第4話
【202X年04月01日 18時00分 ヘブン トウキョウ カジノ】
遊技場へと繋がる出入口用の扉の前。
先頭にいる直哉とかぐやの2人がそれを両脇から挟む形で。その後ろにAZ ITの裏部署こと悪魔災害対策部隊に所属している隊員の10人が臨戦態勢で待機。
直哉は相変わらず高級スーツを着ているの対し、かぐやをはじめとする他の人達は全員戦闘に最適化された服を着用している。
「対象はこの扉の先にいるってことでいいの、かぐやさん?」
「ええ、事前情報として貰っている生体反応と同じものをウチの情報部が確認済みよ」
「はーぁ、ただでさえお小遣い制のせいで毎月キツイっていうのに今日も特別価格でお仕事ですか。……この後どうやって家まで帰ろう」
直哉専用の銃なのだろうか。1人だけ明らかに見た目が違うそれを扉の横で構えながら、そうぼやいた。
「どうやってて…あー、今日は自転車で来んだっけ。それなら私が」
恥ずかしさからか若干顔を赤くしながらも一緒に帰ろうと誘おうとしたその瞬間―――
ドーーーン‼
中にいる悪魔の攻撃により扉が勢いよく吹き飛ばされたと同時に、爆風が直哉達を襲った。
「おおっ……、一文無しの俺のことを殺したところで借金は一円も減らないっていうのに、いきなりやる気満々じゃないですか」
「そんなくだらない冗談はいいから、早く突入するわよ!」
「はいはい。それじゃあかぐやさん達は陽動の方よろしく」
そんな雑な作戦計画にも関わらず誰一人として文句を言わずに室内へと突入し、一斉に銃撃を始めた。
その隙に直哉は右手首に取り付けている隠しワイヤーを使用し、素早く敵悪魔の背後へと回り込んだ。
そして化け物らしく人間離れしたガラスの図体の中心でグルグルと回り続けているルーレットのある一点に狙いを定め、
「フンッ」
勝ちを確信したといった感じの笑みを浮かべた。
それと同時に自身の右手の甲に刻まれている紋章を少しだけ光らせ、それに持った銃から銃弾を発射させた。
パリーン。
しかし直哉が撃ち込んだ銃弾はガラスを突き破り狙い通りの位置へと到達したにも関わらず、そこにあった核へと届く前にガードされてしまった。
「やっぱりダメだよ―――ッ⁉」
自分の攻撃が防がれたことは予想の範疇であったのであろう。
その点に関しては特段驚いた様子もなかったのだが、一瞬の間を置いていきなり敵の腕があり得ない方向を向きながら凄い勢いで直哉に向かって伸びてきたことは予想外だったらしい。
分かってましたよ感から一転、紙一重で敵の触手攻撃をバックステップで避けたのも束の間のこと。
「ちょっ⁉」
間髪入れずに合計で4本ある腕を順番に使って
「ッ、あぶな!」
次々と縦横無尽に攻撃を繰り出してくるのに対して
「待って待って‼」
ギリギリで交わして見せたり、時には仕込みワイヤーを駆使してかわしていたものの相手は全てにおいて化け物レベルなのに対して、こちらは何の強化もされていないただの人間。
「やっば」
そう何度も攻撃をかわし続けることなどできるはずもなく、4度目の攻撃を避けた際に態勢を崩してしまった。
そして態勢を整えることができずそのまま床を転がり続け勢いよく壁にぶつかったところで、ようやく止まることが出来た。
「―――ガハッ‼」
しかしまだ意識はあるとはいえ再びさっきまでの俊敏な動きをすることは難しそうである。
その証拠に直哉はふらつきながらなんとか立ち上がろうとしている。
そんな絶好のチャンスを敵が見逃すはずもなく、そのまますぐに5度目の攻撃を繰り出した。
それまでの様子を敵悪魔が途中で召喚した手下らしき格下悪魔の群れを相手にしながら見ていたかぐやは、
「なお‼」
そう直哉の名前を叫びながら先程まで使用していた銃を投げ捨て、代わりに右太ももに装着していたレッグホルスターから拳銃を抜いた。
そのまま走り出したかと思えばなんの細工もなしに壁走りからの壁キックからのバク転。
この時点でかぐやは直哉の真上で頭を下にした状態で敵悪魔と向き合っているだけでなく、しっかりと銃口は敵に向いているどころか既に銃弾は発射済みである。
そんな人間離れした彼女の動きは流石に予想外であったのであろう。
敵は突然のことに驚きはしているものの反応するだけの余裕はまだあったらしく、自身の前にシールドを展開しそれの勢いがなくなるまで食い止めておくつもりらしい。
最初の足止め時の一斉射撃同様、シールド展開時は手下を召喚することしかできないらしく攻撃をするのであれば今が絶好のチャンスである。
しかしかぐやには最初からそんなことをするつもりはなく、真下にいる直哉へと手を伸ばしたタイミングで先程撃ち込んだ弾丸の動きが完全に止まったと同時に激しい閃光を発した。
ここで本来ならばかぐやが直哉の手を握り救出といったところだったのだろうが、
「よくやった泥棒猫。あとは私達がコイツを片付けるからお前はすっこんでろ」
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