【聞いてやぁ】
1
「んで、どうしたんですか?」
私がそう聞くと
狐里さんは、
ポケットからタバコを取り出して一服すると煙と一緒に、深く深くため息をついた。
「はああああっっ・・・
あんなぁ実はなぁ今日の劇場終わりの事やねんけどな」
「はい」
狐里さんは、普段はいろんな劇場を周り芸人をしている。一般ぴーぽーからして見ればそれだけで、すごいと感じるが
前そう言うと狐里さん曰く、
「ウチなんてまだまだよ・・・全然金もないし素人に産毛生やしたレベルや」
らしい。
狐目線なのでベクトルが
よく分からないが自虐ネタを飛ばしていた。
ちなみにコンビではなく、狐里さんはピンで、漫談スタイルのネタをしている。
「今日も出番終わってん、で自分で言うのもあれやけど今日は、わりとウケたんよ」
「じゃあ良かったんじゃあないのかい?」
裂口さんが、本日3本目のタバコに火を付けながら言う。確かにそうだ。
が、狐里さんは首を横に振る。
「それがちゃうのよ・・・
ネタともろもろ終わって
帰ろかな思って荷物取りに行こうとしたら、今日の出演の中でも若めの男女コンビの子から声かけられたんよ」
「なんて声かけられたんだい?」
「そのコンビの男のほうから「あんたの芸は人を下げていて古くさい」っていきなりキレてこられた」
「「・・・・・」」
瞬く間に、喫煙所に重めの空気が、ガスのように張り詰め、件の狐里さんは思い出して腹が立ってきたのか、肩をワナワナ震わせながら、残りのタバコをすべて狐火で消し炭にし
吠えた。
「なっんでやねんんんんん!!なんで!なんで!なんでなんなんで!
ウチがぁ年下も年下と言うかウチからして
見れば赤子も同然のような小童から、なんでキレられなきゃあかんねん!!!!!くそダボがぁ!しかも、
人を下げててつまらないって・・・!ウチかて下げてばかりちゃうわ!!名誉毀損で訴えられたら笑い事ちゃうからウチが夜なべして、ギリギリ探りながら書いてるのになんじゃぁホント!あの○○○喉船かっきったろかな思ったわあああああああああああああああああああああああああ!!!」
変化も怒りによって解け、半獣と化し
狐里さんは、しっぽをふるい立たせながらシャァー!と怒りつくした。
怖かった。
(なお、この後もさらにキレていたが
放送禁止用語、タブー盛り沢山倫理観はいずこへの百鬼夜行となっていたため、使えそうな所だけ書く事にする)
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
髪もなにもかも振り乱し、狐里さんは肩で息をしながら天を仰いだ。
「だっ大丈夫ですか・・・」
私が恐る恐る声をかけると、狐里さんの狐目がぐりんとこちらを向き、私の体はヒゥ!とたじろいだ。怖いのだ。ガン開きの狐目は・・・
「だ、大丈夫や・・・ごめんなぁ
なんか当たり散らしてもうてっ
あれ?さきはんは?」
「いや、スッキリしたならっ良かったです・・裂口さんは休憩終わって仕事いきましたっ」
「さよか、後でさきはんにもお礼言わなあかんな」
「そっそですね・・」
その後、その場をつっかかてきたそのコンビの女性のほうがなんとか場を取り持ったらしいが、
狐の呪いかなんなのか、しばらく男のほうは小さな不運が一ヶ月続いたらしい。
と噂で聴いた。そして私は金輪際
狐里さんを敵に回さないようにしようと心に決めたのだった。
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