第25話「明日に生きる侍」

月丸は鬼童丸の持つ『妖刀·鬼牙』を破壊した。

そのお陰で小十郎の鬼の呪いは解け九尾を倒した。

だが、鬼童丸の怒りを買った月丸は鬼童丸の執拗な攻撃に遭い遂に倒れた。


変わり果てた無惨な姿で倒れる月丸。

その側には雪女の攻撃により凍傷になりかけ倒れている光姫も居た。

この兄妹の運命や如何に?


「月丸……トドメだ!」

鬼童丸が月丸にトドメを刺そうと迫り棍棒を振り上げる。

「その頭カチ割ってやるぜ!!」

鬼童丸が棍棒を振り下ろそうとしたその時!

無数の手裏剣やクナイが鬼童丸に向かって飛んで来た。


「チッ……!橘の忍か……」

鬼童丸の言う通り橘流忍者が里から大勢押し寄せ月丸と光姫の救援に駆け付けた。

「鬼童丸!貴様の野望もそこまでだ!」

来人達の父、信弘が橘流忍者達を引き連れてやって来たのだ。


「フンッ、面白れぇ……手応えのねぇ奴の相手に飽きてた所だ」

「鬼童丸……貴様……皆、掛かれー!!」

信弘の指示で忍者達が一斉に鬼童丸を攻撃。

そして、その間に信弘は来人と美桜に駆け寄る。

「来人……美桜……遅くなって済まなかったな……頼む……目を開けてくれ……」

信弘は涙ながらにそう訴える。


鬼童丸に次々と忍者達はやられて行く。

「なんだ?コイツらも雑魚か……つまらんなぁ……」

「くっ……鬼童丸……よくも息子達を……」

信弘が鬼童丸の前に出てくる。


「ほぉ……月丸達の親父か……少しは手応えがありそうだな……」

『火遁の術』

信弘は鬼童丸に向かって火炎を吹き掛ける。

「そんなもん……俺に効くか!!」

鬼童丸は炎の中から出てくる。

そして、棍棒で信弘に殴り掛かる。

だが、信弘は『変わり身の術』でそれをかわす。

「ほぉ……やるな……」


その頃、ようやく小十郎達が現場に到着。


「うわっ……ひど……」

「これが妖怪達の仕業だと言うのか……」

「そうでござる……ゆきぴょん殿、お父上殿、お母上殿、拙者は鬼童丸との決着を着けに行くでござる。そなた達はなるべく遠くに逃げるでござるよ!」

そう言い残し小十郎は走って行った。

「ああっ、ちょっと小十郎……」

そして雪菜達家族に妖怪が迫る。

「うわぁぁぁぁっ!?」

「雪菜、逃げるわよ!」

恵子が雪菜の手を引っ張り車に逃げ込む。

「二人共、急いで車出すよ!」

敏也が急いで車にのエンジンを掛ける。

だが、既に周りには多くの妖怪達が居た。


小十郎は妖怪達を次々に斬り倒し鬼童丸の元へ急ぐ。

「鬼童丸ー!!」


その叫び声は鬼童丸にも届いた。

「星影か……とうとう来たか……」

「何っ?」


小十郎が鬼童丸の元へ到着。

「鬼童丸……貴様と決着を着ける!」

「アレが……星影……現代に蘇った侍……」

「フンッ……おい橘の親父、もうテメェは用済みだ。とっとと消え失せろ!」

「くっ……」

「橘?もしや、来人殿と美桜殿のお父上でござるか?」

「ああ……あなたが星影……」

「そうでござる。来人殿と美桜殿は?」


信弘は悲しそうな表情で倒れている来人と美桜の方を見る。

「なっ!?来人殿……美桜殿……鬼童丸……貴様の仕業か……?」

「ああ、月丸の方はな。光姫の方は雪女がやった様だ」


「鬼童丸……貴様はどれ程の人々を傷付ければ気が済むんじゃ?どれ程の人々を苦しめれば気が済むんじゃ!!」

「フンッ……それが俺の欲望なら永遠に満たされる事は無いだろうな……人間なんて所詮、俺達妖怪に比べたらちんけな存在……俺達妖怪の餌食になるしかねぇんだよ……江戸の時代や今だけじゃねぇ、星影……お前が生まれるよりもずっと遥か昔からな……」


「くっ……確かにお前達妖怪に比べたら人間の命は儚く短い……だが、だからと言って貴様らが奪って良い理由にはならん!!」

小十郎は『星光丸』を構える。

「星影-大变化」

小十郎は星影-大将軍に変身。


「星影……貴様もただの人間と変わらぬ事を思い知らせてやる!!」

鬼童丸が棍棒で星影に殴り掛かる。

星影はそれをかわし鬼童丸を斬り付ける。

両者の激しい戦いは誰も付け入る隙が無い。


「な……なんて戦いだ……」

信弘は思わずぽかんとする。

「あっ、いかんいかん!今の内に来人と美桜を……」

信弘は来人と美桜の元へ。


「星影!!貴様は確かに強い……だが!所詮俺様の敵ではない!!」

「鬼童丸!!昔の様にはいかんぞ!!」


「来人、来人!しっかりしろ!」

信弘が来人に声を掛ける。

「うっ……と……父さん?」

「おお!気が付いたか来人……良かった……」

「ん?……アイツが戦っているのか……」

「ああ」

「だったら俺も……」

「来人、無理をしてはいかん。ここは星影に任せるんだ」

「しかし……」

「俺はこれから美桜を病院に連れて行く。お前は2人の決着を見届けるんだ」

「そうだ美桜……そうだな。父さん、美桜を頼む」

「ああ、安心しろ絶対に死なせん」

信弘は美桜を担いで病院に向う。


「星影……勝てー!!」

来人は力の限り声援を送る。


「来人殿……拙者は負けんでござる!!」

星影は『星光丸』で鬼童丸を突き刺す。

だが、その攻撃は鬼童丸に受け止められてしまう。

「くっ……」

「フンッ……貰ったー!!」

鬼童丸が棍棒を掲げ力いっぱい振り下ろす。

だが星影はそれを『獄炎丸』で受け止める。

「何っ!?その刀は……」

「獄炎丸……地獄の炎の力が宿った剣じゃ!」

星影は鬼童丸を振り払う。


「見せてやる……二刀流の新たな力を!」

星影は大将軍の状態で更に地獄の炎の鎧を身に纏った二刀流形態の『獄炎大将軍』となった。


その頃、妖怪達に囲まれて動けずにいた雪菜達家族は……。

「あ〜……もうおしまいだ〜」

だが、妖怪達は次々に消滅して行った。

「あ?何だ?」

橘の忍者達が妖怪を倒してくれた。

「え?忍者!?」

雪菜は車を降りる。

「あの……助けてくれてありがとうございます。橘の忍者の人達ですよね?」

「ああ。この辺りは危険だ。早く避難を……」

「あの!星影が戦ってる所に連れて行って貰えませんか?」

「え?いや、そんな事出来る訳……」

「お願いします!」

雪菜は強くお願いした。

「ん〜……首領に何て言われるか……」

「あの!橘美桜さんやそのお兄さんの来人さんと知り合いなんです!美桜ちゃんは高校のクラスメートだし……お願いします!」

「えぇ!?美桜様の友達か……なら首領も許可するかな……分かった、連れて行ってあげるよ」

「ちょっと雪菜、どこに行く気?」

「そうだぞ、危ないぞ?」

「分かってる……でも小十郎の戦いを見届けたい!」

「雪菜……分かったよ……行って来なさい」

「ありがとうパパ!じゃあお願いします!」


「了解!」

雪菜は橘忍者に連れられ星影の元へ向う。


その頃、星影は……。


「何だと!?地獄の力と星影最強の力を同時に引き出すだと!?」

「ああ、300年前にはこんな事出来なかったが……今の拙者には出来る!」


「面白れぇ……そんなまやかし、俺の力で叩き潰してやる!!」

鬼童丸は再び棍棒で殴り掛かる。

「鬼童丸ー!!この一撃で決着を着けるでござるー!!」

右手の『星光丸』は輝き出し左手の『獄炎丸』は炎を纏う。

『二刀流奥義·獄炎流星斬』


その瞬間、雪菜が到着。

「小十郎ー!!」

雪菜は声の限り叫んだ。


「星影死ねー!!」

星影の2本の刀は鬼童丸を斬り裂いた。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

「邪気……退散!」

鬼童丸は倒れる。


「ふぅー……勝ったでござる……」

「小十郎ー!!」

雪菜が星影に駆け寄ってくる。

「ゆきぴょん殿!来てくれたでござるか!」

「やったね!」

「ああ、遂に鬼童丸を倒したでござる!」


だが……。


「ぐっ……星影……いい気になるなよ……」

鬼童丸は起き上がって来た。

「何っ!?」

星影は構える。

「今は俺の負けだ……だが、我ら妖怪は死なぬ……いつか必ず復活して人間共に報復してやるぞ……」

そう言って鬼童丸は消滅した。


そして鬼童丸が消えた事で街を襲っていた多くの妖怪達も消滅。

暗雲も消え、青空が戻った。

百鬼夜行が終わったのだ。


「やったな星影」

「来人殿!大丈夫でござるか?」

「ああ、何とかな……」

だが来人もフラつく。

「ああっ!……来人殿も病院へ行った方が良いでござるな」


来人はそのまま病院へ向かった。


百鬼夜行が終わり人々はいつもの日常を取り戻しつつあった。

3ヶ月が経った頃……。


来人も美桜も一命を取り留め現在はリハビリに励んでいる。

この日、雪菜が2人のお見舞いに来ていた。

「でも美桜ぴょん無事で良かった〜」

「ごめんね、心配かけちゃって」

「本当だぞ、美桜は全身氷漬けでさすがにダメかと思ったぞ」

「そうね……でも兄さんや父さん……そして多くの人達のお陰で助かったわ」

「所で雪菜ちゃん、アイツはどうしてる?」

「ああ、小十郎ね……」


小十郎は鬼童丸との戦いの後、バイトを辞め日本全国を旅していた。


「あ〜!!やっとここまで来たでござるな……」

今、小十郎が居るのは鹿児島県。

「ふむふむ、やはりこの、ぐーぐるまっぷと言うのは便利じゃな。さて、じゃあ次はぐるめの検索じゃ」


現代を満喫していた。


「まぁ、小十郎も折角現代に蘇った訳だし、色々楽しみたいだろうしね……」

「なるほどな。所で美桜から聞いたが友達とは仲直り出来たのか?」

「うん、それもバッチリ!」

雪菜は戦いの後、りりぴょんともすっかり仲直りして平穏な日々を過ごしていた。


「所で、雪菜ちゃんは夏休みの宿題は、大丈夫なのか?今年は受験や就活にも響くからちゃんとしとかないと」

「うっ……来人さん嫌な事思い出させないでよ!!」

「えぇっ!?」

「フッフッ……兄さん余計なお世話だよ」

「なっ!?何でそうなる!?」


妖怪達との戦いは終わった。

しかし、彼らの人生はこれからどんな事が待ち受けているのか。

もしかしたら妖怪よりも恐ろしい事が待っているかも知れない。

だが、雪菜達なら大丈夫でしょう。

明日を生きる大切さを知ったのですから。


ー完ー

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侍ヒーロー星影 山ピー @TAKA4414

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