第11話「地獄の炎」
星影は酒呑童子に戦いを挑む。
『星影丸』を手に斬り掛かるが酒呑童子は炎を吐き反撃。
星影を寄せ付けない。
「うわっ!?なんと言う力だ……」
「ハッハッハッハッ……地獄の業火に焼かれ燃え尽きるがいい!」
「くっ……おのれ……酒呑童子……」
『奥義・水流斬』
星影の必殺技が発動する。
「そんな水が地獄の炎に通用するかー!!」
酒呑童子は水の斬撃を炎で跳ね返す……。
「何っ!?炎の妖怪に水の奥義が効かないだと!?」
これには星影も驚く。
「この酒呑童子様をそこら辺の妖怪と一緒にするなー!!」
酒呑童子は再び炎を吐く。
「うわぁぁぁぁっ!?」
星影は地獄の業火の直撃を喰らい大ダメージ。
そのまま星影は意識が朦朧とし倒れる。
「トドメだ!!」
酒呑童子が最後の攻撃を仕掛ける。
「くっ、させるか!」
月丸が『煙玉』を投げ目眩まし。
「チッ……」
煙が晴れるとそこには星影達の姿は無かった。
馬頭鬼と牛頭鬼は小十郎達を閻魔城へ運んでくれた。
小十郎はそのまま横に寝かされる。
「小十郎……ねぇ、何とかならないの?」
苦しむ小十郎を見て雪菜が訴える。
「地獄の業火に焼かれたんだ……生きてるだけ運がいい……」
牛頭鬼はそう答えるしか無かった。
「そんな……小十郎こんなに苦しんでるじゃん」
「仕方ないわ……私達は人間が踏み入れるべきではない領域に足を踏み入れたんだもの……」
美桜もまた何時になく弱気な発言をする。
雪菜達が絶望の淵に立たされている中、来人だけは次の戦いの準備をしていた。
「ねぇ、兄さん……まだ戦う気なの?」
「当たり前だろ……酒呑童子をこのままにはしておけない……お前も準備しろ」
「だって……」
馬頭鬼が閻魔大王への報告を終えて戻って来た。
「待たせたな」
「馬頭鬼さん……」
そして閻魔大王も一緒に来ていた。
「閻魔大王!?」
「あれ?なんか小さくない?」
「お前達に姿を合わせたんだ……」
閻魔大王は人間大のサイズになって来ていた。
「そんな事も出来るんだ……」
「星影の様子はどうだ?」
「まだ苦しんでます……」
「そうか……ならこの秘薬を飲ませるとよい」
そう言って閻魔大王は懐から薬を取り出した。
雪菜はそれを受け取る。
「これは?」
「地獄の炎から受けたダメージはそう簡単に治す事は出来んが……この秘薬を飲めば苦しみを和らげる事は出来る」
「ありがとうございます」
「地獄に仏ってまさにこの事ね」
「う……うるさい!さっさと飲ませろ!」
閻魔大王は意外とツンデレの様だ。
早速雪菜は小十郎に秘薬を飲ませる。
だが、その秘薬はとてつもなく苦く小十郎は吐き出しそうになる。
「いかん!口を押えろ!!」
雪菜が慌てて小十郎の口を塞ぎ無理矢理飲み込ませる。
飲んでしまえば苦さも消え小十郎は落ち着いた様子で眠りに就いた。
閻魔大王は去って行く。
「やれやれ……人間にあの秘薬を飲ませるとは……閻魔大王様も小十郎には一目置いている様だな」
馬頭鬼と牛頭鬼も去って行く。
こうしている間に来人は準備を整える。
「よし……美桜行くぞ」
「うん……」
「どこに行くの?」
「決まってるだろ……酒呑童子を倒しに行くんだ」
「そんな!無茶でしょ!あんだけ圧倒的だったんだから!」
「だからと言って奴を放っておく訳にはいかん……」
「門倉さん、小十郎さんをお願いね。私達だけじゃ酒呑童子は……小十郎さんの力も必要になると思うから」
「美桜、余計な事は言わなくていい……行くぞ」
来人と美桜は再び酒呑童子を探しに外へ出ていく。
その頃、小十郎は夢を見ていた。
それは遠い昔、江戸時代に生きていた頃の夢……。
笑顔のお千代と楽しかった日々を過ごしていた頃の夢だった。
だが、そんな楽しい時間はあっと言う間に奪われた。
酒呑童子が江戸の町を焼き払い暴れだしたからだ。
燃える江戸の町の中を必死に駆け回りお千代を探す小十郎。
どこに居るんだ……無事で居てくれ……そう心の中で叫びながら必死に探す。
しかし、お千代を見つける事は出来なかった……。
「お千代……お千代……」
「小十郎?」
小十郎はうなされていた。
「小十郎!しっかりして!」
雪菜は小十郎を起こそうと必死に呼び掛けた。
小十郎が手を伸ばす。
雪菜はその手を握った。
すると安心したかの様に安らかな表情に戻り小十郎は目を覚ました。
「ゆきぴょん殿……」
「小十郎……大丈夫?」
「うむ……すまん……嫌な夢を見ておった……」
「酒呑童子はどうなった?」
「今、橘兄妹が探しに行ったわ……」
「そうか……」
その頃、橘兄妹は再び火炎地獄の辺りまで来ていた。
すると火炎地獄の穴の中から亡者達が出てきてしまっていた。
「兄さん、これは……」
「火炎地獄の炎が無くなったから中に居た亡者共が出てきてしまったんだろう」
「どうするの?」
「コイツらの相手をしている暇は無い。走るぞ!」
「うん!」
橘兄妹は走り出した。
だが、亡者達は橘兄妹を追い掛けて来る。
「チッ……面倒くさいな……」
来人は亡者達を撹乱する為に『煙玉』を投げた。
一気に亡者達から離れる橘兄妹。
雪菜は小十郎にずっと気になっていた事を思い切って聞いてみた。
「ねぇ、小十郎……確か初めて会った時もウチを見てお千代って言ってたじゃん?お千代さん……って?」
「!……そうであったか?……お千代は……幼き頃からの幼馴染みでござる……本当なら妖怪を退治した後、祝言を挙げるはずじゃった……」
「しゅうげん?」
「今の人間界で言う結婚式だ」
そう言って現れたのは馬頭鬼だった。
「馬頭鬼さん……そっか……結婚するはずだったんだ……」
「ああ……だが、妖怪との戦いが激しくなり酒呑童子が大暴れしたせいで江戸の町は炎に包まれた……お千代はその火事で……」
「死んじゃったの?」
「恐らく……亡骸も見つからんかったから不確かでござるが……」
「そっか……」
そう言って小十郎は悲しそうな表情を浮かべる。
「ところで馬頭鬼殿、何か用でござったか?」
「あっ!ああ、そうであった……閻魔大王様がお呼びだ。来てくれ」
「承知した」
小十郎と雪菜は馬頭鬼と共に閻魔大王の元へ向かった。
一方で橘兄妹は亡者を振り切り酒呑童子を発見していた。
「見つけたぞ!酒呑童子!!」
来人は早速月丸に変身し酒呑童子に攻撃を仕掛ける。
「何だ?死ぬ覚悟が出来たか?」
酒呑童子も反撃する。
酒呑童子の炎を纏った拳が月丸を襲う。
「ぐわっ!?」
「兄さん!?」
光姫も月丸を援護する為に『手裏剣』を投げる。
「小娘!そんな玩具で我を倒せると思うたか!!」
酒呑童子は光姫の手裏剣を弾き飛ばし反撃。
強烈な炎の拳が光姫を襲う。
「くっ……美桜……」
月丸も助けようと必死に攻撃を仕掛ける。
閻魔大王に呼び出された小十郎は……。
「閻魔大王殿、お呼びでござるか?」
「うむ……星影よ……お主にこの刀を託そうと思ってな」
そう言って閻魔大王は一本の刀を差し出した。
「閻魔大王様!それは!?」
馬頭鬼も驚くその刀とは……。
『閻魔刀・獄炎丸』
獄炎丸……それは地獄に伝わる宝刀だった。
「この刀は正しい心の持ち主に力を与え、悪しき心の持ち主を焼き払うと言われている。お主なら使いこなせるであろう」
小十郎は『獄炎丸』を受け取った。
「閻魔大王殿……この刀、お借りするでござる!」
そして小十郎は『星影丸』も取り出し……。
「星影-变化」
星影に変身。
そして『獄炎丸』の刀身を抜くと……。
獄炎丸の刀身は黒く、峰の方は炎をあしらい赤く塗られていた。
『獄炎丸』の刀身から炎が吹き出し星影の体を包んだ。
「小十郎!?」
思わず雪菜は叫ぶ。
しかし……。
星影の体を包んだ炎は真っ赤な鎧となった。
星影は新たな力、地獄の炎を身に纏った『獄炎武装』の姿となった。
「よし、地獄の炎はお前を認めた。行け星影!その力を使い酒呑童子を倒して来るのだ!!」
閻魔大王がそう言うと星影の体はまた炎に包まれ酒呑童子の元まで飛んで行った。
「凄い……」
酒呑童子の圧倒的な力に橘兄妹は窮地に立たされていた。
「くっ……やはり……奴には勝てんのか……」
「兄……さん」
光姫は必死に月丸の方に手を伸ばす。
「兄妹仲良くあの世へ行け……あっ、ここはもうあの世だったなぁ……」
酒呑童子が橘兄妹に迫る。
だが、そこへ星影がやって来た。
「酒呑童子!貴様の悪行……許さん!」
「星影!?何だその姿は……!?」
「お前を……倒す為の力だ……」
星影は『獄炎丸』を構える。
「フンッ……ほざけ!!」
酒呑童子は炎を纏った拳で星影に殴り掛かる。
だが、酒呑童子の拳の炎は『獄炎丸』に吸収される。
「何っ!?」
そして、星影は酒呑童子の攻撃をかわし反撃。
『奥義・業火一閃』
地獄の業火を纏った刀が酒呑童子を斬り裂く。
「ぐっ!?ぐわぁぁぁぁっ!?」
その一撃は炎を操る妖怪である酒呑童子でも焼き尽くす程の威力だった。
「おのれ〜星影め〜……」
酒呑童子は倒された。
「凄い……」
「星影……その力は……」
酒呑童子が倒された事を鬼童丸も感じ取った。
「!!酒呑童子……死んだか……」
「なんですって!?くっ……酒呑童子……」
九尾も流石に動揺した。
「フンッ……地獄落としの術……それが何故禁術なのか知っているか?」
「いえ……命に関わる危険な術だからではないのですか?」
「いや……我々妖怪は死なない……命に関わる様な事とは無縁だろう……しかし、あの術を使った者は地獄から抜け出せなくなり永遠に地獄を彷徨う事になる……そうなれば流石の妖怪でも蘇る事は出来ないからな……」
「なるほど……禁術になった理由はそれですか……」
星影は火炎地獄の炎を火炎地獄に戻した。
閻魔城に帰った4人は閻魔大王から許され元の世界へ戻る事が出来る。
「お前達、良くやってくれた。これで地獄の秩序も保たれるだろう」
「うむ、閻魔大王殿、この刀はお返しいたす」
そう言って小十郎は『獄炎丸』を差し出す。
「いや、それはお主が持って行け、これから先の妖怪達との戦いにきっと役に立つだろう」
「良いのか?」
「ああ、もしお主が再び地獄に来る様な事があったらその時帰してくれればよい」
「いやぁ……それはごめんでござる……」
「ハッハッハッハッ!!」
「閻魔大王様……地獄ジョークキツいって……」
雪菜も呆れる。
「では、現世への扉を開く。そこから帰るがよい」
「はい、ありがとうございましたでござる」
小十郎達は無事に元の世界に戻って行った。
続く……。
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