第4話
お父さんが手際よくいれてくれたお茶を飲んで待っていると、ベルガーさんがなにかを手に持って戻ってきた。
「じゃ、これに手を当ててくれるか?」
「はい」
机に置かれたのは……ん?四角い板?なんかみたことあるような……あ!スキルの儀で使ったやつかな?
「あれに手を当てるとスキルがわかるのよ。遺跡から見つかった魔道具なの」
「といっても、落ち人がギルド用って改造したらしいからスキルの儀で使うやつとは別物になってるがな」
「へぇ……」
その落ち人はヒヤマ様といって魔道具作りに関しては右に出るものはいなかったとか……魔道具を開発したり、改造することに長けていたんだって。
スキルの儀で使われている魔道具の作り方、ギルド用の改造版の作り方まで伝授していったそうで……今では魔道具師が作ったものを使用し、オリジナルは国が保管しているらしい。落ち人ヒヤマ様は国に色々ともたらしてくれるすごい方だったようです。
「スキルの儀で使うやつはスキルがわかるだけなんだが、この改造版はスキルや犯罪歴の有無を判断するだけでなく、カードに本人の魔力も登録され、ギルドカード作製機ってのに転送してギルドカードをつくっちまうんだ」
「すごいですね」
そのギルドカード作製機というのもすべて落ち人ヒヤマ様が手掛けたんだとか……冒険者ギルドだけでなく商業ギルドなどでも使われているもので、これがなかったら登録にしろ依頼にしろ時間と手間がすごくかかるんだって。
「そういう落ち人ばかりならよかったのになぁ」
「そうねー……」
「だな」
話を聞く限り、同じ落ち人でもヒヤマ様はアヤネ様とは全然違うタイプなようですね……
大聖女サヤカ様はたくさんのお話が残っているし、候補者のときに学んでいるので結構知っていますが、他の落ち人についてはあまり知らないんですよね……あ!タナカ洋菓子店も落ち人タナカ様が創業者ってことは知ってますよ!
直接知っているのがアヤネ様なのでどうしてもイメージが偏っていたみたい。
とりあえず、言われた通り四角い板に手を当てると……ぼんやり光ったあと板の上部に文字が浮かび上がってきました。
ぼんやり光らずに真っ赤に光ると犯罪歴有りなんだとか。犯罪歴有りで光るのは殺人などの重罪を犯した者でその場合は衛兵による取り調べがあるらしい。場合によってはそのまま捕まるって。とりあえず真っ赤に光ったら要注意人物かな?
板に浮かび上がった内容は……
◇ ◇ ◇
名前:アルティア
スキル:聖魔法、火魔法、水魔法、速読速記、精神耐性、頑強、魔力回復
◇ ◇ ◇
うん、ほとんど変わってないかな。聖魔法、火魔法、水魔法、頑強、魔力回復はスキルの儀でもあったはず。
でも火魔法が使えるといっても、なぜかでっかい魔法バーン!しかできないし、水魔法は水やお湯は出せて中級魔法までならなんとかバーンってならずに制御できるレベル……氷魔法も水魔法を極めると使えるようになることがあるらしい。
速読速記と精神耐性はたぶん第2王子のおかげですかね?スキルが増えて嬉しいような嬉しくないような……うーん、複雑。
お父さんやお母さんはもっとたくさんスキルを持っているらしく、大人になっても増える可能性は十分にあるそう。うん、これからに期待かな?めざせ、氷魔法!めざせ、かき氷!
「で、名前は自分で決められるがどうする?設定しなければ本名での登録になるが?」
「そうね、できれば本名じゃない方がいいわ」
「ばれる可能性あっからなー……そしたら面倒だろ?」
そっか、んー……
「じゃあ、ティアでお願いします」
「わかった」
あんまり馴染みのない名前だと呼ばれても気づかないかもしれないからティアにした。
「あ、保証人に私たち入れといてー」
「わかった」
保証人とは何か問題が起きたり起こした場合、連絡がいき、場合によっては責任もとるというものだとか。
「じゃ、これな」
「ありがとうございます」
受け取った冒険者証は名前とランク:E、保証人の欄に両親の名前が書いてあるシンプルなものだった。
「スキルとかは載ってないんだ……」
「魔力込めると出てくる仕様だ」
「最初から見えてると無用心だからってそういう仕様になってるらしいわよ」
「信用できないやつには見せるなよー!」
「うん、わかった」
ちなみに両親との関係は国の上層部と神殿の一部の人間しか知らないので、一緒に行動しても問題ないとかなんとか。
両親の娘ティアとして認識はされるけど、即座に聖女アルティアに繋がるってことはなないみたい。
「ベルガー、ついでに初心者向けの装備とおすすめセットも頼むわ」
「あ、今日の支払いは王宮持ちだから高くて売れ残ってるのでもいいわよ」
「はぁ。ちょっと待ってろ」
どうも、私が帰ったあとお父さんとお母さんは色々と細かい事も話し合ってきたみたい。
「でも、支払いが王宮持ちとか大丈夫なのかな?」
「いや、ほんとは陛下持ちだよ。私財から払うはずだから心配すんな。王としてではなく息子が迷惑かけた詫びを父親がしてると思えばいい」
「えっ、でも陛下に払わせるなんて恐れ多いよ」
「いいのよ。王妃様のお墨付きだし陛下もこれくらいで文句言わないわよ!それに陛下も王都で旅の準備で買い物する分はこちらで持つって言ってたし……」
「そうそう。アルティアが辺境に行くことになった一因でもあるんだから、必要経費くらい出して当然だな」
うーん……両親がそう言ってくれるなら遠慮なく買わせてもらおうかな。
「もちろん、慰謝料は別にくれるらしいわよ。そっちは正式なものでしょうね」
「この際だから搾り取っちまえっ」
「アルティアはなにか希望はあるかしら?」
「えー……そんな急に思いつかないよ」
私としては慰謝料って言われてもピンとこないし……
「じゃあ、これはどう?タナカ洋菓子店本店への旅費」
「おっ、いいな!ある意味脅しにもなるなっ」
「そうそう、下手したらそのまま国から出てかれちゃうのよ。でも慰謝料だから断れないっていうね」
「え?タナカ洋菓子店へは行ってみたいけど、今のところ国を出ていくとかは考えてないよ」
結構遠いしお金掛かりそうだけど、もし旅費を出してくれるなら旅行として行くのもいいなって思った。
「アルティアはそれでいいの」
「そうそう。無料で旅行できてラッキーくらいに思っとけ」
「うーん……わかった。で、装備はどこに売ってるの?ギルドに売ってるの?ここでぼーっと待っってて大丈夫?」
「ん?本来はギルドの売店とか防具屋とか武器屋回って探すんだけど、そろそろベルガーがよさげなの持ってくんじゃね?」
え、ギルマスさんにそんなことさせていいのかな?
「来たみたいよ?」
お母さんがそう言うとほぼ同時に扉が開いた……全然気づかなかったよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます