいですか?」

 「はい!」

 「んーとねぇ、かってくれたらうれしい!」

 「しい!」

 「あ、すいません。売り上げが自分達のお小遣いになるもので……」

 「おまつりいくの!」

 「のよ!」

 「そっかー」


 きっと子供たちが一生懸命作ったんだろうものが敷物の上にたくさん並んでいた。


 「あら、じゃあこれとこれくださいな」


 お母さんは木と石でできたオブシェや手作りクッキーを置いてある分ほとんど買ったようです。


 「おねぇしゃ、ありあとー」

 「ありがとうございます」

 「ましゅ!」

 「あらあら、お姉さんだなんて!じゃあこっちのリボンと編んだカゴもくださいなっ」

 「そ、そんなにっ!ありがとうございます!」

 「「わーいっ!」」


 私はどうしようかな……あっ!


 「これは精霊石ですか?」

 「はい!精霊石ですけど、屑石ばかりで……それをアクセサリーやお守りにしてみたんです」

 「こっちはおまもりなのよ!」

 「なのよ!」


 確かに小さな精霊石は屑石と呼ばれて結界石には使われていないけど、こうやって丁寧に作ってあるアクセサリーは素敵だと思う。

 お守りもシンプルだけどアクセサリーと違って誰が持ってもよさそうだ。


 ……ん?でもなんとなくこの大きさでも結界石にできそうな気がしてきたな。

 

 「えっと……この髪留めとブローチとブレスレットとネックレス、お守り、ハンカチを全部と私にも編んだカゴひとつくださいな」


 うん、今日の買い物は陛下には経済を回すためだと思ってもらおう……今度お手紙書いておこうかな。


 「しょれ、わたしつくった!」

 「おにきいりよー」

 「ありがとうございますっ」

 「どれを作ったのかな?」

 「こえよ!」

 「これっ!」


 そっか。髪留めとブレスレットかぁ……小さいのに器用だなぁ。ハンカチもそれぞれ花や動物の刺繍がしてある。お店で売っていてもおかしくないレベルだ。私には到底作れそうにないよ。


 ちょっと、試しに魔力込めてみようかな……んー、確かに石が小さい分難易度がはね上がるけど出来ちゃったな。よし!


 「はい!これはお姉さんからプレゼントだよ!着けてたらいいことあるかもよー」

 「わーい!」

 「ねぇしゃ、ありあとー!」

 「で、でも……」

 「いーの、いーの!子どもが遠慮なんてしない!ね?」

 「うん!あなたはどれを作ったの?」

 「えっと、そのネックレスです……」


 指差されたネックレスの石に魔力を込めて……


 「はい、どうぞ!」

 「あ、ありがとうございますっ!」


 出店のほとんどのものが売れたので、孤児院に売りものを取りに戻るらしい。そのあとは他の子と交代してお祭りに行くんだって。


 「じゃあねー!お祭り楽しんでね!」

 「はい!ありがとうございました!おふたりのおかげでみんなでお祭り楽しめると思います!」

 「「ばいばーいっ!」」


 子どもたちと別れた後、街をめぐりつつお菓子とかお菓子とかお菓子とか………限定商品めぐりをした。

 日持ちしないケーキやパフェを食べ歩き、日持ちするクッキー、飴、パウンドケーキなどを買い集める。お茶っ葉も試飲させてもらえたので気に入った何種類か買ってみた。うん、満足。

 タナカ洋菓子店には本当に感謝しかないよ……ケーキやパフェはそこが発祥でレシピも公開したとか……それがなければお菓子やデザートは今頃どうなってたんだろう。


 あとは八百屋さんで簡単に食べれる果物や凍らせても悪くなりにくい果物も買っておく。あとでお母さんに凍らせてもらうつもりだ。簡単に水分補給できるし、なによりシャリシャリのまま食べても美味しいんだよねー。



 たくさんお菓子やデザートを食べたけど、宿屋に戻ってからもちゃんと晩ごはん食べたよ!煮込み料理がおいしくってついおかわりしてしまった。

 え?太るって?……き、きっと大丈夫っ!だって、明日から歩くしっ!食べた分は動くはず……だよね?


 あ、お父さんはお酒の飲みすぎでお母さんに怒られてたけどいつものことらしい。


 お風呂に入った後、ポーションの瓶や桶、服などをポシェットにしまってみたら……これも全て入ってしまった。マジックバッグ恐るべし。

 ちなみに背負い袋には毛布と水筒と携行食をいれておくことにする。これくらいなら負担なく持ち歩けるだろう……


 

 あっという間に出発の準備が整ったなー。明日の服は用意して壁に掛けたし、忘れ物もないかな?


 明日には王都出発だなんて……のんびり食べ歩きの旅楽しみだなぁ。



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