第7話
ついにはお父さん威圧スキル発動……これ、A級の魔物のほとんどが動けなくなったり、戦意を喪失するくらいすごいらしいです。
陛下も王妃様も顔色は悪いですけど、なんとか耐えてますね……おや?王妃様は私の作った結界石で耐えたんですか?陛下は代々の魔道具ですか……へぇ、結界石ってそういうのもカットできるんですね?物理的な攻撃も、魔法による攻撃も通さないけど威圧や精神攻撃などには弱いと思っていました。
でも、威圧スキル……体は傷つかなくともトラウマにはなりそうです……あ、私ですか?慣れているので特に何ともありませんよ。
「お父さん、お母さん……その辺にしてあげたら?(ほら、陛下はともかく王妃様はお腹に……)」
「そうよ。これ以上したら反逆罪とかで捕まっちゃうわよ(あ、そうだったわね)」
「お?悪い悪い(やべー、大丈夫だよな?)」
宰相様、神殿長や近衛兵の皆さんまでお顔が真っ青です。一応、この部屋の中全体を浄化しておきましょう……多少、気分がマシになるはずです。
国王陛下は大きく息を吐いたあと頭抱えてしまいましたし……宰相様も苦虫を潰したようなお顔です。
神殿長に至ってはブツブツと女神様に祈りだしてしまいました……
その後なんとか復活した陛下や宰相様との話し合いにより、とりあえず婚約者(仮)ってことになりました。
本気で気に入らなければ婚約はなし。
いきなり、ルールを変えるのは難しいが今後のためにも色々と検討していくとのこと。
ほかの貴族からの横やりを防ぐためにも婚約者(仮)なんだそう。
第2王子に婚約破棄された聖女っていうよりはやらかした第2王子よりもマシな婚約者になってよかったねっていう空気にしたいらしいです。
その言い草っていいのかな?って思ったけど王妃様が
「大勢の前でやらかすアレより研究バカなほうが幾分いいわよ?少なくとも話もきちんと聞くし……説得材料はまだあるし」
「う、うむ……」
王妃様だいぶお怒りの様子……お腹に触らないといいのですけど。辺境伯様はお話が通じる方のようで少し安心しました。説得材料は主にダンジョンや遺跡の許可ですね?興味のあるものを目の前にぶら下げればいいと……ふむふむ。
「そうねー、グレッグは研究バカだけどわるい子じゃないものね」
「いっそのこと辺境の坊やをそそのかして独立してやろうか?そうすりゃアルティアも好きに過ごせるぞ?」
「はぁ……それができるだけの実力も人脈もあるんだから冗談では済まなくなるぞ?」
「お父さん、そこまでしなくていいよ。いざとなれば国から出ていけばいいじゃない(美味しいもの巡りの旅……アリよね!)」
「おおー、そうか?(美味しいもの巡りの旅か……俺のオススメはな?)」
「……んんっ。アルティア、そう言うことは国王陛下の前で言ってはダメよ?(美味しいもの巡りの旅……いいわね!でも、ここでは大人しくしてなさい!)」
((ハイ……))
「よお、親友……今のは聞かなかったってことでどうだ?」
「うむ。さっきのところからだな?」
ふぅ……なんとかことを荒立てずに済みましたね。
「まぁ、あとはアルティア次第ってとこだな?」
「そうね。アルティアはどうしたい?」
「私は……辺境は危険がある分、聖女が行けば喜ばれるみたいですし……辺境はかつての落ち人が残したレシピで独自に進化した料理がたくさんあるそうですし、ゴタゴタしそうな王都より楽しそうですから行ってみるのもありかなーって」
「「そう……」」
うん、大勢の前でやらかす第2王子より研究バ……熱心なほうがマシだよ、ね?仲の良い婚約者にはなれなくてもビジネスライクなパートナーにはなれるかもしれませんし。
うーん。それでもダメなら、タナカ洋菓子店の本店を目指して旅行するのもいいかもしれませんね……ごくり。
相手も両親が色々あって可愛がっていた辺境伯ならまぁいいだろーってなり、両親も辺境伯領にお引越しして見張るらしいです。
「あっ、王妃様は……」
「わたくしもすでに安定期ですし、シェリルやアンドレがいれば問題ありませんわ」
「う、うむ……できれは出産の時期だけ、季節伺いって事で訪ねてくれると嬉しがの」
「わかりました」
シェリル様もアンドレ様もかなり優秀な聖女、聖人であるので問題ないはずだけど、そう言われるならその時期はこちらに戻ってこよう。もし戻らなくて何かあった時に絶対後悔すると思うし……
こうして、聖女アルティアはパーゼル大森林を含む広大な土地を守るグレッグ・パーゼル辺境伯との仮婚約が決定したのである。
他の聖女、聖人より頭ひとつ抜けた実力を持ち(本来なら拳ほどの結界石で街を囲えないし、S級冒険者の威圧スキルを緩和できたりもしない。それに多少空気が悪くなったからといって浄化はしない)最も大聖女に近いと言われていたアルティアが抜けた穴は大きいものの、クズール侯爵の力を削ぐことはできた上、落ち人の彼女も今までろくに仕事をしなかった分これからは頑張ってくれるようだし……親友とはいえ逆らうと怖いS級冒険者も何とか矛を収めてくれてよかったよかった。と思う国王だったがしばらくは王妃や王太子、第3王子から冷たい視線を向けられることとなる……
アルティアの両親は娘が望むなら国を出ることも辺境伯領を独立させる手立ても割と本気で考えていたが、娘が思ったより平気そうなことと辺境での料理を楽しみにしているのでいったんは引き下がることにした。
ただ何故かクズール侯爵家領から冒険者が減りそれに敏感な商人も減り、領民すらも少しずついなくなっていき一気に税収が下がったり……
そして、とある深夜にクズール侯爵家の屋敷周辺に突然地割れが起きたりしたがその真実を知るのはごく一部の者のみだ。
規格外でマイペース、やるときはやるけど食いしん坊で美味しいものに目がない聖女アルティアはスッキリした気分で辺境の地を目指し美味しいご飯屋さんへ寄り道をしつつ、最強の護衛である両親と旅行を楽しむ予定である。
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