第10話「地獄の大決戦」

酒呑童子が使用した『禁術・地獄落とし』により星影、雪菜、月丸、光姫は巻物から発生した穴に吸い込まれてしまった。


4人が行き着いた先は……。


小十郎が目を覚ます。

どうやら全員変身が解かれている。

「ここは……?」

小十郎が辺りを見渡すと空は暗く暗雲に覆われ大地は何もない殺風景な荒野が広がっていた。

「ゆきぴょん殿、しっかり、ゆきぴょん殿!」

小十郎が雪菜を起こす。

「ん?……小十郎?ここどこ?」

「分からん……一体何が起こったのか……」

そして小十郎は橘兄妹も起こしに行く。

そこで雪菜は驚いた。

そこに横たわっていたのは先日転校してきたばかりのクラスメートの美桜だったからだ。

「橘さん……?どういう事?」

「ゆきぴょん殿知っておるのか?この娘は橘忍者の美桜殿じゃ」

「ウチのクラスメートだよ……」

「何と!?くらすめーととは何じゃ?」

「知らずに驚いてたの?」

橘兄妹を起こして状況を整理する。

「ったく……何だったんだ……あの術……」

「地獄落としとか言ってたよね?」

橘兄妹が話す。

「じゃあここは地獄?ウチら死んじゃったの!?」

雪菜は取り乱す。

「馬鹿な……そんなはずはない……」

「そういえば何で橘さんが忍者なの?」

「ん?あっ、そうねまずその説明しなくちゃ……」

美桜は雪菜に先祖代々伝わる忍者の一族である事とその先祖代々妖怪達と戦って来た事を説明。

更に雪菜の学校に転校してきたのも小十郎に近付く為だったと正直に説明。

「そうだったんだ……」

「あれ?驚かないの?」

「まぁ……小十郎と知り合ってから散々妖怪見てきたし……今更……」

「なるほどね……思わない形でお互いを知る事になっちゃったけどこれからもクラスメートとして仲良くしてくれる?」

美桜が尋ねると。

「勿論!だってウチら泣く子も黙るJKじゃん!」

「意味が分からん……」

来人は呆れる。

「同じく」

小十郎も同意。

「おっ!初めて意見が合ったな!星影」

「そうでござるな!」

「ちょっと兄さん!」

「小十郎!!」

次第に打ち解けて来ている4人。

だがそこに……。

「!妖気……」

小十郎は妖気が近付いて来る事を察知した。

少しずつこちらに近付いて来る妖気……そして次第に足音も聞こえて来る。

「何だ?」

やって来たのは牛の頭を持った妖怪、牛頭鬼と馬の頭を持った妖怪、馬頭鬼だった。

「地獄への侵入者が居ると報告があったがどうやら貴様らの様だな」

「何だお前達は!?」

小十郎が尋ねると……。

「我らは地獄の番人。牛頭鬼と馬頭鬼だ……生者の無断での地獄への侵入は固く禁じられている貴様らを拘束する!」

「ちょっと待て!俺達は無理矢理ここに送り込まれたんだ!俺達の意思じゃない!」

「黙れ!貴様らの行いは全て閻魔大王様が裁きを下す!大人しく付いて来い!」

「人の話聞けよ!」

だが、牛頭鬼と馬頭鬼は聞く耳を持たず4人は拘束される。

「ちょっと!離してよ!」

「チッ……こうなったら……美桜行くぞ!」

「了解!」

橘兄妹は『抜け身の術』で脱出。

「あっ!コラ!!」

「悪いが少し時間をくれ俺達をここに送り込んだ張本人を捕まえて来るからよ」

そう言って橘兄妹は走り去る。

「チッ……馬頭鬼奴らを追え!」

「ああ……」

馬頭鬼が橘兄妹を追う。

「ちょっと!ウチらはどうなるのよ!?」

雪菜が取り乱す。

(そうか……ここが地獄なら……)

「ゆきぴょん殿、大丈夫でござる!拙者達は閻魔大王の所に行くでござる」

「はぁ!?何言ってんの?ウチまだ死にたくない!!」

「良いから早く来い!!」

牛頭鬼に連れられ閻魔大王の城へ向う小十郎と雪菜。


一方橘兄妹は……。

「兄さんどこまで行くの?」

「酒呑童子も来てるはずだ。奴を探す!」

「分かった……」

だが、彼らが進んだ先には針地獄があった。

深い谷が広がりその下には無数の鋭い針が上に向かって伸びていた。

それはまるで獲物を待って口を開ける獣の様に見えた。

更にこの谷の向う岸にも道は続いていたがそれはあまりにも遠く橘兄妹の忍びのジャンプ力を持ってしても飛び越えられない距離だった。

「兄さん、どうするの?」

「くっ……仕方ない……他の道を探すぞ!」

来人は進路を右に変更し走り出す。

「待って兄さん!」

美桜も後を追う。

だが、馬頭鬼は流石に馬の妖怪だけあって足が早い。

もう橘兄妹との距離を縮めて来た。

「待てー!!」

「兄さん、馬頭鬼が来た!」

「チッ……あの馬面妖怪め……流石に足が早いな……」

橘兄妹は必死に走る。


その頃、小十郎達は閻魔城に到着し閻魔大王の前に跪かされていた。

「ほぉ、お前達が侵入者か……人間の様だがどうやってここまで来た?」

雪菜は閻魔大王の迫力に圧倒され恐怖で受け答えが出来ない。

「拙者達は酒呑童子の術によりここに無理矢理連れて来られた!拙者達の意思では無い!」

小十郎は毅然と答える。

「そうか……だが、どんな理由であろうと地獄に無断で足を踏み入れる事は許さん……裁きは受けて貰うぞ……」

「そんな〜……ウチはただの善良な青春真っ只中のJKなのに〜……」

閻魔大王が小十郎と雪菜の行いを調べる。


一方、橘兄妹は馬頭鬼から逃げながら酒呑童子を探していた。

橘兄妹が走った先には今度は火炎地獄が待ち構えていた。

「くっ……」

「熱い……」

「今度は火炎地獄かよ……」

だが、火炎地獄の炎の中からうめき声の様な音が聞こえて来る。

「何だ?」

「地獄なんだから焼かれた亡者とかじゃない?」

美桜が答えると……。

「お前……さらっと怖いこと言うな……」

だが、馬頭鬼が追い付いて来た。

「まずい!」

その時、火炎地獄の炎が噴き上がった。

「何だ!?」

馬頭鬼も初めて見る現象に驚いた。

炎の中から酒呑童子が現れた。

「流石地獄の炎……強烈だぜ……」

酒呑童子は地獄の炎を吸収しパワーアップした。

「酒呑童子!貴様、こんな所に居やがったのか!」

来人は月丸に『変身』し酒呑童子に斬り掛かる。

だが、酒呑童子は炎を吐いて反撃。

「うわぁぁぁぁっ!?」

「兄さん!?」

美桜も光姫に『変身』し酒呑童子に攻撃。

しかし、酒呑童子の強烈なパワーの前にねじ伏せられる。

「まずい……これは……地獄の一大事だ……」

馬頭鬼は使い魔を呼び出してこの事を閻魔大王に伝えに向かわせる。

何とか炎を振り払った月丸はもう一度酒呑童子に攻撃。

しかし、酒呑童子は月丸の攻撃にもビクともせず反撃する。

光姫も攻撃を続けるが酒呑童子には全く通用しない。

そして、酒呑童子は光姫を倒し踏み付ける。

「ぐあっ!?」

「美桜!!貴様ー!!」

月丸は怒りを露わにし酒呑童子に猛攻撃を仕掛ける。

「フンッ……お前達兄妹は地獄で朽ち果てるがいい!!」

酒呑童子は再び炎を吐く。

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

「兄さーん!?」


その頃、閻魔大王は小十郎と雪菜の行いを調べ終えていた。

「なるほど……小十郎、貴様は本来江戸の時代に生きていた様だな……妖怪達の復活と共に現代に蘇ったと言う訳か……」

「はい、その通りでござる」

「悪さをする妖怪達と戦い人々を救って来た善意を認めよう」

「ありがとうございます!」

「そこの娘、門倉雪菜……」

「はっ、はい!」

「お前も罪を犯している訳でもなくそこの小十郎を助けた善意の心を認めよう」

「ありがとう!じゃあ……」

そこに馬頭鬼の使い魔が到着。

「大変です!閻魔大王様〜」

「なんじゃ騒々しい……」

使い魔は閻魔大王に酒呑童子が火炎地獄の炎を吸収し暴れ回っている事を報告した。

「なんじゃと!?くっ……酒呑童子め……」

「そうか……酒呑童子も地獄に来たのはその為だったのか……拙者が行って酒呑童子を倒して来るでござる!」

「良いだろう……お前達が見事酒呑童子を倒し火炎地獄の炎を取り戻せば地獄への侵入を不問とし元の世界に帰してやろう」

「はっ!必ず!」

小十郎と雪菜は使い魔の案内で火炎地獄にある場所へと向う。

酒呑童子は火炎地獄で暴れ続け橘兄妹を苦しめていた。

「クソッ……全く太刀打ち……出来ない……」

「兄……さん」

月丸と光姫は力尽きようとしていた。


そこへ小十郎が到着。

「月丸殿!光姫殿!大丈夫でござるか?」

「小十郎……さん……」

「酷い……」

ボロボロの月丸と光姫を見て雪菜は思わず目を覆った。

「酒呑童子…!許さん!!」

「星影-变化」

小十郎は星影に変身し酒呑童子との戦いに挑む。

しかし、地獄の炎を吸収した酒呑童子の強さは桁違いだ。

星影は酒呑童子を倒す事が出来るのだろうか?


続く……。

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