新たな戦士

第6話「魂宿る物」

星影はかつての愛馬、星武の魂が宿った馬具を装着したバイクで火車を追う。

「な……なんと言う……速さじゃ……!妖気が近くなって来た……」

火車の後を追って燃え盛る道を突き進むバイク。

そして遂に星影は火車を捉えた。

「む?見つけたぞ……なるほど火車か……」

バイクはどんどん火車に接近。

「何っ!?俺の速さに付いてくるだと!?何だあの馬は!?」

火車も驚く。

「ん?アレは……何だ?」

酒呑童子もバイクに乗る星影を発見。

「星影!?まさか奴が……あの愛馬と共に!?」


そして遂に星影は火車と並んだ。

「火車!貴様もここまでだ!」

星影は『奥義·水流斬』を発動。

『星影丸』の刀身に水が渦巻く。

そして火車を横一線に斬る。


「邪鬼……退散!」

水の力で火車の火は消され力を失う。

「お……おのれ〜……」

火車は消滅。


「チッ……星影め……」

火車を倒すとバイクも徐々にスピードを緩め停止。

星影が降りると馬具も解除され祠の方へ戻って行く。

「ありがとう……星武……」


その頃、このバイクの持ち主は……

「あれ?俺のバイク何処行った!?まさか……盗まれたー!?」

パニック。

そりゃそうか。


小十郎はデパートに戻り雪菜や恵子と合流。

「小十郎、大丈夫?」

「うむ、問題ない!」

いや……あるけど……。


何事も無かったかの様に帰る3人。


−翌朝−


昨日の火車が暴れた影響で起こった火事がニュースで取り上げられていた。

「うわ〜……昨日小十郎これに行ってたのね〜」

雪菜はスマホのネットニュースを見ながら歯磨きをする。

「ゆきぴょん殿、それは何でござるか?」

「ん?あっおはよー。歯磨きだけど……昨日教えたじゃん」

「そうではござらん、その板の事じゃ」

「板って……スマホの事?」

「それじゃ、そのすま何とかとは何をする物じゃ?」

「う〜ん……電話したりメールしたり……動画見たり……調べ物したり……ゲームしたり……とにかく色々出来るよ!」

「ほぉ〜便利な物じゃの〜」

「うん……(あっ!小十郎にも持たせた方がいいかも……)」

ふと雪菜はそう思い歯磨きを終えると敏也に相談。


「小十郎君にスマホ?ん〜まぁ確かに……今の時代必要かもな〜」

「でしょ?小十郎が現代で生きていく以上絶対居るし、あれば便利だと思うの!」

「でもスマホもただじゃないのよ?支払いはどうするの?」

「そこはパパが頑張って……」

「あのね……」

「この際だから、小十郎君にもアルバイトをして貰うのはどうかしら?小十郎君がそれで払って行ける様になれば名義人に位なってあげるわよ!」

「そうだな、それならパパも良いが……」

「バイトねぇ……ん〜うちの店も人手が足りないって店長言ってたし相談してみる!」


訳の分からない内に話が進んで行く小十郎はキョトンとしている。


雪菜は学校へ行きパパは仕事へ。


家には恵子と小十郎だけになった。


小十郎は暇を持て余し庭で素振りを始めた。


その頃、雪菜は学校でまなと莉々奈に小十郎の事を話していた。

「えぇっ!?一緒に住む事になったの!?」

驚いたまなが大声でリアクションしてしまう。

「しーっ!声が大きいって!」

「あっ、ごめん……」

改めて小声で話す3人。

「でも、良く許可したよね、おじさんとおばさん」

「うん、パパは小十郎に助けられたから考えを変えてくれてさ」

「助けられて?」

「あっ、うん……パパがちょっと困ってたの……」

「ふ〜ん……でも1つ屋根の下で男と暮らすってどんな気分?」

「変な事言わないでよ!何にもないから!」

「なんにも無いんだ……可哀想〜」

まなぴょん、りりぴょん揃って雪菜に同情する。

「何の同情!?止めろー!?」

雪菜は2人に突っ込む。

「で、小十郎にもバイトして貰おうと思うんだ」

「バイト?まぁ、そっか居候と言ってもお金は掛かるもんね……」

「うん……今日バイトの時、店長に相談してみようと思うんだけど……不安だなぁ……」


家では恵子がテキパキと家事をこなす。

小十郎は素振りを1000回して部屋に戻って来る。

「ふぅー……」

その時、掃除機の音に驚く小十郎。

「うわぁぁぁぁっ!?な……なんだそれは!?」

「あっ、小十郎君……」

恵子は掃除機を止める。

「どうしたの?」

「は……母君殿、何じゃそれは?」

「これ?掃除機よ?」

「掃除き?掃除をするカラクリか?」

「まぁ、そんな所ね」

「ほほぉ……やはりこの時代の物は凄いのぉ」

小十郎は掃除機に興味を持ったのかまじまじと見る。

「小十郎君もやってみる?」

「良いのか?」

「フッフッ、何かに興味を持つのは良いことよ。手伝って」

小十郎は掃除機を渡されると使い方を教わり早速スイッチを入れる。

最初は恐る恐る使っていたが段々と慣れて来て掃除が出来る様になって行った。

小十郎はハマったのか部屋中、いや家中綺麗になった。

「うむ!母君殿、こんなもんでどうか?」

「うん、完璧!時々お手伝い頼んじゃおうかな?」

「うむ、心得たでござる!」


その後も恵子から色々と家事の仕方を教わった。

その夜、雪菜はバイトを終え帰ってきた。

「ただいま〜」

雪菜は家に帰るなり自分の部屋に向う。

「ちょっと〜!?何これ!?」

雪菜は突然大声を出し慌ててリビングに来た。

「ちょっとママ!ウチの部屋勝手に掃除したでしょ!!」

「え?掃除をしてくれたのは小十郎君よ」

「えぇ!?小十郎!?」

「ん?何だ?ゆきぴょん殿……どうしたでござる?」

「小十郎!!勝手に部屋に入らないでよ!!んで掃除まで勝手にやって!!」

「え……えぇー!?拙者……何かまずい事したでござるか???」

いきなり責め立てられて小十郎はプチパニック状態。

「あんたねー!!JKの部屋に無断で入るなんて!言語道断よ!!」

「雪菜……何でこんな時だけ難しい言葉使うのよ……それに小十郎君はお手伝いしてくれたのよ!そんなに怒らないの!」

「だって……」

「ゆきぴょん殿!!すまなかったでござる!!」

小十郎は土下座する。

「拙者、腹を切ってお詫びするでござる!!」

「むしろ辞めて!!そっちの方が1万倍迷惑だから!!」

今日はやたら賑やかな門倉家であった。


だがその頃、闇夜に紛れて妖怪達は動き出していた。


「今回は少々曲者を用意しましたよ……さぁ、星影……こやつを倒せるかな?」

九尾が従える妖怪は……。

飛行能力を持つ妖怪、姑獲鳥(うぶめ)。

姑獲鳥は住宅街を襲撃し小さな子どもの狙う。


「!妖気……」

小十郎は妖気を感じ取り出ていく。

「あっ!小十郎!」

雪菜も小十郎を追いかける。

小十郎が家を出ようと玄関まで来ると丁度敏也が帰宅してきた。

「皆!大変だ!大きな鳥が家を襲ってるぞ!!」

小十郎は外に出る。

「あっ、ちょっと……小十郎君!?」

「ウチも行く!パパとママは家に居て!」

「えぇ!?ちょっと雪菜……」

混乱する敏也を後目に雪菜も小十郎を追って外へ。


「小十郎、妖怪?」

「ああ……こっちか!」

小十郎は妖気を辿る。

しばらく走ると姑獲鳥を発見。

「あれは……姑獲鳥か……」

「居た!」

姑獲鳥は1軒の家を襲い子どもを狙っていた。

「ゆきぴょん殿はここにおれ」

小十郎は『星影丸』を構える。

「星影-变化」

小十郎は『変身』

「星影……参る!」

星影が登場し、姑獲鳥に向かって斬りかかる。

姑獲鳥は星影の攻撃を飛んで避ける。

「くっ……」

そして、姑獲鳥はそのまま空を飛び逃げて行く。

「逃がすか!!」

星影も走って追い掛けるが空を飛ぶ姑獲鳥に追い付けない。


「どうしよう……このままじゃ……」

その時、再び祠から光が放たれる。

「アレは!?星武!来てくれたか!」

星武の馬具が近くのバイクに装着された。

「よし!行くぞ!!」

星影はバイクに跨り姑獲鳥を追う。


だが、このままでは追い付けたとしても星影の攻撃は姑獲鳥に届かない。

星影は姑獲鳥との距離を徐々に縮めて行く。

(空を飛ぶ相手ならやはりあの技か……)

星影は『星影丸』を構える。

星型の鍔を回転させ必殺技を発動。

『奥義·神風斬(しんぷうざん)』

『星影丸』の刀身に風の力が宿りそのまま振るう事で斬撃が飛ぶ。

その斬撃は見事に姑獲鳥に命中。

姑獲鳥は墜落して行く。

「くっ……しまっ……奴にはあの技があった……」

九尾も計算外だった様だ。

九尾はそのまま姿を消した。

墜落した姑獲鳥に星影が追い付く。

バイクを降りトドメを刺す。

『奥義·星影閃光斬』

姑獲鳥を倒した。

「邪鬼……退散!」

戦いが終わると星武の馬具はまた祠の方へ戻って行った。

「やはり……あの馬具には星武の魂が宿っておるのだな……」

星影は小十郎の姿に戻る。

「??……ところで……どっちに帰れば……」

小十郎は完全に迷子になった。


そんな小十郎を見ている1人の女……。

「アレが星影か……いよいよね……」


続く……。

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