第22話「300年前の悲劇」

小十郎は苦しみ続けていた。


「小十郎君こんなに苦しんでるし、病院に連れて行った方が良いんじゃないか?」

敏也はそう提案する。

「そうね……近くの病院の場所調べて見るわ」

恵子はスマホで病院を検索する。

ダメ……小十郎の体は病院じゃ治せない……。

雪菜はそう考えていた。

そして、美桜ぴょん早く来て……。

心の中でそう願っていた。


その頃、月丸と光姫は妖怪達との戦いを続けていた。

「兄さん、早くしないと小十郎さんが……」

「くっ……分かってる……だがこの数じゃ……」

「!そうだ!兄さん、いい考えがある!」

「何だ?」

「来て!」

そう言って光姫は走り出して行った。

「おい、ちょっと待てよ!」

月丸も光姫を追い掛けて走り出す。


光姫と月丸はビルの屋上に居た。

「おい、美桜こんな所で何する気だ?」

「封魔結界の術よ!」

「封魔結界の術!?いや、あれは俺達にはまだ無理だろう……下手をすれば命をも落としかねないぞ……」

「でも、やり方は知ってるよね?今それをやらないでどうするの?小十郎さん達の所に行くにはそれしか……」

「でもな……」

「兄さん、無茶を言ってるのは分かってる……でも、世界も小十郎さんも救う為にはこれしかないよ!」

「美桜……」

「私が人柱になるから兄さんが術を掛けて!」

「そんなこと……」

「お願い……兄さんの事信じてるから兄さんも私を信じて」

「くっ……分かったよ……だが絶対に死ぬな。やばくなったら逃げろよ?」

「うん……」

月丸と光姫は少し離れる。

「行くぞ……」

「うん、いつでもいいわ」

月丸は手で印を組む。

『封魔結界の術』

月丸は術を発動した。

封魔結界の術はニ人一組で行われ術を掛ける者と人柱となる者で別れる。

術を掛ける者は人柱となる者の生命エネルギーを引き出し妖怪達を封じ込める結界を作り出す。

人柱となった者は術を発動してる間動く事が出来ずその結界に生命エネルギーを供給し続けなければならない。

月丸の術で光姫の生命エネルギーを引き出し結界を作る。

その結界から妖怪達は出る事が出来ない為、これで時間稼ぎは出来る。


「くっ……兄さん行って!」

「美桜……死ぬなよ!」

月丸はそのまま小十郎の元へ向う。


「フンッ……封魔結界の術か……厄介な術だが、あの小娘が何処まで耐えられるか見ものだな……」

鬼童丸はまだまだ余裕の表情だった。


「妖怪共、邪魔な結界をぶち壊せ!!」

鬼童丸は妖怪達に結界を破壊させようとする。

光姫の生命エネルギーが何処まで持ち結界を保てるかが運命の分かれ目だ。


月丸は一気に静岡を目指す。

「美桜……すまない……この術だけは使いたくなかった……俺がもっと強ければ……」


その頃、小十郎は少し楽になり苦しみから解放されていた。

「良かった。落ち着いたみたい……」

「小十郎君は一体どうなってるんだ?」

「う〜ん……なんて説明したらいいのか……」

雪菜は小十郎の事をどう説明するべきか悩んでいた。


「拙者が話そう」

そう言って小十郎はゆっくりと起き上がる。

「小十郎!?」

「大丈夫なのかい?」

「ああ……すまぬがゆきぴょん殿、水を一杯くれぬか?」

「あっ、うん……」

雪菜は冷蔵庫で冷やしていた水を取りに行く。

そこへ部屋を出ていた恵子が戻って来た。

「ねぇ、この近くだと大きな病院は無いけど、少し街の方に出ればいい病院があるって聞いたわ……って小十郎君大丈夫なの?」

「御母上殿……少し落ち着いたでござる……」

そして、雪菜がペットボトルの水を小十郎に持ってくる。

「はい、水」

「かたじけない」

小十郎は水を少し飲み一息ついた。

「御父上殿、御母上殿、拙者の体は妖怪の呪いによって蝕まれておる……」

「え?」

「どういう事?」

「そもそも拙者はかつて江戸の時代に妖怪と戦った侍……妖怪の大将である鬼童丸は拙者の宿敵であった。拙者が現代に蘇ったのも鬼童丸を倒す為でござる」

「小十郎君、どういう事?分る様に説明して?」

「つまり……君は妖怪を倒す為に蘇った江戸時代の侍と言う事かい?」

「御父上殿……その通りでござる」

「今、世の中に妖怪が現れてるのは事実だ。私も妖怪に襲われた事があるから信じられる……そして、浮世離れした小十郎君の言動……今の話を聞けば十分納得出来るよ」

「信じて貰えるでござるか?」

「ああ。妖怪が暴れてるのも君がその妖怪を倒してくれてる事もね」

「なら話は早いでござる……拙者の体は鬼の呪いによって蝕まれており、鬼童丸を倒さなければ拙者の命は尽きるであろう」

「呪いと言うのが本当にあるのなら……病院に行っても何も出来ないか……」

「そうでござる」

小十郎は全てを話それを信じてくれた敏也に感謝をしていた。

小十郎はどこかスッキリした様な表情を浮かべていた。

「話は終わったか?」

部屋に来人が現れた。

「きゃっ!?誰!?」

「何だ君は!?」

「俺は橘来人。小十郎に用があって来た」

「突然現れるなんて忍者か君は!?」

「合ってるよ」

「はぁ!?」

驚く敏也達を後目に来人は小十郎に話掛ける。

「小十郎、鬼の呪いを受けたと聞いたが」

「ああ、その通りでござる」

「いよいよ厄介な事になったな……東京では百鬼夜行が始まった。300年前の悲劇がまた繰り返される……」

「そんな事……二度とさせん!」

小十郎は布団を強く握りしめて言った。

「ねぇ、小十郎……この際だから聞かせて……300年前、何が起こったの?」

雪菜の問い掛けに小十郎は少し考えてから話し出した。


300年前ーー


当時、小十郎は妖怪達との激しい戦いに明け暮れ江戸の町を離れた山奥で師匠の妙齋院 竜玄(みょうさいいん りゅうげん)と修行をしていた。

「小十郎よ。妖怪達はいよいよ百鬼夜行を始めるつもりじゃ。その前にお前には何としても星光丸を使いこなして貰わなくてはならぬ。ここからの修行は今までの比ではない程厳しい物となるぞ」

「もちろん覚悟は出来てるでござる」

「よし、では始めよう」

そう言って竜玄は木刀を構える。

「いざ!」

小十郎も同じく木刀を構える。

そして、剣術の修行が始まる。


2人はそのまま何日も山に籠もり修行を続けた。

だが、小十郎の修行の完成を待たずして鬼童丸は百鬼夜行を開始した。

多くの妖怪達が江戸の町に押し寄せ人々を襲い暴れ始める。

江戸の人々は逃げ惑い幕府の武士達は妖怪に戦いを挑むもことごとく妖怪達の餌食になって行った。

「ハッハッハッハッ!やっぱ百鬼夜行はこうでなくちゃな!!」

鬼童丸は妖怪達の大軍勢を引き連れ江戸の町を蹂躙する。


江戸の危機を知り小十郎と竜玄は修行を切り辞め江戸に急ぐ。

「お千代……無事でおれよ……」

「待て小十郎!今のお前ではまだ百鬼夜行は止められん!」

「しかし……急がねばお千代が……江戸の町が……」

「冷静になれ、ワシが鬼童丸の首を討つ。お前は下がっておれ」

「お師匠様……」

「小十郎、もしワシに何かあった時は江戸の町を頼んだぞ」

そう言って竜玄は刀の柄で小十郎の鳩尾を殴り気絶させる。

「お師匠様……何を……」

「まだ若いお主を死なせる訳にはいかんのじゃ……許せ小十郎」

そして、竜玄は1人江戸の町に向かい妖怪達と戦いを繰り広げた。


そしてしばらくすると小十郎も目を覚ますが、小十郎が山から江戸の町を見下ろすと江戸の町は火の海となっていた。

酒呑童子が火を放ったのだ。


「お千代……お師匠様ー!!」

小十郎は急いで江戸に戻る。


燃え盛る江戸の町を駆け抜け必死にお千代と竜玄を探す小十郎……。

しかしお千代も竜玄も見つからなかった。

「お千代……お師匠様……何処に居るんだ……」

そして、小十郎の前に酒呑童子が現れた。

「星影、こんな所に居たか。決着を着けようぜ!!」

「酒呑童子……貴様だけは……絶対に許さん!!」

小十郎は星影に変身。


この戦いで星影は酒呑童子を倒したが江戸の火事は三日三晩続いた。


続く……。

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