閑話2−5

 ウラドside


「面を上げることを許す」


 跪いて下ろしていた顔をあげる、そこに映ったのは階段の上にある黄金で飾り付けられた玉座に座る女性がこちらを射抜くような視線で私たちを見下ろしていた


(どうしてこうなった)


 私たちは拠点にしていた都市国家を出た後、途中で立ち寄った村の村長に頼まれて魔獣化した赤眼の熊を討伐したり、道端で倒れていた老婆を助けて昔冒険者仲間だった人のお墓参りに付き合いお礼に若いころ使っていた武器と防具をもらったり、突然刀で切り掛かってきた浪人の鬼人と決闘してその鬼人とそこそこ大きいオークの村を壊滅させたりしながら順調?にバレンタイン女王国に向かっていたはずだった


(それがなんでこうなったんだろう)


 後もう少しで女王国につくという場所にある宿場町に滞在していた時のこと“強者求む”という張り紙が町の掲示板に張り出されていた


「ウラド、これ見て!見て!」

「はいはい、見てますよ。何だかシンプルな募集だね」

「そんなことはよくて、依頼者のとこ見てよ」


 そう言われて紙の下の方に書いてある依頼者の欄を見ると“バレンタイン女王国騎士団”と書かれていた


「これって新しい兵士を募集する張り紙だよね?」

「そうなんじゃない?」

「なら、応募しようよ!」


 その後「女2人で大丈夫か?」とか言って絡んできたチンピラを撃退したりしたが無事、選考会に申し込んだ

 そんなこんなで選考会が行われる王都まで着いたのはいいものの女2人組というのはなかなかに絡んでくるやつが多い、その理由がこの選考会は何十年かぶりに行われる身分問わずの物らしく国内いや国外からも人が来ており力自慢のバカがいっぱいいるらしい


 ということで選考会の1次は冒険者ランクがC級以上は免除らしく突破、次の2次は受験者同士の模擬戦と特定の魔物の討伐でこれは難なくクリア、3次からは兵舎で寝泊まりしながら兵士に混ざって訓練を受けて合格が出たら偉い人ととの面談だった


「それでは、面接を開始します。私はこの国の師団の総団長をしているレンリよ」

「来訪者のウラドです。よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。いや〜よかったわ〜。今まで私が担当した受験者はよろしくお願いしますすら言わないんだもの〜」


 私の対面に座るレンリさんは女の私から見ても釘付けになりかけるほどのものを胸にお持ちで、多分今までの受験者はソレに釘付けになって挨拶どころではなかったのだろう


「中にはプロポーズしてくる人もいたのよ、まあ好みじゃないから断ってけど」

「は、はあ、お疲れ様です」


 その後も愚痴を聞いていたのだがこの人かなりの多忙のようだ

 昼間は書類仕事をし夕暮れ時から会食か訓練などなど一日みっしりやることがあるようだ


「これって面接なんですよね、質問しなくて大丈夫なんですか?」

「あなたは気に入ったし合格でいいわ、明日の日の出に王城の裏にある大演習場に集合よ」

「そんな適当な」

「いいのよ、私がトップなんだから」


 その後カルミラも無事レンリさんから合格をもらい次の日、演習場には合計100人ほどの人が集まっていた

 ちなみにレンリさんが私たちの上司になるようなので一段高い位置からこちらを見守っている


「さて合格した皆さんおはようございます。今日はこれから謁見の間で女王様より皆さんが所属する師団の任命式が執り行われます。事前に説明されたように謁見時の礼儀を守るように」


 そうレンリさんの横に立っていた副官らしき女性が説明してくれた

 そしてレンリさんを先頭に王城の中を歩いていく、突き当たりにある一際大きな扉の前で止まると


「新師団員入室‼︎」


 部屋の中から大きな声が聞こえてくると大きな扉が地響き起きたのかと思うほどの音で開いていった。部屋の中は真珠のような不思議な輝きをした白い石でできた巨大な部屋だった

 奥には階段がありその上に黄金の玉座がありそこから一直線に真紅の絨毯が伸びていた


「女王陛下のおなーりー!」


 階段の前までつくと階段の横にいる初老の男の人が言うのと同時に跪く


“トコットコッ”


 えっ?

 前にいたレンリさんが階段を登ような音が聞こえる

 下げていた頭を少しだけ上げると視界の上の方にレンリさんが着ていた軍服のズボンがチラッと見える、階段を半分登ったかと言うところで軍服が一瞬でドレスに変わるのが見えた


“ドサッ”


 玉座位に誰かが座った音が聞こえた


「面を上げることを許す」


 と言うことで回想終わり………改めて思い返しても訳がわからない、玉座に座ってこちらを眺めているのはさっきまで私たちの前を歩いていたレンリさんと顔が一緒だし着ているドレスも一瞬だけ見えた軍服から変わったドレスと同じ色だし、カルミラなんて目が点になってるんだもの


「改めて名乗るとしよう、私こそこのバレンタイン女王国の女王にして吸血鬼が第5始祖、レンリネス・ルージュ・バレンタインである」


 マジかー、マジなんだよなー


「どうだ驚いたであろう?うむ、その顔を見る限りサプライズは成功のようじゃな」


 めちゃくちゃいい笑顔でウンウンと頷いているけど私って昨日女王様の愚痴を聞いて慰めていたの、不敬罪とかにならない⁉︎


「それと貴様らじゃが、喜べ!私直属の特務師団に配属だ。うん?なんで女王様が面接をしてたのかって、国のトップが軍のトップで何か悪いか?それに私直属の兵ぐらい自分で選びたいではないか」


 ハッハッハ、と笑っている女王様を見ていると私たちの未来が不安になってくる

 これからどうなっちゃうの〜


 セキロside


 吾輩は猫(獣人)である名前はセキロ、吾輩はいまだ未曾有の危機に陥ったままである


「嫌だー、セキロとバイバイなんてやだ〜」


 このセリフを聞いてくれればお分かりであろうリンリーちゃんが僕と離れるのが嫌で駄々をこね始めたのだ

 こういう時こそ戦闘以外ほとんど役に立たないローゼス団長にどうにかしてもらいたいところだがとうの団長は自分より僕の方がリンリーちゃんに懐かれているという事実に耐えられず部屋の隅で縮こまってしまっている


「私、姉なのに、ずっと、遊んであげてたのに、グスン」


 ずっとこんな感じなのである、うむ、使えない


「大丈夫だよリンリーちゃん、この祭りが終わるまでは僕たちもこの街にいるからね、会うこともあるよ」

「でも、昨日までみたいに一緒にいられないじゃん‼︎」


 う〜ん、これでも離れてくれないか〜

 リンリーちゃんの両親、つまりキャスパーグ夫妻はこの町アルカディア法国の最西端の町ハクシャで行われる獣人の祭りの運営本部に行っているため今ここにはいない


「そういえばバリツさん、この町で行われる祭りって何の祭りなんですか?」

「そういえばセキロ君は来訪者だから知らないのね」

「それなら私が教えてあげる」


 ズボンにひっついていたリンリーちゃんが顔をあげて見つめてくる


「この祭りはね、えーっとね、私たち獣人が昔いた場所の王様の獣王様が死んじゃった日に昔住んでいた場所に向かって海に灯りを流すんだ」


 つまり戦火を逃れてこの大陸に来た獣人族が元いた場所で死んでしまった自分たちの王様へ追悼の意を込めて元いた場所に一番近いこの街から灯籠を海に流すということね


「空気が澄んだ日の朝なんかは大陸は見えなくてもその前にある島々なんかは見えるわよ」


 バリツさんが言う、ただその目はここではないどこか遠くを見ているようであった


「今まで聞いてはいなかったんですけど、獣人は一体何故この大陸に逃げてきたんですか?」

「他の獣人の前ではその質問はしちゃダメ、。特にキャスパーグ夫妻みたいな各部族の長の前ではね。それで、どうしてこの大陸に来たのかの話わよね、まず私たち獣人族は元々この大陸の西にある大陸に住んでいたのは知ってる?」

「まあ、話から何となく」

「そこには私たちみたいな徒人の体に獣の部位がある獣人族と獣の体に徒人のような知恵を持った人獣族の二つの種族が争っていたんだけれど、人獣族に突然とてつもない強さの猿の人獣が出てきたことで一気に劣勢に陥りついには他の大陸に逃げざるしかなくなってしまって今に至るということだね」


 この話は獣人の中ではタブーらしくかなり入念に「獣人がいる場では話しちゃだめよ」と言われた

 結局リンリーちゃんにこの祭り中ずっと一緒にいることを約束させられてしまった


「あぁ、セキロ君ここにいてくれて助かったよ。今回の獣王際では各部族の来訪者から代表を出してその人に部族の代表と一緒に大灯籠に火を灯す儀式に参加してもらうことになったから、セキロくん頼めるかい?」

「へ?」


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 初めましての方は初めまして、前から読んでくださっている方は続けて読んでくださりありがとうございます。作者のH2ゾンビと申します。

 ウラドちゃんとセキロきゅんのパートでした

 時系列的にはメルトたちがアインゼを進行しているのと同日の出来事です

 次回はアインゼ進行時の掲示板をお届けいたいと思います

 テストがあることを失念していたので更新は遅くなりそうです

 それでは掲示板2−3でまたお会いしましょう

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