怖い夢

 最近は夢自体あまり見ないけれど、昔はしょっちゅう見た。幼少期は怖い夢しか見なかった。

 中でも怖くて印象的で鮮明に記憶に残っている夢を、記録がてらちょっと書き残しておこうと思う。

 本当にただの記録なので、興味ない方は飛ばしてください!



①キョンシーの夢

 幼稚園に入るか入らないかくらいの頃、キョンシーの夢を繰り返し見ていた。理由は単純で、その頃テレビで『幽幻道士』なるアクションホラーコメディー番組が流行っていたからである。

 私は四人きょうだいの末っ子で、すぐ上の兄と五歳、長姉とは九歳離れているから、テレビ番組は姉兄たちが選ぶものを一緒に見ていることが多かった。で、キョンシーである。

 本当に毎晩ではないかというくらい、よく見た。内容は「キョンシーに追いかけられる」という筋は一貫しているものの、追いかけられ方は毎回違っていて、バラエティに富んでいた。

 大抵は追いつかれそうになったところで目が覚めるのだけれど、樽のようなものに隠れてホッとしていたら、蓋を開けられてバッと恐ろしい形相のキョンシーに覗かれてジ・エンドということもあり、これが一番怖かった。

 今思うと面白いのは、ホラー展開ばかりでなく、作品のコメディー部分もきちんと夢の中に引き継がれていた点である。

 中華街のような街中を追いかけられている時、横から大きな馬車のようなものが走ってくるのが見えたので、あえてその前に飛び出して通りを渡った。

 すかさず物陰に隠れて様子を伺っていると、馬車が行き過ぎた後に追跡を再開しようとしたキョンシーが、こちらを見失って「あれ?」という顔になり、辺りをキョロキョロ見回して、別の方向へ行ってしまった。

 夢の中で「してやったり」という感覚はなかなか得られるものではないので、この時の爽快感はよく覚えている。

 キョンシーの夢は幼稚園の年少が終わる頃まで続いたように記憶している。



②お父さんが恐竜の夢

 千葉に引っ越してすぐに見たので、幼稚園年少の秋頃の夢だと思う。

 朝起きて階段を下りると、ダイニングテーブルになぜかティラノサウルスみたいな恐竜が座っていて、父みたいに新聞を読んでいる。

 ええ……と引きつつも気にしないふりをして遊んでいると、その恐竜がこっちに近付いてきて「それを取ってくれ」という仕草をする。

 辺りを見回したら、私のお気に入りのおもちゃがあるので、仕方なく渡す。鋭い爪でうまく扱えないらしく、恐竜はそれをパリパリと壊してしまう。

 ドン引きしつつも相手が恐竜なので文句も言えず、「お父さんはどこ行ったの……」と思っていたところ、母が登場して「新しいお父さんよ」と衝撃の一言。

 目が覚めてわあわあ大泣きしながら母にしがみついたものの、内容が内容なので詳しい話ができず、「怖い夢を見た」としか訴えることができなかった。

 (なお、両親は離婚も再婚もしておりません)



③火曜サスペンス劇場の夢

 夜中に目が覚めるとテレビの音がするので、隣の部屋を覗くと、父が火曜サスペンス劇場を見ている。オープニングの音楽が怖いと声をかける。

 寝なさいと言われたので大人しく布団に戻っても、なぜかテレビ画面が見える。

 女が二人、どこかの家のテーブルに向かい合わせで座っている。一人は険しい顔で一方的に話し、一人は悠然と黙っている。やがて険しい顔の一人が立ち上がり、透明のポリ袋を相手の女の顔に被せると、自分も席に戻って同じようにポリ袋を被る。

 自分でポリ袋を被った女は苦しみ始め、やがて死んでしまうが、被せられた方の女は苦しみもせずにそれをじっと見つめていて、相手が死んだ後、おもむろに指でポリ袋を引き裂く。

 これ、見たのは千葉に越して来る前だったように思うけれど、判然としない。

 そして、一部が現実なのか、全て夢なのかも、よくわからない。

 幼児がこんなシーンを頭の中で生み出すのは難しい気がするので、実際に放映された場面を切り取って夢の中で再生したのかもしれない。

 もし火サスでそんなシーンを見た覚えがあったら、教えてください!



④悪魔のドラえもん

 いきなり時間が飛ぶが、高校生の時に見た夢。人生の中でこれが断トツで一番怖かった。

 その頃、ゲームとよく似た世界で家族や友人同士がダンジョン攻略することになる……という系統の夢をよく見ていて、これもそういう始まり方だった。

 ダンジョン攻略する人々がグループごとに集まっている場所があり、そこにうちの家族もいる。

 一人、可愛い顔をした金髪の少年が交じっている。

 なぜかみんなに可愛がられ、受け入れられているけれど、私だけはその少年のことを邪悪なものではないかと疑っている。

 少年もそれに気付いており、余計なことは言わない方がいいですよ、みたいなことを言ってくる。

 移動することになって外に出ると、そこは銀座に似た都会の街。どこからともなく合唱する声が聞こえてくる。

 第九の合唱みたいな響きで短調なので最初は気付かなかったけれど、よく聞くとそれは「ドラえもん」の歌だ。「あんなこといいな……」のやつ。※フォロワーのブロ子様よりコメントいただき気付きましたが、正しくは「こんなこといいな」だそうです!

 段々と声が近付いてきて、とあるビルの角を曲がったところで最大になったので、そのビルを見上げると、全面がガラス張り。

 窓がたくさんのマス目状に分けられ、少年少女がマス目ごとにびっしり貼り付いて外を見下ろし、合唱している。口と目は黒くぽっかり開いた穴のよう。

 悲劇的なドラえもんの歌と彼らの異様な様子にゾッとして他の人にも訴えるのだけれど、みんな気にならないのかちゃんと見ようとしない。

 金髪の少年だけがほくそ笑んでいるので、あいつは悪魔のドラえもんだ、どうにかしないと……! と思ったところで目が覚める。

 窓びっしり、の光景がおぞましすぎて忘れられない。



⑤海辺に引っ越す夢

 去年か一昨年に見た最新の悪夢。

 海によく行くなら引っ越した方がいいと言って、夫が勝手に今の家を売り、海辺の家を買ってしまう。

 文句を言いながらも、仕方がないので引っ越しをする。行ってみるとまるで宮殿のような豪邸で、本当に海辺ギリギリのところに建っている。

 ものすごい格安で買ったと聞き、こんな豪邸が格安……何かあるんじゃ……と不安に思っていると、案の定、満ち潮で波がガラス張りの玄関に体当たりを始める。

 慌てて鍵を閉め、言わんこっちゃない~と思っていると、見知らぬマダムたちが「あら~」とか言いながら玄関ホールに佇んでいる。ど、どちら様?

 どうやらご近所の方々らしい。話を聞くに、やはりここは問題だらけの物件で、買い手がついてもすぐに売られてしまうらしい。

 え……大丈夫かしら。ここ、波がかなり激しいみたいですけど、あのガラス割れないですよね、ね? と恐る恐る聞くも、芳しくない反応。夜はここで寝ない方がいいですよ……などと言われる。どうしろと!?

 子供を連れて脱出。近くに宿を取ることにする。外に出ると二階の部屋からバリンとガラスの割れるような音。こんなところに住めるかー! ていうか、夫がいないんですけど、どこいったー!!

 翌日、潮が引いているうちに家に戻ってみると、玄関前に報道陣の姿。どうやら問題の物件に買い手がついたと聞き、地元のテレビ局の記者たちが押し掛けてきたらしい。

 ぜひ取材をしたいとマイクを向けられるので、いや、買ったの私じゃないし、詳細何も知らないし、そういうのは夫にしてほしいんですけど……とまごつく。

 本当にあいつ、どこ行った!?

 夫探しを口実に報道陣から逃げ、バルコニーの外へ出たところで、家の裏の岸壁みたいな場所にこそこそと潜みながら、報道陣の様子を窺う夫を発見。

 こらー! 何逃げてんだ! と怒りのままに怒鳴ると逃げ出す夫。

 信じられない、なんて卑怯な奴なんだ!!

 怒り心頭で追撃が始まったところで、目が覚める。

 海辺で追いかけっこしながら全然キャッキャウフフできない、大変オソロシイ夢でした(@_@。



 怖い夢、見ている時は嫌だけれど、見なくなるとちょっと寂しい。

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