【偏見しばき】

「偏見ってぇなんだと思う?」

ガッシリとした体に大きめの英字トレーナーと黒いパンツを着こなし

ニット帽にグラサンをつけヒゲを蓄えた

強面な狼木さんは、店が休みなのもあってから今日は珍しく

早くから来て、タバコをふかしながらふと

そう呟いた。

「なんだいなんだい?いきなり突拍子もない」

狼木さんと長年の腐れ縁の裂口さんは、

左手でライターをパチンぱちんと

玩びながら言い放つ。

「いやな実は、こんなもんを見っけてな」

長い腐れ縁のせいか狼木さんも慣れたもので受け流しながら

スマホを操作しある一本の動画を見せる。

その動画は

meTubeのショート動画で顔立ちと派手な髪色が浮いている青年が、

軽快なリズムに

乗せてこんな格好をしている奴はこんなだ!!

とマネをして大袈裟に紹介していくと言うものだった。

「あー最近よく見ます」

「でも、どうしたんだい?あんたこーゆー動画見る性質(たち)だったっけ?」

「いやなんか、疑問なんだけどよ」

と言いながらコーヒーを飲んでいる私を見やり言う。

「人間ってなんでこんな他人の評価なんて気にすんだ?」

「えーそれ私に聞きますか?」

「この面子でお前さんぐらいしか

いないだろ?」


裂口さんも同調し首を縦に頷いた。

たしかに私はこの中で唯一の

人間だ。

が、忘れられていることが一つある。

「いやいや…忘れられてますけど

私社会不適合者拗らせてますからね!

つまりつまりですよ…」


私はそう一回ためると二人を見やり

持ってるタバコを自由の女神ように持ち

高らかに宣言したのだった。


【つまり実質妖怪!!】

「「いや、妖怪舐めんな」」


それと同時にクロスカウンターのように

突っ込まれ私の宣言は無情にも

消えたのだった。ぐすん

でも二人

なんやかんや息があってるし、

実は…?と思ってる今日この頃である。

「んで話反らしちゃいましたけど

人間でも気にする人は気にするんじゃ

ないですかね?」

「そうゆうもんかー」

狼木さんはそう言いながら

タバコに火をつけ煙をひとはきする。

「あんたも人の目を気にするんだね」

裂口さんが意外そうに私の

顔を見て言う。

「まぁ気にしますよ〜

昔よりは軽いかもですけど」

「なんで人の目なんて気にして生きてんだ?俺等よりも人間は時間が少ねぇのに」

「それが人間って生きもんなんだろうね」

裂口さんは、天上を見つめながら

そうぽつりと口にする。

狼木さんも最後の一本を吹かしながら

「ふーんそうゆうもんかい…」 

納得してるかわからない表情しながら

スマホをいじりだす。

結果その日の結論は「感じかた次第」で

終わったのだった。


(後余談だけれど、

狼木さんはその後

絶対ノリで撮ったろ貴様みたいな

古着偏見動画を

見つけキレていた

裂口さんと別ベクトルで

お父さんが怒ってるみたいな怒りかたを

するので怖い…)


所でさっき真っ向から否定されたが

私は妖怪みたいだなって思うときはある。

事実、この喫煙所にいる人たちの中で

唯一の人間だからと言うことと


前に、裂口さんから聞いたのだが


この喫煙所は人間が入る事は、ない。

と言うか無かった。私が初めてらしい。

その後に、私と似たような来る事も

なかったので現在、

一人だけ異端な存在になっている。

「(これってもしかして

主人公の布石なんじゃぁ…)」

そんな妄想を頭の中で繰り広げては

消しを繰り返す

喫煙所帰りの午後

だんだん初夏の香りがしていく

帰り道だった。








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