第23話「悲劇を繰り返さない為に……」
星影は酒呑童子を倒したが江戸の火事は三日三晩続いた。
4日目の朝、ようやく消火が終わり小十郎は江戸の町を彷徨っていた。
「お千代……お師匠様……一体何処に居るのだ……」
町は火消し達が駆け回り火事の後始末に追われていた。
更に幕府の武士達も江戸の町の被害状況の確認に来ていた。
「死体が見つかったぞ!!誰か手を貸してくれ!!」
1人の男が声を挙げた。
どうやら火消しの1人の様だ。
小十郎はフラフラと声のした方に歩いて行った。
火消し達が数人集まり作業をしている。
小十郎はその光景を目にして我が目を疑った。
完全に焼け焦げその建物は倒壊していたが、その建物に小十郎は見覚えがあった。
それはとある民家……。
小十郎は嫌な予感がした。
そして、その家から亡くなった人の遺体が運び出される。
その姿を見た小十郎はショックのあまり空いた口が塞がらない。
小十郎は驚愕し身震いしていた。
何故ならその遺体は小十郎の良く知る人物だったからだ。
「お千代……お千代ー!!」
小十郎は駆け寄る。
その遺体の正体は紛れもなく小十郎が愛したお千代、その人だった。
小十郎は必死に呼び掛けるがお千代は既に亡くなっている。
当然呼び掛けに答えるはずもない。
変わり果てたお千代の姿に小十郎はその場で泣き崩れる。
だが、小十郎に泣いている暇など無かった。
突然空が暗雲に覆われ妖怪の大軍勢が襲い掛かって来たのだ。
「これは……百鬼夜行か!」
小十郎は遂に百鬼夜行が始まったのだと気付き立ち上がる。
小十郎は妖怪達の方に走り出す。
数多の妖怪達が人々を襲い始める。
「妖怪共め……どれだけ……どれだけ我らを苦しめれば気が済む……」
小十郎は星影に変身し妖怪達との戦いを始める。
だが、妖怪の数は余りにも多く星影は大苦戦。
橘の忍達も現れ妖怪達と戦って行く。
橘忍者の協力を得て星影は鬼童丸の元へ先に向うが……。
鬼童丸は盃に酒を汲み余裕の表情で星影を待っていた。
その足元には竜玄の亡骸が転がっていた。
「フンッ……星影を通してやれ。奴に師匠の無惨な姿を拝ませてやろう」
その一言で妖怪達は星影にわざと道を開ける。
「ん?鬼童丸、貴様拙者を誘っておるのか?」
「ああ、早くコイツを見せてやりたくてな!」
鬼童丸は竜玄の亡骸を星影の前に蹴り飛ばす。
「なっ!?お師匠様!?」
「そのジジイ中々頑張ってたぜ?弟子を守る為に1人で俺に戦いを挑み……儚く散って行った……くぅ〜……泣かせるねぇ……美しき師弟愛に感動したぜ!お陰で酒が美味い美味い!」
「鬼童丸……貴様……許さん……」
星影は鬼童丸に斬り掛かる。
この戦いで小十郎は鬼童丸達を封印した。
自らの命と共に……。
そして現在ーー
「そんな悲しい事があったんだ……」
「ああ、だが今回はその様な事はさせん……必ず拙者が妖怪達を倒して見せる!」
そう意気込む小十郎。
「しかし、お前もその体じゃ……」
「大丈夫でござる……それに鬼童丸さえ倒せば鬼の呪いは消える」
そう言って小十郎は立ち上がる。
「それに早く美桜殿の所に戻らねばなるまい?」
「ああ……」
「なら早速行くでござる!」
「ちょっと待って小十郎!」
雪菜が呼び止めた。
「何でござる?」
「何でござる?じゃないし!あんたさっきまで苦しんでたじゃない!なのになんでそんな平気な顔出来る訳!?意味分かんないんだけど!!」
「い、いや、拙者の方が意味分からんでござる……ゆきぴょん殿、何をそんなに怒ってるでござる?」
「だって小十郎そんな体で戦おうとしてるでしょ。死ぬかも知れないのに……こっちがどんだけ心配してると思ってんのよ……」
「ゆきぴょん殿……すまぬ……しかし、行かねば。それが拙者の使命……いや宿命でござる」
「だったらウチも行く。今まで散々面倒見てやったんだから最後まで見届けさせなさいよ!」
「ゆきぴょん殿……」
「あのな雪菜ちゃん。これから俺達は妖怪達との最後の戦いに行くんだ。小十郎は雪菜ちゃんをそんな危険な所に連れて行きたく無いんだよ」
「そんな事分かってるわよ……でもウチは小十郎と一緒に居るって決めたの!もう小十郎にお千代さんの時みたいな悲しい思いをして欲しくないから……」
「ゆきぴょん殿……礼を言うでござる。拙者、正直死ぬ覚悟で挑むつもりで居った。しかし、ゆきぴょん殿が居てくれるなら絶対に帰って来る理由が出来たでござる」
「小十郎……」
「雪菜、本当に行く気か?」
敏也が心配そうな表情で尋ねる。
「うん、行くよ」
「雪菜、遊びに行くんじゃ無いんだぞ!?」
「分かってるよ。でも行くって決めたの!」
「御父上殿、御母上殿、ゆきぴょん殿は拙者が必ず守るでござる。どうかお許し頂きたい」
小十郎は敏也と恵子に土下座して頼む。
「小十郎君……分かった。君の事を信じよう。雪菜を頼んだよ」
「感謝いたす!!」
「よし、時間が無い行くぞ」
小十郎、雪菜、来人が東京に向かって出発。
その頃、東京で1人妖怪達を封じ込める光姫には限界が近付いていた。
「くっ……もうダメ……兄さん……早く……来て……」
そして、そんな光姫に近付く影……。
「見ぃつけた……」
光姫が振り向くとそこには雪女が立っていた。
「くっ……雪女……」
身動きが取れない光姫は最大のピンチを迎えていた。
「急ぐぞ。しっかり捕まってろ!」
「分かったでござる!」
小十郎と雪菜は来人が運転する車に乗り込み東京へ向かっていた。
「美桜ぴょん……無事で居て……」
「ゆきぴょん殿、大丈夫でござる。美桜殿は橘の忍……そう簡単にはやられないでござるよ」
「うん……」
しかし、東京で身動きの取れない光姫に雪女は容赦なく攻撃を仕掛けていた……。
「ぐっ……」
「フッフッフッフッ……そうやっていつまでも結界を張ってると良いわ……その間に私が全身凍り付かせてあげるから……」
雪女の攻撃で光姫の足元は既に凍らされて居た。
「このまま動けないあなたをいたぶるのもいいけど……折角だから美しい氷の彫刻にしてあげるわ……」
「くっ……こんな……所で……」
そして、雪女は光姫に冷たい氷の息を吹き掛けた。
「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
妖怪達は結界に攻撃を続けていた。
「よし、大分弱まって来たな。もう一踏ん張りだ!結界をぶち壊せー!!」
鬼童丸はさらなる攻撃を命令する。
そして遂に結界が破られた!
「よし!俺達の勝ちだ!!」
そして、光姫は……。
雪女によって全身を氷付けにされていた。
「フッフッフッフッ……美しい氷の彫刻の出来上がりね……」
妖怪達が一斉に外へ飛び出して行く。
「よし、一気に攻め込みましょう」
「待て九尾」
鬼童丸が九尾を呼び止めた。
「何です?」
「お前に頼みがある……」
来人は車を走らせ続ける。
だが、東京までもう少し掛かる……。
来人は急ブレーキを掛ける。
「うわっ!?何でござる!?」
「ちょっと来人さん!」
「すまん……だが……」
見ると目の前には九尾が立って居た。
「九尾……」
小十郎、雪菜、来人は車を降りる。
「やぁ、待って居たよ」
「九尾がここに居るって事は……結界が破られたのか!?」
「その通り……」
「くっ……美桜……」
来人は拳を強く握る。
「来人殿、ここは拙者が。お主は先に美桜殿の所へ」
「小十郎!……すまん、頼む」
来人は車に戻る。
「雪菜ちゃん!」
「来人さん、私は小十郎と一緒に後から行く。早く美桜ぴょんの所へ行ってあげて」
「雪菜ちゃん……分かった。小十郎を頼むぞ」
「さぁ、九尾……拙者が相手だ……」
「小十郎……いいね、決着を付けよう……」
小十郎は『星影丸』を取り出す。
「星影-变化!」
小十郎は星影に変身し、構える。
「星影……参る!」
続く……。
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