第2話

「あぶジィ、ただいま~って、うわ!またアンタ達

 来てたの!?確か、一昨日も来てたじゃん!」

帰宅して襖を開け、部屋の中にいる面子を見た途端、私の身体から一気に力が抜けた。

あぶジィを取り囲むように川男、鵺が胡座をかいて座り、部屋の隅っこで小豆洗いが小豆を数えており一反木綿があぶジィの周りをウロウロしている。そしてちょっと離れた所にお稲荷さん夫婦がニコリと笑っていた。

「お稲荷さん達お久しぶりです。小豆さんもいらっ

 しゃい、ゆっくりしていってね。という事で他の

 者達は、邪魔だから今すぐ帰ってよ。」

「おかえり楓子。本当に久しぶりじゃのう。相変わ

 らず元気で良かった、良かった。のう?」

「ええお前様。楓子会いたかった。ちゃんと毎日ご

 飯食べとるかえ?」

お稲荷様達と会うのは、とても久しぶりだったので嬉しい私は、ニコニコしながら

「アハハ、ちゃんと食べてるよ。お稲荷さん達も元気そうで良かった。子狐さん達は元気?」

「元気過ぎて困る位じゃ。寝かし付けてから、そっ

 とワシらは来たんじゃよ。」

「そうしなきゃ、自分達も行くと言う事聞かないからねぇ。楓子に会えて嬉しいわ。」

穏やかにお稲荷様達と話している途中で、一反木綿が話に割って入ってきた。

「いつまでお稲荷とばかり喋っとるじゃい。ワシら

 には何の挨拶も無いとは失礼な小娘じゃわい!」

「うるっさいなぁ、アンタまだいたの?さっさと帰

 りなさいよ。私はお稲荷さんご夫婦と小豆さんし

 か歓迎してないの。他の妖怪には用は無いし邪魔

 でしかないのよ。ですから速やかにお帰り下さい

 。出口はあちらですよ。ハイ、さようなら。」

そう言ってシッシッと払いのける仕草をすると、

「何じゃい、それが客にすら態度か!?客が来たら茶

 菓子の一つでも出すのが礼儀じゃろがい。全く無

 礼で気の利かん小娘じゃわい。」

「オイ、コラふんどし妖怪!アンタ調子こいてんじ

 ゃないわよ。お稲荷様と小豆さんは別として誰が

 客だって?アンタ達は、いつも勝手にウチに来て

 るだけじゃないの。呼びもしてないアンタ達に出

 す茶菓子なんて無いわよ。図々しいにも程がある

 わ。か、え、れ‼︎」 

「何でお稲荷と小豆洗いだけ別なんじゃい。ワシら

 だって同じじゃろがい。それにワシはふんどしじ

 ゃないわい。」

「どっからどう見たってふんどし妖怪でしょうよ。

 10メートルもあれば、さぞ何枚ものふんどしが

 作れるんじゃないの?」

「なんじゃと~!言わせておけばこの小娘が‼︎今日と

 いう今日は我慢ならん。くびり殺してやるわい

 ‼︎」

「やれるもんならやってみなさいよ、ふんどし妖

 怪。相手になってやろうじゃないの。ホラ、ホ

 ラ」

「ぬお〜、小娘がぁぁぁ」

唸りながら向かってきた一反木綿をあっさり右手で簡単にむんずと掴み足下(?)からくるくると手早く巻いて輪ゴムできっちり止める。

「ふんっ、口ほどにもない。」

巻物状態になった一反木綿をポイッと放り投げた。

「ホホ、また負けたのう」

とお稲荷さん達が笑いながら言う。

「ウチはね、公園でも無いし憩いの場所でも無いっ

 て何回言ったら分かるの?いい加減、ウチに集ま

 るのやめなさいよ。他にも場所はいくらでもある

 でしょ。全く何故こうもウチに来るのかしら?」

ぶつぶつ文句を言っていると、相変わらずボソボソと話す川男が小声で言った。

「...おもてなしされる気分を味わいたいにょ。」

「、はぁ⁉︎何ソレ?」

川男というのは、全身真っ黒い二人組の妖怪で、私は川兄弟と呼んでいる。語尾がにょなのが謎だ。

 

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