第6話 戦争の結末

          戦争の結末


 仕方なく、私は彼の影武者と成るべく、自らの電脳ソケットを、男性型義体へと移し、彼とうり二つの人工皮膚を装着して前線に立つ事にした、しかし、人工皮膚を張り終えた時には既に王城はほぼ占拠され、彼は捕らわれてしまった後だった。

 私は彼を救うべく。単身的陣営野営地に乗り込んだが、エージェントと軍隊ではやはり火力が違い過ぎた。

 エリーの義体は、徐々に壊されて行く。やむなく脱出したエリーは、彼の残してくれた秘匿研究施設へと逃げるしか無かった。

 王城地下の研究施設は、破壊した。

 国を支えていたマザーコンピューター基地でもあったこの秘匿研究施設で、私は、これまで倫理的にどうかと思い、実行して居なかった事をする事にした、それは国際指名手配となる様な大罪ではあったが、むしろ逆に絶対に逮捕される事も無く成る事に気が付いたからだ、それこそが、世界中のスーパーコンピューターのハッキング、掌握。

 その作業が完全に終わったのは、三日後。

 既に、国王と彼は処刑され、国は亡くなってしまって居た。

 完全に機能をマヒさせた敵軍を葬るのは、簡単だった。

 私は、かの国を、世界中に未だ僅かに残っていた核兵器の全てをぶつける事で、その国土の全てを焦土と変えた。

 折角手に入れた幸せを、破壊したかの国の全てが許せなかったのだ。

 そしてその全てを憎み、呪ったのである。

 かつて自分の生まれた国、日本にも、死の雨は降るであろうと予想は出来た。

 だが、私を捨てた者や、慰み者とした全てが詰まった国など、もうどうでも良かった。

 そして私は、探した。

 自分の娘、この国の王女たる娘と、その世話係のメイドの姿を探した、必死で探した。

 しかし、何処にもすでに見当たらなかったのだ。

 だが、同時に遺体も見つける事は出来なかった。

 それは、うまく逃げ果せる事が出来た証でもあった。

 後は、罷り間違っても死の雨の降る国へ逃亡して居ない事を祈るだけだった。

 私は、この研究施設の出入り口の在る田舎町で、診療所を始めた。

 義体の顔を変え、男性医師として、戦争の爪痕を少しでも和らげようと、欠損した一般人たちに、義手、義足を作り、提供し続けた。

 私の資産の続く限り。

 それは、私なりの贖罪だった。

 私がこの国へ逃げ込んだせいで、この戦争が起き、国が滅んだのだと言う思いが私を突き動かして居た。

 そして、ついに私の資産が底を付いた時、合衆国の連邦銀行から、私の口座へと、膨大な額が流れ込んで来た。

 それは合衆国が私に賛同したから、と言う訳では無かった、完全に世界のコンピューターの全てを掌握して居たのは私の電脳と、私の生み出した、AIアンドロイドだったからだ。

 学習能力を最大にしていたアンドロイドは、私に忖度をして、資金を調達したのだった。

 もはや既に、彼女達は私の分身ですらあったのだ。

 私の生涯の記憶を学習し、私の心情をも学習した彼女達は、私その者ですらあったのだ。

 そして、私は世界の女王となった、いや、男性型全身義体を纏って居たので、王となったのだ。

 しかしそれは、とても寂しく、悲しい引き籠りでしか無かった。

 私の行動は完全に制限され、アンドロイドに常に警護される窮屈な生活が待って居た。

 私は死ぬ事も許されなかったのだ、研究を続けていた一部のAIによって、義体へ移した脳は寿命が10年と判明、その対抗策として、脳の保護を行うナノマシンで構成された薬品が開発され、私の脳は、世界の至宝として保護される事となったからである。

 かと言って、脳だけで何処かに保護された訳では無く、最終手段として自らの身を守れるように、最強の性能にカスタマイズされた全身義体にビルトインされて居た。

 そのパワーは尋常では無かった為に、当面私は自力で生活する事はまま生らなくなって居た、制御が困難過ぎたのである。

 全ての世話をAIアンドロイドが行い、私はひたすらに研究を続けるしか無かった。

 世界中の子供達に、私の提唱する教育のみを課して、抵抗を将来的に無くす取り組みも行われた。

 何故そこまでして私を保護する必要があったのかは、今となっては謎なほど些細な物ではあったが、結果、世界の警察を歌い続けていた合衆国、洗脳教育を容認出来ないとする、ロシア、中国、そして私の彼を殺したかの国の残党等が賛同したレジスタンスが結成されたのもこの時期だった、敵の敵は味方、と言う訳である。

 しかし、コンピューターの全てを掌握されて居た彼らの活動は、かなり限定的な物でしか無く、大した抵抗とは言えなかった。

 まるで、アメリカの映画、ターミ〇ーターシリーズの人類対AI

 の戦争の様でもあった。

 これは、後に私の罪で有ると、私自身が苛まれる事となった。

 世界中で、レジスタンスによるテロが勃発し、それに対するアンドロイド軍が制圧に動くと言う事に成ってしまったのである。

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