第2話
はぁ……えーっと?どうも殿下の言い分ですと殿下の腕にひしとしがみついているそちらが本物の聖女だから私は用済みだとか……それにしてもすごいドレスですね……目が痛くなるような真っ赤な色にフリルやリボンが隙間なくついた派手な姿。アクセサリーも動く度にジャラジャラと……うん、重たそうです。さすがは主役?さんですね。
「……ん?そもそも聖女は女神様に認められれば増えるのですし、偽物って不正をした方ぐらいでしょう?私、不正した覚えもなければどうやって不正するのかもよくわからないんですが……」
「嘘をつくなっ!お前は不正して聖女になったんだろう!しかも、アヤネに仕事を押し付けたり、会うたび嫌味でいじめたり怒鳴っているそうだなっ!」
「うぅ……そうなんですぅ。それにデクランさまと婚約してることで神殿のみんなも逆らえないから、好き勝手してるんですう」
「な、なんだとっ!」
「いえ、だから……不正はしてませんから……それに身に覚えのないことばかり言うのはやめていただきたいですね」
あー、全然聞く気がないようですね……まるで自分達に都合の良い筋書きがあるかのよう。でもここははっきり否定しておかないと、後々火種になったりしたら困りますからね。
それに仕事を押し付けたり、会うたび嫌味や怒鳴るなんて……まさに殿下のことなんですが。自覚ないんですか。
もともとアヤネ様とは滅多に会いませんし……というのもアヤネ様、聖女なのにほぼ神殿にいらっしゃらないんですよ。
結婚した後なら通いの聖女もいるんですけど、特別な事情がない限り基本的に神殿で暮らすはずなんですけどねぇ……もちろん王都以外に拠点を置いている方もいますけど、大体がその地の神殿住まいです。
そもそも聖女、聖人とは聖魔法の素質があり努力と才能がなければなれないもので、候補者は10歳の時に全国民が行うスキルの儀で選ばれます。
候補者となると基本的に神殿に住み、勉強と訓練の日々です。
候補者に選ばれるのは名誉なことであり、家族にも支度金が渡されるので喜ばれることが多いそうです。
訓練を続けることで魔力量が増えるようで、成人してしまうと魔力量はなかなか増えないそうなのでここが頑張り時ですね。こちらは普通の魔法を使う方と同じです。……え?殿下ですか?殿下はあまり努力をなさらなかったので初級魔法は使えますが、中級魔法1発で魔力が無くなるくらいですかね……
神殿で朝と夜の祈りをきちんと捧げ続けると時々女神様の神託が受けられることもあるそう。私は聞こえたかなー?違うかなー?って感じなのでまだまだです。
神殿では勉強も多く規則もあるけど、あまり締め付けると逃げ出したり反発したりして……過去にいろいろあったとか。うん、過去の教訓を結構生かし頑張ってて、両親にも普通に会えるし、きちんと休日もあります。
お酒もお肉やお魚だって食べてもいいし……これは過去に女神様からお墨付きもらったらしいです。
大きな戦や疫病なんかが起きた時は率先してそこへ行かなければいけないけど、聖女1人で行くわけでないしそこはまぁ、そういうお仕事についたのだとわりきってますよ。さすがにお年を召した聖女や聖人、妊娠中の聖女などは無理をさせられませんから除外されますけど。
そもそも候補者は何人もいる上に聖女、聖人の数も女神様が授けたと言われる水晶が認めれば上限なしで増えるんだそう。
現在、水晶に認められた方は下は10代から上は60代まで国内で11人。実際に活動しているのは9人です……あとのおふたりはご高齢なので実質引退しておられますが、時々候補者たちへ指導したり、比較的簡単にできるポーション作りなどをされているそうです。
水晶は一定以上の実力があれば光る為、聖女、聖人にも力の差はあるようです。
候補者は最低でも月に1度は水晶に触れ光るかどうか確認します。中には毎日チェックする方もいますけど……実力不足ではまったく光らず、実力や努力が認められると見たこともないほど強く鮮やかに水晶が光るのです。
候補者は基本的に10年で水晶に認められなければお役御免となります。
しかし、勉強や訓練もしっかりしている上、望めば神官を目指すことも可能でそれ以外の職場も紹介してもらえるため悪いことばかりでもないそう。
神殿長もかつては候補者として修行していたが全く水晶が光らず10年……その当時の大聖女と比べ歴然の差を感じ心がポッキリと折れたと話してくれたことがあります。しかしそれとともに強い憧れを抱き候補者から外れた後も神官として働くようになったとか……
聖女、聖人の誕生はお披露目も兼ねてお祭りになりますね。私の時もひと月近くのお祭りが続いたような……
主な仕事は植物と心を通わせて成長を促す、結界を張ることができる結界石の製作、魔物が発する瘴気を浄化、怪我や病気を治す、ポーションを作るなど様々ですね。
「何度、父上にお前の悪行を訴えても聞いてもらえず……おい!聞いているのかっ」
「……ええ」
この会場の皆様が聞いていらっしゃると思います……はぁ。明日にはこの話題で持ちきりでしょうね。
さて、本物とか偽物とかはどこから出てきたのでしょうか?私、結構頑張ってたと思うんですけどねー……
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