第5話
「ああ、ルクシア伯爵が用意周到で助かったな……」
「用意周到というよりは心配性ですかな。瘴気もそこまで広がっていなかった為、浄化もすぐできたようで?」
「ええ、幸い魔物の被害も少なく瘴気にさらされた方も命に別状はありませんでした」
どうも国としても危険な場所には特に結界石を多めに用意するよう達しを出しているそうですが、領主がケチったり結界石自体を信じず用意しない場合もあるんだとか……特に反神殿派の場合。
複数を使用することによって小さな結界石でも効果範囲をカバーできるということも発表されてはいますが、つなぎ目が不安定になることもあるので推奨はされていないそう。ただし、小さな村では木の柵を設置するよりは随分といいからとよく使用されるみたいです。値段も安いですし。
……小さな村にまで目を配る領主が少ないこともあり、集落によっては自分で用意して神殿に願いにくることもあります。そういうときはなるべく長持ちするように願いながら魔力込めてますよ?イメージ次第で融通がきくのが便利ですよね。
だって神殿までくる旅費や精霊石まで自費だっていうんですよ?せめて、それくらいはしたいなーって……
そうそう。話は戻りますけど……聖女や聖人にも得て不得手はあるので結界石作りが苦手な方(作ることはできるのですが、結界石がもろくなったり魔力を必要以上に多く消費してしまう)も中にはいます。
しかし、その方々の結界ですら3日程度は持って当然なのです……それなのに彼女の作った結界石の結界は1時間も持たなかったといいます。候補者の練習したものでももう少し持ちますよ。
結界石作りが不得意という方はほかの何かに特化しているものなので、陛下の見極めたいという言葉はアヤネ様もそのパターンかどうかもしくはそもそも聖女でなかったかどうかを……いうことですね。
アヤネ様を密かに保護し養女にするくらいです……不正の方法を知っていてもおかしくはありません。そうでないことを願うばかりですね……
「やはりもう1度我々が同席の上、水晶に触れさせるべきでした。申し訳ありません」
神殿長は悔しそうに手を握りしめている。
そういえばアヤネ様は落ち人ゆえスキルの儀も公式にはされていないそうで、侯爵家曰くかつて大聖女と呼ばれたサヤカ様と同じ光魔法だとか……えらく自慢してまわっていた記憶がありますねー。
「光魔法は落ち人の方しかいらっしゃらないので、水晶も認められたのでは?」
「いや、侯爵家が動いていたならどこまで入り込んでいるかわからぬ故、何を信用していいやら……」
うーん。アヤネ様の光魔法は本当だと思いますよ?
アヤネ様が見たこともない光を操っているのを見たことがありますし……
時々自分自身をキラキラ輝かせてみせていたのはどういう意味かわかりませんでしたけど……そういえば第2王子と一緒にいる時はよくやってたような気もしますね。あれ、目がチカチカして私はあまり好きじゃなかったんですけどねー……
「うむ、神殿長が慎重になるのも無理ない」
「あそこ、私が王妃になったのがよっぽど悔しかったんでしょうね」
かつて娘を王妃にしたかったクズール侯爵家はもともと反王妃派で王妃の足を引っ張ろうとしていると聞いたことがあります。
「あのー……そういえば、私デクラン殿下に国外追放だと言われたのですが……どうしましょう?出ていったほうがいいですか?」
「まぁっ!そんな戯言1ミリも気にしなくていいですわ!」
「うむ。しかし困ったのぉ」
「えっと、なにかありましたっけ?」
困り事ですか?あー、騒ぎの火消しですねっ!無理ですね、今ごろ噂が拡散されはじめているでしょうから。
「いやの、第2王子がいないとなると第3王子だが……あやつまだ2歳だしの」
「ええ、それはさすがに……」
あっ!そうでした。すっかり忘れていましたが、聖女や聖人は代々守られるためにほとんどの方が王族と結びつくんでした。
第3王子はアルテアさまーって慕ってくださってとっても可愛らしいんですけどねー。さすがに結婚は……
王太子殿下と結婚なさったシェリル様も聖女ですしね……王太子殿下はすでに聖女を正妃にしてるため選択外なんです。
聖女ふたりを妻にっていうのは色々なところからの反発がある上に過去にそれをやって暗黒時代を作りそうになった者もいるそうで聖女、聖人を妻、夫に迎えるのは1人までと決まっているらしいです。それにおふたりは珍しく恋愛結婚なんです。シェリル様には候補者時代にお世話になりましたし、仲違いの原因にはなりたくないです。
「そうだな……わしの側妃か、辺境伯しかあるまいな」
「私もアルティアでしたら歓迎いたしますわよ!」
えー、国王様と王妃様ってラブラブじゃないですかー……しかも王妃様、極秘だけど今妊娠中だし……前回も高齢出産だったから私が極秘でサポートしたんだよね。
それもあって第2王子との婚約が進んだんだけど……ふたりは第2王子とはちがって、いつでも気にかけてくれていた。
第2王子が何かしらやからす度「負担をかけてすまない」と何度も声をかけてくれたし、王妃様も様々な配慮も行ってくれた。まぁ、打算もあったんだろうけど……小さなことならまたかってやり過ごせたけど今回はねぇ……無理ですよ。目撃者多すぎだし、第2王子にはうんざりです。
うん、そういえばそろそろ婚約者を決めなくちゃって時も国王陛下か第2王子か辺境伯の選択肢だったな……他にも王族はいるらしいけど評判が悪かったり信用できないとかすでに聖女と恋仲だったり。
辺境伯様は国王陛下の末の弟なんだけど、かなりの変わり者で有名……魔物の生態や遺跡、ダンジョンに興味があってわざわざ辺境伯になったって話でそれよりか近くにいる第2王子のほうが交流を重ねて徐々に仲を深めていけるだろうってなったんだっけ?全く仲良くなれませんでしたけど……
「辺境伯様はなんと?」
「うむ……あやつは遺跡の発掘許可と人員さえ出せば喜んで迎えるだろう」
「そうね、きっと簡単に丸め込……説得できるわね」
うん、それくらい研究バ……熱心なんだって。
辺境には魔物が出る森があってその奥にはいくつか遺跡やダンジョンがあるらしい。
ダンジョンは脅威もあるけど副産物も多く冒険者と呼ばれる人が辺境伯に多くいて、ダンジョンや森にいる魔物を狩って生活してるらしく、街中は比較的安全らしい。
まぁ、私もかつてはそういう生活していたのでそこに心配はありませんね。家族で国を移動する時は野宿なんかも当たり前でしたし。
「しかし、アルティアのご両親が怒りそうだな……」
「そうですね……アルティア、どうしましょう?」
「おふたりは寄付もたくさんしてくださって、時々孤児院の子供達に身を守る方法を授けてくださるいい方なんですけどね……」
「「「アルティア(様)が絡まなければ……」」」
そうなんですよね。うちの両親プラス兄弟たちは冒険者としてかなり有名なんですよ……私も聖女になっていなければ両親のように過ごしていたはずです。
うちの一家は昔から色々な国を渡り歩いていて、たまたま旧友の陛下を訪ねた時に忘れていたスキルの儀をさせてもらったら聖女候補になっちゃったんですよねー。10歳の時ですからあれからもう7年ですか……
あのときは大騒ぎだったなー……そのおかげで両親がこの国に定住することになって魔物の脅威が少し減ったんですよね。
「下手したらこの国から出て行くなんてこと……言い出さないよな?」
「んー……この国はご飯が美味しいから大丈夫だといいのですが……ほら、わたしが候補者に決まった時もそれでなんとかおさまったじゃありませんか?」
「う、うむ……」
「そうだったわね」
(((美味しいものに目がない一族でよかった……)))
ばーんっ!!
「「話は聞かせてもらったぞ(わよ)!!」」
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