第13話「橘流忍者の里」

この日、小十郎と雪菜は橘兄妹の案内で橘流忍者の里に向かっていた。

そこは人里離れた山奥にひっそりとある様だ。

小十郎達は山を進んでいた。

「ハァ……ハァ……何でこんな山奥にあるのよ……超疲れたんだけど……」

「忍者の里なんてそんなもんだ……文句言うな」

「ゆきぴょん殿だらしないでござるよ。侍たる者常に修行を怠ってはならぬ」

「ウチ侍じゃないから!!」

「騒ぐ元気はあるじゃねぇか……」

「ゆきぴょん頑張って」

そう声を掛けたのは美桜だった。

「ゆきぴょん!?おい美桜、お前もそう呼ぶ様になったのか!?」

「へへへっ……うん!」

いつの間にか雪菜と美桜はすっかり仲良くなっていた。

しばらく進むと拓けた場所に出た。

「着いたの?」

「いや、まだまだだ」

「そんな〜……」

「ここで少し休憩するぞ」

「え?休憩?良かった〜」


レジャーシートを広げ休憩をする一同。

「橘の里まであとどれ位でござる?」

「ん〜……今丁度中間の辺りだから……後2時間って所だな」

「まだ2時間も歩くの!?」

雪菜は絶望した。

「そういえばまなぴょん殿はどうしておるかの?」

「ん〜?まなぴょんなら大丈夫じゃない?」


その頃、まなぴょんは……。

小十郎の代わりに臨時でバイトに入っていた。

「………ったく……何でウチだけ留守番なのよ……」

等と文句を言いながらもバイトは卒なくこなす。


「でもそういえばゆきぴょん殿達、学校は大丈夫でござるのか?」

「うん、ゴールデンウィークに入ったから休みだよ」

「ああ!前に言ってたやつでござるな!」

そう、この日はゴールデンウィークの頭の休日だった。

しばらく休憩をしてから一同は再び出発する。

「よし、そろそろ行くぞ」


その頃、東京湾の港では……。

黒い傘を差したタキシード姿の紳士とタンクトップに短パンと真逆なラフな格好の筋肉質の男が立っていた。

「来ましたね」

彼らが見つめる先には船が……。

その船は港に近付いて来る。

船が港に到着すると中から降りてきたのは黒いマントを羽織った若い男とその後ろに立つ大男だった。

「やれやれ……日本は遠いな……長旅で疲れたよ」

「お待ちしておりましたディボルグ様」

「オークがやられたと聞いたが相手はどんな奴だ?」

「はい……どうやらサムライを名乗る者の様で……」

「サムライ?ほぉ……日本ではとっくに絶滅したと聞いたがまだ居たとはな……面白くなりそうだ……」

「ではまず日本における我々のアジトへご案内致します」

「ちょっと待ちな」

男達に声を掛けて来たのは……。

鬼童丸だった。

「何だ貴様は?妖気……?日本の妖怪か?」

「ああ……俺様は鬼童丸……妖怪の大将軍よ」

「随分と御大層な名前だ。だがな、俺は陰気臭い日本の妖怪が大嫌いでね……消えてくれるか?」

「けっ!西洋妖怪はいけすかねぇ奴らばかりだな……だから嫌いなんだ……」

「ほぉ……俺達と一戦交える気か?」

「上等だ……野郎ども!!」

九尾と雪女も登場。

「ゴーレム……お前1人で十分だろ?遊んでやれ」

ディボルグの後ろに立っていた大男は更に巨大化し巨人ゴーレムとなった。

「フンッ……行くぜ西洋妖怪!!」

日本の妖怪軍団と西洋妖怪軍団が激突!!


その頃、小十郎達はようやく橘流忍者の里の近くまで来ていた。

「あと少しだ……もう少し頑張れ」

「ハァ……ハァ……もう……限界……」

「ゆきぴょん殿頑張るでござる!」

「う……うん……」

そして遂に橘流忍者の里に到着した。

「着いたぞ」

「やったー!あ〜……疲れた……」

「ゆきぴょん殿お疲れでござった」

「まずは叔父さんに会わないとね」

「だな」

橘兄妹の叔父の家に向かった。

橘兄妹の父、信弘の2つ下の弟橘信明がそこには居た。

「叔父さんお久しぶりです」

「おお、来人、美桜久しぶりだな。いや〜良く来た!」

早速家に招かれお邪魔する事になった一同。

「兄者から話は聞いていたが、来人はアメリカからわざわざ戻って来たそうだな」

「はい、妖怪が復活したと聞いたので……」

「妖怪か……300年も封印されていたから我々の子どもの頃から話に聞いていただけだが……本当に現れるとはな……」

「はい、そこで叔父さん、その妖怪と戦って来た星影……巽小十郎を紹介します」

話を振られ小十郎が信明に挨拶をする。

「初めましてでござる。拙者、巽小十郎と申すでござる」

「妖怪を封印していた侍が蘇ったと言うのも本当だったんだな……」

「はい……更には先日、西洋妖怪まで現れまして…」

「ああ……かなり手強い相手になりそうだな」

「それで、小十郎の刀、『星影丸』にヒビが入ってしまいまして……」

「ああ、鍛冶屋には話を通してある行ってくるといい」

「かたじけない。お世話になるでござる」


小十郎は来人に案内され鍛冶屋へ向う。


その頃、東京湾の港で戦っていた妖怪達は……。

「ぐっ……」

鬼童丸達はゴーレムに惨敗。

「実力の差が分かっただろ?これに懲りたら二度と我々の邪魔をしない事だ……次邪魔をしたら……殺す……」

ディボルグはそう言い放ち仲間を引き連れ去って行く。


「西洋妖怪……恐ろしい強さだ……」

「酒呑童子が居たらここまで……」

「黙れ……このままで済むか……日本妖怪の底力……見せてやろう……」


小十郎達は鍛冶屋に到着。

「邪魔するぞ橘だ!」

来人が声を掛けると奥から強面の老人が出てきた。

「来たか……話は聞いてる。入れ」

そう言って老人は2人を奥に通す。

この老人こそ橘流忍者の里の鍛冶職人の大島五郎だ。

小十郎は早速『星影丸』を見せた。

「どうでござるか?」

「ん〜?まぁ、ヒビ位なら直せるが……この刀、少々特殊な様だな」

「はい……それはただの刀ではござらん……拙者の師匠より授かった妖怪を倒す為の刀でござる」

「300年妖怪を封印し続けた刀か……フンッ……鍛冶職人の腕が鳴る!よし、お前達手伝え!」

「え?」

来人は裏で薪を割り、小十郎はその薪を竈(かまど)に入れ燃やす。

更に小十郎は火に息を吐いて空気を送り込む。

「いや〜懐かしいでござるな〜まさか現代でこんな体験が出来るとは」

「流石……昔の人間は手慣れてるな」

そう言いながら来人も次々に薪を割る。

「来人殿の薪割りも上手いでござる」

「まっ……俺も子どもの頃、こっちに来たら手伝わされてたからな」


竈の中の温度が上がった所で大島は『星影丸』を入れた。

「直ぐに直してやるからな……」

しばらく熱しトンカチで叩く。

また熱してトンカチで叩くを繰り返す。


星影丸の修理をしている頃、この里に近付いて来る者が……。

「!妖気……」

「何?妖怪か?」

「ああ……良く知っている妖気でござる……」

「何だと!?」

小十郎と来人は表に出て見に行く。

すると、山の方から大百足が現れた。

「フッフッフッフッ……西洋妖怪を追い払う為にも奴らを利用しないとね……」

大百足を引き連れて九尾も来ていた。


「くっ……九尾……」

「仕方ない。小十郎、お前はここで星影丸が直るのを待ってろ。俺達が行く!」

そう言って来人は大百足に向かって走り出した。


来人と美桜が合流。

「兄さん!」

「美桜!星影はまだ来れない。俺達だけで倒すぞ!」

「了解!」

橘兄妹は『忍装』

月丸と光姫に変身し大百足に挑む。


「フンッ……来たな、橘の忍……」

大百足が2人に襲い掛かる。

2人は攻撃をかわしクナイを投げる。

だが、大百足には通用していない。

「ダメ、全く刺さらない……」

「クソッ……並みの攻撃じゃ奴はビクともしないな……」


2人が戦っていると里の忍者の末裔達も戦闘の準備をして出てきた。

「皆、かかれー!!」

橘 信明の指揮の元、里の忍者達は大百足に一斉に攻撃。

クナイや手裏剣だけでなく中には爆薬を投げつける者も。

「凄い……これが本来の橘流忍者の戦い方か……」

来人は先祖代々受け継がれて来た本当の戦い方を初めて目の当たりにした。


橘の忍者の里で大百足との戦いが繰り広げられている中、西洋妖怪は東京の街で侵略を開始した。


「さぁ、日本を我らの支配下にしろ!殺せ!奪え!!」

ディボルグの指示で西洋妖怪の手下のゴブリンが暴れ始めた。


このまま日本は西洋妖怪の手に落ちてしまうのか?


続く……。

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