第4話
「ま、まあ……これでも食べて待ってなさいということだろう」
「あっ!これはさっきのっ!」
「……うむ、毒もなさそうだ。安心なさい」
「ありがとうございます」
食べ損ねた限定品ですっ!わーい、ありがたくいただきます!
もぐもぐ……ティーカップがものすごく高そうです。落としたりぶつけて欠けることこないように気をつけなくては。
しばらくお菓子とお茶を堪能していると……部屋の外が騒がしくなった。
食べるのをやめ、姿勢をシャキッとして聖女モードで待機する。
すると入ってきたのは疲れた表情の国王陛下とお怒り気味の王妃殿下でした。
どうやらパーティ自体もお開きになってしまったようです。
おふたりは椅子に座るなり
「すまないな……あやつがあんなことをするとは」
「私からも謝らせてくださいな」
「いえ、どうせ側妃になるつもりでしたから……」
あの王子と子作りするくらいなら側妃制度万歳ですよねー。
聖女や聖人は代々守られるためにほとんどの方が王族と結びつくが、正妃か側妃かは聖女本人が選択可能(側妃の場合、王族とは白い結婚が多く人によっては本当に好きな人を愛人として囲うことも……)となっています。
白い結婚でも問題ないのは聖女は血筋から選ばれるわけではないかららしいです。
「……そういえば、殿下は私の悪行を訴えても聞いてもらえなかったと言っていましたけど」
「何ですって?陛下、どういうことですの?」
うわー、王妃様完全お怒りモード突入だ……一気に部屋の空気が凍ったよ。ぶるぶる。
「う、うむ。何度もアルティアがやるとは思えないようなことをしたと訴えてきたのだが……まさか、自分で調べもしていないとは思わなくてな」
「それで、どうなさったのかしら?」
「……アルティアがそんなことをするわけないから勘違いだろうと言いました。いつもの戯言かと思ったのが間違いだった……アルティア、本当にすまないな」
「いえ……私もあそこまで思い込んでいるとは知らなかったので」
「はぁ。どうやら私たちは息子の教育を間違えたようですね」
同じ教育を受けた王太子殿下は将来、賢君になると言われているくらいですから……教育の問題ではなさそうですけどね。
「はぁ……あれほど大勢の前でやからしたからには第2王子は継承権剥奪の上、2人を結婚させ幽閉塔に入れておくしかあるまい」
「ええ、今回ばかりはそうしますわ。たとえクズール侯爵が横槍をいれてこようともあちら念願の王族との縁組みですもの。文句など言わせませんわ」
「うむ」
幽閉塔とはやらかした王族が一生を過ごす場所である……ちなみに聖女だけはそこから厳重な警備の元、人々を癒す為にのみ出られるらしい。ある意味強制労働ってこと……幽閉塔は石造りで冬は寒く夏は暑いところだそう。もちろん最低限の食事はでますが贅沢などもってのほか。
民からすれば十分に暮らせる所だそうですが、豪華絢爛な城で贅沢三昧に暮らしていた第2王子にとってはまさしく牢獄でしょうね……
「そうですか……」
「それにここだけの話あのアヤネという娘……見極めたいのだ」
陛下がそう言われるのも無理はないと思います。
……だってあのスタンピードが起きたルクシア伯爵領に置いてあった結界石はアヤネ様が作った結界石が張ったものなんですから。
わざわざ民にアピールするため目の前で作ってみせたと聞いていますから、製作者に間違いはありません。
結界は張ると魔物はもちろん人も出入りできなくなるため、常に張ることはなく、緊急事態に使用することが多いです。
良家のお嬢様などは護身用に身につけていることが多いですが、似たような効果をもたらす魔道具(高価)もあるため神殿が独占しているわけでもないそう。
大森林やダンジョンが近くにある都市や隣国との国境などには複数は用意してあるとか。
基本的に結界石を使うと3日ほど結界が持つ為、その間に新たな結界石を用意するなり魔物を倒すなり解決を目指すそう。
結界石の元となる精霊石はダンジョンや鉱山などから採取でき、結界石にする以外にも色々と使われているため聖女が到着すればその場で簡単に用意できるんです。
結界石の効果は通常3日程度とされているが、結界石の大きさや魔力の込め様によってはひと月ほど持つものもあるみたいですね……まぁ、よっぽどのことがなければそんなに魔力込めたりしませんけど。
ちなみに結界石を使用した場合、結界石を持ち歩けば結界を維持したまま移動可能です。ただし、街を囲うほどの結界を張ると結界石はかなり大きいので維持したまま移動はかなり困難らしいです。よっぽどの力持ちが何人も集まらないと難しいですね。
閑話休題。
「アルティア様が制作した結界石をルクシア伯爵が持っていたのが幸いでした」
「私ですか?」
「ああ、以前わざわざルクシア伯爵自ら神殿へ来て頼まれ作っていたではないか?……ほら、あのお菓子だよ」
「はいはい!あの甘酸っぱいのがクセになるお菓子ですね!あれ、美味しかったです!」
「そ、そうか……」
そういえば……人のよさそうな貴族のかたが美味しいお菓子を持ってお願いされたような?たしか持ち込まれた精霊石は拳ほどの大きさの石でしたか。
それでできる限り効果を広範囲にして欲しいと頼まれたんですよねー……お土産のお菓子が美味しそうだったし、なんといっても王都では手に入らない特産品でしたし!その日の晩には無くなってしまいましたけど……うん、とっても美味しかったなー。今回の遠征はそれを探す余裕もありませんでしたからね。残念です。
あの時は魔力に余裕があったのでお菓子の分も頑張って魔力込めたんですよねー……でもなー、あれで街全部は囲えないと思うんですよ?普通は結界石の大きさが50センチは超えるものですから拳大ならひと区画が精一杯じゃないですかね。
ちなみに結界石、ポーションなどの料金は神殿と製作者半々……ただし、材料費は神殿負担。魔力の多い聖女、聖人にとっては良い内職となるんですよ。なのでお菓子をたくさん買っても大丈夫なんですよ!
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