第41話〜聖夜の奇跡〜
美桜の問に目の前にいる美桜の姿の人物が答える。
「そうです。この姿ではありますが、わたくしはカノン・グレイス・フローライトです。わたくしの姿をしてはいますが……あなたは美桜さん……なのですよね」
「はい!私、美桜です!前回の夢以来ですね!お久しぶりです。」
やはり美桜の前に立っている人物はカノンで、カノンも目の前にいるのが美桜だと確認する。
「お久しぶりです、美桜さん。また会えて嬉しいですわ。あの夢で最後と思っていましたので。いろいろお話しをしたいのですがいいかしら。」
「私もです!私もお会いできて、またこうしてお話しもできてすごく嬉しいです!私もお伝えしたいことがいっぱいあります。」
二人は久々の再開に笑顔があふれ、椅子など何もない世界だが座ってそれぞれの世界での出来事を話す。先に美桜から話した。
「まぁ、美桜さん。そのような政策を?!確かにわたくしの国にはお菓子はないので、よい政策だと思います。美桜さんだからこそ発案できた政策ですわね。わたくしは美桜さんの世界で生活するまでお菓子の存在を知らなかったので、わたくしでは思いつかない政策です。
それに、美桜さんみたいに自分で動いて行動することもありませんでした……。ただ自分の意見を言う事しか……。言うのは簡単です…。行動もせずに言うだけの令嬢は今思うと他の貴族の方々の言うように戯言にすぎませんわね……。美桜さんは貴族の皆さんから何も言われたりされたりしませんでしたか?大丈夫でしたか?」
カノンは美桜の政策の話に驚き、以前の自分の行動を思い出し反省したような寂しそうな顔をして美桜の身を案じた。
「カノンさん!カノンさんも他の貴族さん達に認めてもらおうと頑張ったのでしょう?!カノンさんも十分頑張ってます!ですからそのようにご自分を悲観しないでください!それに貴族さん対策なら大丈夫ですよ。カノンさんのお父様が一緒に対策を考えてくださったり、庇って頂いたりすごく心強かったです!」
美桜はカノンを励まし、オリヴァーの事も話す。
「そうですの…。あのお父様が…。美桜さんのおかげで国や家の中が明るくなっていってますのね…。次はわたくしがお話ししますね。」
カノンは美桜の話を聞いて自分の生まれた世界のはずなのに自分の知らない世界のようで少しだけ寂しさを感じ今度はカノンが美桜の世界でのことを話し出す。無論、美桜の家族の事は伏せれる所は伏せた。こればかりは美桜自身が直接本人達から聞くべき事だと思ったのだ。
カノンの話を聞いて美桜も美桜で驚き混乱している。
「カ、カノンさん…。そのお話…本当…なのですか…。眼鏡を外して登校…。隣のクラスの人と揉めて再犯対策に空手……。原さんや峰岸くんを下の名前呼び……。それに親衛隊やファンクラブ……。」
美桜は今にも気を失いそうなほど顔が真っ青で下を向きながら一人でぶつぶつ言ってどうにか現実を把握しようとしている。
「(美桜さんの姿で少しやり過ぎたでしょうか…)」カノンは心配そうに美桜の顔を覗き込む。
「あ!下の名前!カノンさん!峰岸くんの名前を下の名前で呼んでいると言いましたか?!」美桜はカノンの話の中に出てきた峰岸君の事を急に思い出し突然顔を上げカノンに問う。
「え、えぇ。雅君とお呼びしています。本人に呼んで欲しいとお願いされまして…。」下を向いていたかと思ったら今度は急に顔を上げ質問してくる美桜にカノンは驚いたものの、美桜の問いに答えた。
するとさっきまで真っ青だった美桜の顔は今度はみるみる真っ赤になっていった。その様子にカノンはピンときた。
「もしかして、美桜さん。雅君の事…。お慕いしているのですか?」
ピンときたものの、確信はないので聞いてみる事にした。
美桜はカノンの問いに今度は真っ赤になりながら下を向き恥ずかしそうに話し出す。
「は、はい…。きっかけは高校の入学式の時で…。自分の教室がわからなくて迷ってる私に声を掛けてくれて『隣の教室だから一緒に行こう』って言ってくれたんです。その途中で階段を登りきる所で私がつまづいて転びそうになった時に…峰岸くんが抱き留めてくれて…あの可愛らしい見た目なのに力強さのギャップとかっこよさに…って何言ってるんでしょう…私ったら…。」美桜はだんだんと恥ずかしくなり顔を手で覆い隠す。
その反応を見たカノンはこちらまで恥ずかしくもなりそれと同時に女の子同士でこういう会話をしたことなかったので嬉しくもあった。
「ふふっ。美桜さん、可愛いですわね。(わたくしの姿なのになんだか不思議な気持ちですわ。今は美桜さんにしか見えませんわ。)これが恋バナというものなんですね。わたくし初めてしましたの。とても楽しいですわね。話してくださりありがとうございます。」
「い、いえ…お恥ずかしいですが…私も聞いて頂いてありがとうございます。」
二人は気恥ずかしさがありながら笑いあった。
「そういえば…。他にもお話ししたいことがありましたの。今わたくしたちはまた夢でお会いできたという事と入れ替わった事についてです。」
カノンは今度は真剣なまなざしで話し始めた。
「美桜さんの自伝を
「私もカノンさんと同じ考察です。あの、私、この夢が覚めてもし元の世界に戻れたらおまじないの本を調べてみようと思います。カノンさんの世界のおまじないの本は読めなかったです。」
「そうですわね。わたくしも美桜さんと同意見ですわ。美桜さんの世界のおまじないの本を読み解くまでは時間が足りなかったので。」
二人はお互いにおまじないの本について話し、今後も調べることを話し合い話がまとまったところで次第に周りの白い世界が揺らぎ始めた。夢から覚めようとしているのだ。
「そろそろお時間のようですわね。今日は多くのお話楽しかったですわ。ありがとうございます。それと遅くなりましたが、美桜さんに謝罪を申し上げなければ…。仮に元の世界に戻れたらわたくしがいろいろやり過ぎてしまいましたので大変かと思います…。美桜さんなら大丈夫とわたくしは信じていますが…。申し訳ありません。」カノンは美桜の姿で過ごしていた日々の事を謝る。
「大丈夫ですよ!なるようになります!私の方こそ、いろいろやってしまい謝るのが遅くなってしまいました…すみません。政策の事、よろしくお願いします。詳しくは日々の日記に書き記しています。
そういえば、私の世界に聖夜の奇跡というのがあるんです。
12月25日はクリスマスと言って世界各地で特別な日なのです。
カノンさんの世界は女神祭なのですよね。きっと今回夢でお会いできたのはその奇跡だと思うのです。今日は本当にありがとうございました。楽しかったです。」
美桜は笑顔で伝え今度は美桜から手を差し伸べる。
「聖夜の奇跡…。なるほど…今回の夢はお互いの世界の不思議な力が働いたのかもしれないですわね。わたくしも詳しくは日記に書いてありますわ。わたくしのほうこそありがとうございます。それではまた夢でお会いできることを祈っています。」
美桜の差し伸べた手をカノンが握る。それを機に二人はそれぞれ現実世界に引き戻されるのだった。
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