第16話「九尾の策略」
小十郎と雪菜は橘の里に泊まり一晩過ごした。
そして翌朝、小十郎と雪菜は東京に帰る事に。
「それでは世話になったでござる」
「さようなら」
「ああ、またいつでも来てくれ」
2人を見送るのは橘信明。
「来人殿は帰らぬのか?」
「ああ、俺はしばらくこの里で鍛え直す。だが、山の麓までは送ろう」
そう言って来人は小十郎と雪菜を山の麓の駅まで送る。
来人はこのまま里に残り修行を積むつもりの様だ。
駅に到着するとしばらくして電車が来た。
「あっ!電車来たよ!」
「うむ、それじゃあ拙者達は帰るでござる。五郎殿にも宜しくお伝え下され」
「ああ、気を付けてな。俺も直ぐに強くなって東京に戻る。そして西洋妖怪を必ず潰す」
「うむ、お主と再び会えるのを楽しみにしておるぞ!」
到着した電車は2両編成のローカルな電車だ。
小十郎と雪菜は電車に乗り東京へ帰る。
電車を乗り継ぎ、朝早くから出発した為、昼頃には東京駅に到着した。
「小十郎、後少しだから頑張って」
「そ……そうでござるか……」
小十郎は慣れない電車での長旅で疲れきっていた。
小十郎と雪菜はそのまま東京メトロに乗り家まで帰って行った。
その頃、里に残った来人は早速修行を始めていた。
まずは基礎体力を上げる為に走り込みや筋トレから始めた。
次は手裏剣やクナイを投げる修行。
月光丸を使った剣術の修行。
考えられる修行は一通り行った。
「ダメだ……こんなんじゃダメだ……」
息を切らせながら来人は呟いた。
来人はこの修行だけでは強くなれないと思ったのだろう。
小十郎は地獄の力を借りてパワーアップする事が出来た。
来人自身も焦っていたのだろう。
そこに来て西洋妖怪と言う新たな敵まで現れた今、来人は強さを求めずにはいられなかった。
「兄さん……」
美桜が声を掛けて来た。
「美桜……もう動いて大丈夫なのか?」
「ええ、大分楽になった」
「そっか……良かった……」
「修行……ずっとしてたの?」
「ああ……もっと……もっと強くならなきゃいけないんだ……」
「それならあの術を試してみるか?」
叔父の信明が声を掛けて来た。
「叔父さん……あの術?」
「ああ……橘の里に代々伝わる秘術の1つだ。昨日盗まれた秘術にも匹敵する強力な物がな」
「そんな術があるのか?叔父さん、教えてくれ!」
「ただし、並みの修行では会得出来ないぞ……昔、俺も兄さんも修行したが結局会得出来なかった程だ……」
「お父さんが会得出来なかった!?そんな術本当に兄さんが会得出来るの?」
「それは来人の精神力次第だ……」
「やる!必ず会得して見せる!」
信明の修行を受ける事にした来人は早速修行を開始した。
小十郎と雪菜は家に着いた。
「あ〜……疲れた……」
「やっと着いたでござる……」
小十郎も雪菜もリビングのソファーに座り込む。
「あらあら、二人共随分疲れてるみたいね……お風呂沸かそうか?」
恵子が尋ねる。
「うん……お願い……」
「はいはい。ちょっと待ってね」
恵子はお風呂を沸かしに行く。
雪菜のスマホにりりぴょんからLINEが届く。
「あっ、りりぴょんじゃ〜ん!」
しかし、りりぴょんのLINEは衝撃的な物だった。
りりぴょんのLINEには写真も添えられていた。
その写真に写っていたのは明らかに九尾だった。
「ねぇ、小十郎!コレ……」
雪菜は小十郎に写真を見せる。
「九尾!?何故!?」
「だよね?今りりぴょんからLINEが来たんだけど……」
「行ってくるでござる」
「待って、ウチも行く!」
小十郎と雪菜は出て行った。
そこに恵子が戻って来る。
「10分位で沸くからね……」
だが、既に居ない。
「あら……居ない……」
小十郎は何故か九尾の妖気を感じなかった。
そしてそれを小十郎自身も不思議に思っていた。
「あっ!小十郎アレ!」
雪菜が指差す。
その先には誰かのバイク。
「鉄の馬か!ゆきぴょん殿でかしたでござる!」
小十郎は星武の馬具を呼ぶ。
直ぐに飛んで来た星武の馬具はバイクに装着された。
「よし!行くでござる!」
「待って!ちゃんとヘルメット被って!」
雪菜は小十郎にヘルメットを渡した。
そして雪菜も後ろに乗る。
「ゆきぴょん殿も来るでござるか!?」
「しょうがないでしょ!遠いんだから!」
「まぁ……行くでござるよ!」
小十郎は走り出す。
その直後、バイクの持ち主は……。
「あれ?……俺のバイクどこ行ったー!?」
そりゃそうなる……。
しばらく走って現場に到着する小十郎と雪菜。
「この辺りでござるな?」
「うん!りりぴょんも近くに居るはずだけど……」
小十郎と雪菜が辺りを見回すと……。
「ゆきぴょん……ゆきぴょん……」
小声で雪菜を呼ぶりりぴょん。
「あっ!りりぴょん!」
「居たでござるか!」
「しーっ!見つかっちゃう」
そしてりりぴょんの隣には同い年位の男子。
「あっ、もしかして……」
「そっ、彼氏の拓馬。初めてだっけ?」
「うん……どうも初めまして……」
「あっ、俺、拓馬宜しく」
拓馬は雪菜達とは違う高校の生徒で雪菜達は面識が無かった。
「それで、九尾がいるって本当なの?」
「うん、前にミカさんの店の近くで暴れた奴でしょ?」
「そうそう。でも何でこんな所に……」
「待て!ここに来て急に妖気が強くなったでござる……」
「え?」
警戒する小十郎達の前に九尾が姿を現す。
「来たね小十郎……」
「九尾!?貴様、何を企んでおる!?」
「流石にここまで近くだと妖気は誤魔化し切れないか……まっ、もう必要ないけどね……」
「誤魔化す?やはり妖気を消しておったか……」
「そう、僕の妖術·狐騙しの術でね。この術を使えば僕の周囲に結界を張って妖気を隠せるんだが……」
「わざわざ妖気を隠して何をしていた?」
「ちょっと試していたのさ……究極の術をね……」
「究極の術?」
「丁度いい……星影、君で試させてくれ」
「おいおい……こいつらさっきから何訳の分からない事言ってんだよ!?」
拓馬は話に付いて行けずオロオロする。
「りりぴょん……彼氏さん連れて逃げた方がいいかも……」
「うん、分かった。拓馬行くよ!」
りりぴょんは拓馬の腕を引っ張ってこの場から逃げる。
「逃がすか!」
九尾は『妖術·狐縛りの術』を発動。
りりぴょんと拓馬は目に見えない力で身動きを封じられ逃げられなくなった。
『うわっ!?何だよこれ!?』
「ウソッ!?こんな事も出来るの!?マジ意味不なんですけど!?」
「りりぴょん!?」
「くっ……貴様……」
「小十郎……まずはコイツの相手でもしていてくれ」
そう言って九尾は一匹の妖怪を呼び出した。
現れたのは3本の尻尾を持った猫の妖怪、猫又だった。
「くっ……手下の妖怪まで……」
「行け!」
九尾の合図で猫又が小十郎に襲い掛かる。
「星影-变化」
小十郎は星影に変身。
「うわっ!?何だアイツ……」
星影は猫又と戦う。
「さて、今の内に準備をしよう」
九尾は印を組む。
『融合術·魔獣变化の術』
九尾が発動したこの術こそ、橘の忍術と妖術を組み合わせた究極の術。
この術により呼び出されたのは橘の忍者の最強の守り神と言われたスサノオ。
そして九尾自身と融合し九尾本来の姿の九つの尻尾を持つ巨大な狐にスサノオの鎧が装着された究極の魔獣だった。
「こ……これは……」
「フッフッフッフッ……凄い……この力があれば星影も……西洋妖怪も敵じゃない!!」
九尾は星影に攻撃。
「うわぁぁぁぁっ!?」
星影はその攻撃を受けて大ダメージを受けた。
「次はお前達だ……」
九尾は雪菜達にも攻撃。
「お前達は知り過ぎた……消えろ!!」
星武の馬具を装着したバイクが雪菜達の前にやって来て、九尾の攻撃を受けた。
バイクは大破し宿り先を失った星武の馬具は祠へ帰って行った。
「チッ……次こそ消えろ!!」
九尾は再び雪菜達に攻撃。
『奥義·業火一閃』
星影は咄嗟に『獄炎武装』をして攻撃。
星影の必殺技と九尾の攻撃が激突し相殺。
「くっ……」
九尾は姿を維持出来なくなり变化を解除。
「チッ……まだ術は未完成か……」
九尾は姿を消す。
九尾が姿を消すと猫又も姿を消した。
九尾が消えた事でりりぴょんと拓馬を拘束していた術も解かれた。
「おっ!動ける……」
「九尾……恐ろしい奴だ……」
星影は倒れた。
「小十郎!?小十郎ー!!」
雪菜は小十郎に駆け寄る。
九尾は恐ろしい術を手に入れた。
続く……。
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