茄子か、赤茄子か、
宵の空
第1話
「ご飯よ」
キッチンから嫁の声がした。
今日も始まる
俺の戦の時間
『お前めちゃくちゃトマト好きだな』
机の上にぎっしりと並んだトマト料理を前に俺は引いている。
マジで引いている。
「貴方はトマト好きじゃないのね」
赤茄子(トマト)を丸かじりしながら嫁は呟いた
『そうでもないよ』
本当は大嫌いだ。
だが臨月が近い嫁が作ってくれたご飯だ。
残さず美味しく食べるのが婿の務めだろ。
俺は、昔赤茄子が好物だった
毎日食べていた
なんなら親の分まで食べていた
悪ガキ人生を順調に歩んでいた時祖母が無くなった
食中毒だ
原因は
【赤茄子】
それからは赤茄子が怖くて怖くて食べれなかった
今の嫁さんと結婚したのは運命かもしれない
または、
祖母のからかいか、
そんなことを思い出しながら今日も無事に戦が終わった
吐きそうなのを我慢して食器を下げた
それから2週間が経った時
嫁に図書館へ本を返してきて欲しいと頼まれた
正直1人家に残すのは心配だが最近は吐き気も落ち着いてるし大丈夫だろう
嫁が借りていたのは編み物の本だった
最近コソコソと何かをやっていた
それは編み物だったんだ
小さな謎は解けた
でも俺には大きな謎が残っている
子供の性別だ
今日の夕ご飯が
茄子だったら男の子
赤茄子だったら女の子だそうだ
嫁のことだ
きっと女の子だろう
『ただいま』
家に帰るといつもは聞こえる嫁の声がしなかった
リビングへ行くと嫁が倒れていた
そして、破水していた
急いで救急車を呼び、病院に着くと帝王切開の手術が始まった
1時間後赤ちゃんが生まれた
体重2300gの小さな女の子だ
やはり女の子
赤茄子の方だ
俺たちは今の季節、【夏】にちなんで
娘を【菜津】となずけた
出産予定日よりも1ヶ月と少し早く生まれた菜津だがすくすく元気にそだっている
が
嫁は残念そうだ
菜津は赤茄子嫌いの茄子好きに育った。
これも1つの運命
祖母のからかいだ
茄子か、赤茄子か、 宵の空 @YOI-no-SORA
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます