第4話 悲壮感

 2回目の勤務はユリコ店長は休みだった。

 この日は朝から勤務デビュー。オープン前の準備がメインだった。

 朝は大抵二人でオープン準備をした。

 私とオープン準備をしていたのはユリコ店長との時もあれば堀さんという厚化粧の50代おばさん、中山さんというよく喋る背の低いおばさんだった。

 この日は堀さん。色々と教えてくれたがどことなく上からものを言われている気がした。

 なんとかオープン。1時間も経たずに私の嫌いな沖さんが来た。やはり無視。そんなに私のことが嫌いなのだろうか。

 そしてこの日、初めて会う人で元ヤンな見た目の島田さんがいた。島田さんは沖さんと同年代で30代半ば。色々教えてくれる人だった。

 そんな島田さんが私に言った。

 「うちの店長さー、可愛いしょ?何歳だと思う?」

 「えーと、30なったばかり。かな?」

 「ざんねーん。あんた今23?店長今年38!私より年上!であんたより15上だよ!」

 衝撃だった。あの見た目で40手前。美しすぎると思った。でも、15歳離れているから嫌いになるとか、諦めるとか、そういう感情はなかった。なぜならユリコ店長は仕事熱心のキャリアウーマン、独身女性で自分が頑張って消防に合格して結婚する!そう決めていたから。

 ただ、少しだけ悲壮感もあったことは否めない。早く結婚しなければユリコ店長との間に子供が出来なくなる。そんな妄想を勝手にしていた。

 ユリコ店長がいなかったこの日、私は全くといいほどメモをとらなかった。

 私のメモ帳はユリコ店長の言葉を残すためにあるのだから。

 この日は自分の与えられた仕事を急ぎでこなし、そのあとはユリコ店長から教えてもらった靴の知識を駆使していくつもお客さんに靴を売った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る