2-24

 デカラビアが作り出した機械の鳥がバンバン敵を撃って倒していく


“どうですか?私の働きは”

「いや〜、想像以上だね」


「おい、このゲームファンタジーのはずだろ、銃あるなんて聞いてねえぞ」

「もう嫌だ〜」


 さっきまで押されかけていた戦局は一気にこっちに傾いてきた


「その鳥って眷属かなんかなの?」

“私の体の一部ですよ。私は金属を操れるので私の体を変形させて作り出した機械で攻撃するのです。形が鳥なのはただの趣味ですが”


 ただの趣味なんだ


「なんで鳥なの?」

“私が作り出せば機械を簡単に空を飛ばすことができるのですが、鳥は素晴らしいあの体積で、あの筋肉量で大海原を飛んで超えていくのですから”


 あ〜これ長くなるやつだ


「端的に、具体的に言うと10文字ぐらいで」

“鳥 飛ぶ すごい 真似る”


 わーお!端的!!

 私たちがそんな話をしている間にもデカラビアは会話に使った文字を機械の鳥に変形させ敵を殲滅している


“それでは召喚者よ。私の有用性は理解したであろう、では、契約内容を決めようではないか!”

「へ?」

“む?魔神を召喚したのなら契約をするのは常識ではないのか?”


 なんかメタいこと言ってる気がするけど、確かに魔神を無料でこき使えるわけないよね

 それにしてもこの魔神セルフマーケティング上手いね。まず無料で実用性をみせ、自分魔神という存在にかけられているイメージどおりの行動で売り込んでくる


「それで、そっちは何を求めてくるの?魂とか言っても無理よ、見ての通り私の体は魂そのものだからね」

“確かに魂を求める同胞もいますが私は魂をもらっても活用する方法が無いのでいりませぬ。それよりも私を呼ぶ際に用いたあの興味深い鉱石を欲する時に欲する量もらえれば十分です”

「あら、魔神というには欲がないのね」

“はっはっは、自らより強い存在が眷属にいる召喚者に喧嘩など売るほどの馬鹿は魔神同胞の中にもいませんよ”


 超越種スーちゃんが私の眷属にいる事は知っているんだね


「それじゃあ、契約成立よ」

“契約はここに成立した、それでは初仕事を完了しましょうか”

「私たちの拠点まで待っていれば天魔鋼あれよりも特殊な金属があるけど今更それも欲しいって言ってもあげないわよ」

“なんと⁉︎そのような物があることは先に言って欲しかったですぞ”


 目の前に浮かんでる文字を模った金属から驚いたような雰囲気が伝わってくる

 不思議〜


「契約はもう締結しているのよ、今から変えるは無しね」

“くっ、今がベストタイミングだと思いましたが見誤りましたね”


「おい、あそこ見ろ!鳥が飛んでくる方向!なんかいるぞ」

「う、うそだ!」

「おい、どうした!」


 鳥に撃たれないように瓦礫の裏で立て籠っていた来訪者の生き残りが私のことを見つけたようだ


「ま、魔術王が、い、生きてる」

「はぁ?死んだってさっき強そうなおっさんが言ってただろ」

「でも、鑑定したら称号欄に魔術王って」

「ほ、本当だ。魔術王が生きてやがった」


 ありゃ〜見つかっちゃった。って、何も隠密系のスキルを発動させてないからそりゃあ見つかるか


『王よ、この金属の鳥は味方でよろしいのですか?』

『そうだよ、強いアンデット呼ぼうとしたら魔神を呼んじゃった』

『む、一応私はアンデットの括りではあるぞ』


 なんだよこの魔神、普通に私たちの念話に入ってきた


『おっと、私としたことがレディを前にして自己紹介を忘れておいりました。私はこのたび召喚者メルトにより召喚された魔神、デカラビアと申す者。以後お見知り置きを』


 念話で聞こえてくる声は老人の男性のようにもちょっとハスキーな少女のようにも聞こえて不思議だった


『詳しいことは後でみっちり聞きますよ』

『いつものことか。それとマスター、何だあの体たらくはもしオレの鎧を貫通された時の対応法訓練したはずだろう?訓練メニュー増やすからな』

『マザー、イツニナレバ兄妹ヲ作ッテクダサルノデスカ?』


 フォスとアンバーとレイが少し怒ったように言ってきた


“召喚者よ、そなたはこの者たちの主なのであろう?この扱いについて何か思わぬのか?”


 それは私も思うよ。一応私君たちの王様だよ?なのに平気で説教したり、欲しい素材があったら私に作らせるし、訓練ハードすぎるし、何より私よりカリスマとか王様っぽい人が多すぎる!!


「あそこに倒すべきボスが居るのにさっき湧いたこのクソ鳥どものせいで全然進めない」

「幸い蟻たちはトップ勢とNPCたちが抑えてくれてるけどこのままじゃいつか挟み撃ちになっちゃう」


 そうだった、今は、来訪者に見つかったところだったね


『適当に迎撃していい?』

『メルト様の魔術は他よりも圧倒的に強いので手加減してください、私たちにも被害が出るかもしれません』


 信用ないな〜 ぐすん(´•̥ ω •̥` )

 水氷複合下位魔術“過冷却水槍オーバーコールドアクアランス


「何だ、ただの“アクアランス”じゃねえか。そんぐらい防御できるわ」


 無謀にも大盾を構えた来訪者が1人前に出て受け止めようとしたが盾に当たった瞬間、凍りつきそのまま動けなくなった


 樹毒複合下級魔術“毒種弾ヴェノムシードバレッド


「何だよこれ、当たっても全然ダメージねえぞ」


“発芽せよ”


「ゔ、うげ」

「何だこれ、猛毒と寄生状態⁉︎」


 今度は見てのとおり有毒植物の種を相手に植え付ける魔術です。貫通しないように威力を抑えるのに苦労しました


 陽光複合下位魔術“サンライトレイ”


「えっ?」

「光ったと思ったら隣のやつが死んでるんだが」


 この魔術はただの“ソルレイ”と違うところは太陽光を凝縮して放つだけだったのを光魔術の光も組み合わせることである程度操作ができるようになりました。ただ光速のものを操作なんてできなかったけどね

 つまり、太陽光を集めるまでの溜めが少し短くなっただけです

 そんな感じでオリジナル魔術の試し撃ちついでに数を減らしていると


“ゴッ”


 この音は


「また会ったな王様」


 やはり彼でしたか


「先は見事な一撃であったぞ」

「俺の本気の一撃を受けて感想がその程度か〜、辛いね〜。で、王様や、俺は確かにあんたを切った。そしてあの鎧の中から強大な存在が消えたのを確かに感じた、だがあんたは生きている、どういうタネだ?」

「それを言うと思うか?」


 私を一回殺した不意打ちもさっき私たちの目の前に現れた時も同じ音と揺れが起きたから使ったスキルか神秘遺物アーティファクトは同じと考えて良さそうね

 なら、使ったのはきっと残影ざんえい深靴ブーツだろうね


「そりゃそうだ、だが、ここは王様の度量の見せどころじゃないか?」

「ふむ、そうだな。せっかくだ教えてやろう、なに簡単なことだ我が本体が来ているわけではないと言うだけだ」


 うん、嘘は言ってないよ。私の本体現実の体は来ていないからね。実際はただ死に戻っただけだけど


「そりゃあ殺しても意味ないな」

「それでこの時間稼ぎをいつまで続けるつもりだ?」


 そう、アレンシルが私の目の前に現れてから敵が少しづつ後退し始めたのだ


「ありゃ〜、やっぱりばれちまってたか。あんたの言うとおり俺はこいつらが逃げるまでせめてあんたとそこに浮かんでるバケモンを留めておかなきゃなんねえんだ」

「我を留めるだけでいいのか、我が臣下は貴様ぐらいしか相手にできないだろう?」

「あの鎧と骨騎士はシンセンとアンサーっつう坊主が頑張ってくれているはずだぜ」


 シンセンの盾でも流石にアンバーの剣戟とフォスの魔術を防御し続けれると思えないけどな〜、それにアンサーくんは速さが持ちあじのはずだけどアンバーより早いってことは考えずらいしどうやって抑える気なんだろう


「しょうがない」

「お、引いてくれる気になってクレたかい?」

「笑止、敵が逃げているのを易々見逃す我だと思うか」


 禁忌魔術“無慈悲な死神の祝福ブレッシング オブ デス


 死霊魔術と錬金術、精神魔術を極めた後、魂の理解度とかいうのが規定値に達成した時に覚えた魔術?がこれだ

 発動条件として自分が死んでから半刻つまり30分以内に1平方メートルあたりでの1日で死亡した生命が1000以上の場所でのみ発動できるというかなり鬼畜な発動条件がある

 その分効果は絶大で、直径10キロ内にいる発動者に心の底から恐れや絶望、などの感情を抱いた者を即死させる。もうぶっ壊れとしか言うほかない


 発動すると、あたり一体が一気に氷点下まで下がったと感じるほどの寒気が起こりさっきまで喚いでいた来訪者も必死に戦っていた兵士も蹂躙の限りを尽くしていた蟻たちもこの場にいるすべての生物が金縛りにあったかのように動きを止めた

 一瞬で静寂が包んだと思えば、遠くから人が倒れる“バタリ”と言う音が少しづつ聞こえてくる。その音は時間が経つにつれて増え、どんどん私に近づいていく


 アレンシルをはさんだ後ろで1人の来訪者が倒れるとその音は止まった


「は、はは、ははは。何だこれは」


 さっきまで余裕を残していたアレンシルの顔は今は見間違えるほど白くなり乾いた笑いを口からこぼしていた


「どうした我を留めるのであろう?いや、貴様が時間を稼ぐ理由はもう無くなったか」


 そう私が言うとアレンシルはうなだれたと思うと勢いよく顔を上げた


「これで分かった。あんたは俺たちの話は理解はしても対話する気はないんだな」

「そうだな、我らは強者魔物、貴様らは弱者、そこは決して変わらない」

「それだけ聞けたら十分だ」


 そう言うと背中に背負っていた私を切った白銀の大剣を構えた


「せっかく、拾った命このまま捨てるか」

「軍の同僚にこの街にいた親友、せめてそいつらの無念に報いてから死ぬ」


 そこまで言うのならこちらも応えなきゃ無礼ってものだね


「そこまで、トライスター殿、あなたはここで失うには惜しすぎる戦力です。ここは一旦退かせてもらいます」


 突然全身黒い服を着た男が現れた

 あれは、空間魔術だね、しかも高位の


「それでは、また会いましょう。魔術王」


 そう言って男はアレンシルと一緒に転移していった


“召喚者よ、あれを見逃してよろしかったのですか?”

「何かあればすぐに転移魔術を発動できるようにストックしていたからね。流石の私でも長距離転移の魔術を発動するには時間がかかるよ。それに、アレンシルのことは人としてかなり好きな部類だ。それこそ今失うには惜しい人物だよ」


『次の指示ね、最優先事項は生き残った者の殲滅と神秘遺物アーティファクトの回収。次点で消火と食料の確保、アンデッドに使えそうな状態のいい死体は像があった広場に集めておいて。それじゃ、行動開始!』

『『『御意』』』


 なんか締まらなかったけどこれでアインゼ侵略完了!!


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 初めましての方は初めまして、前から読んでくださっている方は続けて読んでくださりありがとうございます。

 作者のH2ゾンビと申します。

 アインゼ侵略編これにて終わりです。やっとここまでこれました

 今までもかなり理不尽なことをしまくっていたメルトちゃんですが今回は今までの非じゃないほどの理不尽魔術を発動しましたね

 最初から締めは広範囲即死攻撃にしようと考えていたのでちゃんと書けて嬉しいです

 アンサーくん視点とウラドちゃんセキロきゅん視点の閑話と掲示板回を挟んだら新章開幕です

 それではでまた閑話2−4で会いましょう

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