第40話~夜会の後の夜~

夜会が無事に終わり屋敷に戻るフローライト家一行。


アザレアの事や砂糖の事など思ったより何も言われずに済んでよかったと安堵する美桜とオリヴァー。備えあれば患いなしだが、今後も用心するという事になった。


明日はいよいよ女神祭当日だ。フリージアの人達の準備も順調で当日を迎え各家庭でパーティー料理が振るわれたりプレゼント交換が行われたり、もう一つ、女神信仰のあるこの世界ならではの女神への祈りも行うようだ。普段から食事の前に祈りはしているが今までは女神祭とは名ばかりで何もしていなかったようで、今年からは食事前に普段より長めの女神への祈りを行う事になった。


――フローライト家。カノンの自室。

今日は朝から忙しかったのと夜会でいろいろな事があったのでさすがに疲れたのかいつもより少し早めにベッドに入る美桜。


「明日はいよいよ女神祭当日ですね。街はすごい盛り上がりになりそうです。街の人達もあんなにツリーを喜んでいましたし。この企画をカノンさんのお父様に相談してよかったです。そういえば、明日が女神祭という事は25日なのですよね。現代の日本もクリスマスですね。こちらの世界に来てまだ少ししか経っていないのに長くいるような不思議な感覚です。それくらいいろいろな事を体験させて頂きました。」

美桜は眠りにつく前にこの世界での生活を振り返る。


ふと思い出したようにベッドから出て本棚に近づき本棚にしまっていた例のおまじないの本を手に取り再びベッドに戻る。


「この本が今の生活のきっかけになったんですよね。奇跡は確かにありました。今のところ周りの方々に支えられているというのが大きく何もかも上手くいきすぎて少し怖いです。こんなにうまくいく人生があっていいのでしょうか…。


人生は困難な事も嫌な事もありますが、それも含めて私の人生ではないのでしょうか…。上手くいき過ぎてる人生。それはそれでつまらないものなのでは…。今の私には答えは出せませんが…。リアライズチェンジ…。この言葉で私自身少しですが変わるきっかけになったのは確かです。ありがとうございます。」


美桜はおまじないの本を見つめながら自分の人生の事を少し考えた。そして生活や美桜自身が変わるきっかけになった以前唱えた呪文を言葉にし、おまじないの本や呪文にお礼を言って本をベッド横の机に置き眠りにつくのだった。


この時、別の場所で美桜と全く同じことをしている人物がいた。



――美桜は夢を見た。前に見たのと同じ夢だ。辺りは白く何もない世界にいる夢。

そこには美桜一人ではなかった。これもまた前と同じ。


目の前にいるのは現代の美桜の姿をした人物が立っている。眼鏡はかけていないが美桜は自分の姿を17年も見ているのだ。当然ながら間違うはずはない。

ただ一つ違うとしたら、中身が入れ替わっていて美桜は今カノンの姿だ。

なので目の前にいる美桜の姿の中にはカノンがいるはずだと美桜は考える。

美桜は恐る恐る目の前にいる自分の姿の人物に話しかける。

「カノン…さん…ですか?」

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